2020年5月号
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パイオニアの突破力

直木賞作家であり会社員 創作の原動力とこれからの行く先

川越 宗一(小説家)

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今年1月15日に発表された第162回直木三十五賞は、川越宗一の『熱源』が受賞した。川越にとって『熱源』はデビュー2作目の作品。大衆文学という分野で最も長い歴史と権威を持つ大きな賞を受賞した41歳の新人作家は、ここまでどんな道のりを経て、これからどこへ向かおうとしているのか。

文・油井なおみ

 

川越 宗一(小説家)

新たな趣味にと書き始めた小説、
気づけば日常が大きく動き出す

「どっきりカメラが進行している気持ちです」

1月の直木賞受賞会見でそう語ってから現在まで、平日は勤務先の会社に出勤し、就業後に執筆、休日は取材などに追われる日々。未だに受賞の喜びをかみしめる暇もない。

初めて書いた小説『天地に燦たり』が2018年松本清張賞を受賞。そして2作目の『熱源』で“直木賞作家”という肩書を得た今も、川越は会社員という顔も持ち続けている。

川越が小説を描き始めたのは4年前。「サラリーマンとしての生活も落ち着いて、時間に余裕も出てきたので、何か新しい趣味でも始めようかと。軽い気持ちで思いついた感じです」

学生時代はバンド活動に明け暮れ、創作活動にのめり込んだ。ただ、“書く”という創作は初めての経験だった。

「会社では宣伝広告の部門にいるので、短い宣伝文章を書くこともありますし、メールのやり取りも多いんです。日ごろから相手に伝わる文章を書くように心がけていたので、書くという作業に慣れてはいる、という程度の感覚はありましたが。今思い返すと、何で趣味に小説と思ったんでしょうね」

まず最初に手を付けたのは、テーマ選び。川越は、昔からエンターテイメントに適したテーマや題材を考える癖があったという。

「映画でも漫画でも小説でも何でもいいから、あったらいいなというものを考えるのが好きで。とはいえ、思いついたネタを自分で創作するつもりは全くなく“牛丼にチーズがのってたらいいのにな”という程度のことでした」

ネタ帳がある訳でもなく、ただ川越の頭の中だけにあったいくつかの題材が初めて外に出るときが来た。

「温めていたネタのなかで、どうしても形にしたいなと思ったものがふたつあって。ひとつがデビュー作で、もうひとつが『熱源』になりました。どうせ書くなら誰かに読んでもらいたいし、モチベーションにもなるだろうと思い、1作目は賞に応募することも決めました。バンドをやっているときに感じたんですが、創作のレベルって自分の心持ち次第で決まる部分が大きいんです。志を高く持ち、客観性を持って磨かないと、レベルは上がりません」

そこで川越は、なるべく高いレベルで競われる賞に応募しようと考えた。

「子どもの頃から歴史が好きで、書くなら歴史小説と決めていましたが、あるジャンルに特化した賞より、ノンジャンルの方が応募総数が多いのではと思ったんです。さらに、賞金の高い賞ならレベルも高く、多くの人に読んでもらえるんじゃないかと。それらを踏まえて、松本清張賞に狙いを定めたんです。……なんて生意気だったんだ。と、今、気がつきました(笑)」

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