芸術と知財とブロックチェーン コロナ後、問われる「無形の知」
美術品に贋作が存在するように、知財は偽物との戦いを続けてきた。そうした中でブロックチェーンは、その知財の信頼性を明らかにする手段となる。実際、著作権や芸術品の分野では、ブロックチェーンの活用が既に始まっている。
美術品が示す
日本と西洋の文化の違い
知を分析することで、様々なことがわかることを3カ月にわたりお伝えしてきました。今回は、閑話休題、少し目先を変えた話をしたいと思います。
ベネチアに1月末に訪ねてきました。主目的は、世界のトップ10の国際競争力(因みに日本は30位)を持つ中東のカタールに行くことでしたが、その前に美と知財の関係をじっくりと考えるためにイタリアに立ち寄ることにしました。
さて、ベネチアは、車がない街です。だから、狭い路地をみんな歩かなければなりません。もしくは、船を乗るわけですが。だから、住んでいる方達は、足腰が丈夫になります。郵便配達もゴミ収集も、大八車(リヤカー)で各家を回りながら集めます。
そんなベネチアは、ベネチアングラスで有名ですね。ベネチアングラスは、その始まりを7世紀か8世紀まで辿ることができ、13世紀になりヴェネツィア共和国が東西貿易の重要な輸出産品として世界に広まります。
ベネチアングラスの中でもVENINIと言う有名な工房があります。VENINIの作品は芸術品で数十万円もしてしまいますが、とても美しいのです。先日、NHKで女優の福地桃子さんがイタリアの蚤の市で掘り出し物を探す番組があり、福地さんが気に入って手に入れたガラスのボウルが確かVENINIの作品で、これでサラダを盛りたいと話をしたところ、鑑定人からこれはアートですとたしなめられているシーンがありました。
私もVENINIの作品を見ながら、これを屋久島の家のお菓子入れに使ったら楽しいだろうなと考えていました。ここに、日本と西洋の文化の違いがあるのではないでしょうか? 日本人は、食器はいくら美術品でも使わなければという思いがあり、一方で、西洋では、飾り皿があるように貴重なお皿は使わずに大切に飾られたりします。
また、修理に対しても異なっていて、例えば茶器の修理では、金継ぎが使われます。修理した後でも使うことを前提としていて、その傷痕ですら美しいと感じます。一方で西洋では、割れた箇所がいかに分からないようにするかにこだわり、精巧に直すことが求められます。そのため、エキシポ樹脂等が使われ食器として使用することができなくなることもあります。食器や茶器は使ってこそ価値があるという意識が、無意識に我々日本人の中にあるのでしょう。
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