2020年5月号

IoT導入促進実践ワークショップレポート

行政が民間ノウハウを活用、県内企業のIoT導入を支援

月刊事業構想 編集部

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山口県は「やまぐち産業イノベーション戦略」を策定し、県内のIoTの導入を促進。導入・利活用促進に向けさまざまな取り組みを実施する中、2019年10月より約5ヶ月間、「IoT導入促進実践ワークショップ」を開催。その取り組みについて取材した。

自社の課題から作成したプロトタイプを発表する参加者

県の主導によりIoT導入を促す
実践重視のワークショップ

山口県では、県内企業へのIoT等導入・利活用の促進を目的とし、2019年10月から「IoT導入促進実践ワークショップ」を開講した。このワークショップは自社課題や経営戦略等を踏まえたIoT導入の企画・立案ができる人材の育成を目指すもので、カリキュラムは「基礎知識習得」「体験学習」「実践」の3部で構成。座学だけに留まらず、自社課題の認識とその解決に向けたプロトタイプ作成まで行い、作成においては知見を持った民間企業が、開発作業から実際の業務での実践までをサポートする。座学がメインとなる「基礎知識習得」ではIoT概論をはじめビジネス事情や技術、事例などを学び、「体験学習」ではIoTを支える汎用的な技術で実機を体験したほか、フィールドワークによる課題抽出と解決のためのアイディエーションを行った。そして、それぞれが抽出した自社の課題の解決に向けプロトタイプ計画を立案し、プロトタイピングを行う「実践」を経て、2020年2月14日の最終日に発表会を実施。受講者が作成した自社におけるIoT事業計画とプロトタイプのプレゼンテーションを行い、講師による講評および経営者等による今後の展望が発表された。

データの整理・デジタル化で
品質やサービスの向上を図る

車輌用部品や半導体製造装置用部品などの製造販売を行う(株)アクシスは、製品の不良発生における情報の把握と共有のため、データ化した紙日報とシステムとの連携を提案。同社の代表取締役社長古田氏は「IoT導入により、不良の低減や再発防止、意識向上により品質を高め、信頼される会社を目指す。システムは人事考課にも活かせそうだ」と期待している。石灰石採掘および炭酸カルシウムの製造販売などを手がける薬仙石灰(株)は、製造過程の装置の状態を紙からデジタルによる記録への移行と、IoTカメラの設置による自動化を提案。入力作業を削減するだけでなく、データ取得頻度を増やすことでより詳細なデータ収集を実現し品質の向上を狙う。同社の取締役管理部長中原氏は、「社内の高齢化が進む中、可視化により確実な技術継承が可能になる。IoT導入の重要性を実感した」と答えた。精密機械加工、電気・計装工事などを行う(株)松田鉄工所は、保管されている大量の図面をデータ化することで作業の無駄をなくし、それによって得られた時間をより良い製品づくりに費やし、要望以上の付加価値がある製品を提供することを提案。代表取締役社長の松田氏は、「関連事業への対応として2020年4月から本格的に取り組んでいく」とIoT導入に積極的な姿勢を見せた。

働き方改革も意識した
従業員向けソリューション導入

旭洋造船(株)は、作業能率向上と休憩時間の公平性の確保を目的としたIoT導入を提案。社員の行動の見える化を図るため、BeaconとRaspberry Pi3による検証を行い、今後の改善に向けた新たな課題が見つかったことを発表した。また、これまでIoT導入を難しく考え過ぎていたことを実感し、できることからIT化を積極的に進めるべきだと訴えた。これに対し、取締役副社長原田氏は、「IT化なしでは中国・韓国の企業に勝てない。引き続きIoT導入に取り組んでいきたい」と回答した。GMOクラウド(株)は、コールセンターに所属するオペレーターのストレスを脈拍データにより可視化。一定値を超えた時点で管理者にアラートすることで迅速なヘルプを可能とし、自社の課題である離職率の低減とそれに伴う採用・教育コストの削減を目指すだけでなく、将来的にはそのシステムを商品としメンタルヘルスマーケットへの進出を提案した。同社カスタマーサクセス部部長大澤氏は「もっと使いやすい機器の選定、脈拍データ以外も用いた正確なストレス計測を可能にし、ぜひサービス化を目指してほしい」とプロジェクトの継続を希望した。

脱アナログによる
業務の効率化を目指す

北海道から九州まで9カンパニー制で展開するIT企業(株)コア西日本e-R&Dセンターは、ハードウェア資産の棚卸しにIoT導入を提案。資産にICチップをつけ、資産管理ロッカーにリーダーを導入することで、これまで人力ベースで行ってきた管理を自動化し、データの蓄積によって資産情報と利用状況の照合のスマート化を図る。現在はセンサーの検証段階で、実際にデータの収集まではこれからだが、今後、拡張性・柔軟性の高いソリューションを目指す。センター長の田尾氏は「IoTに詳しくない新入社員が自社の課題を見つけプロトタイプまでやり遂げたことに意味がある。今後も積極的に取り組んでもらいたい」と感想を述べた。総合住宅資材の販売や不動産事業を展開する(株)ウベモクは、電話対応やペーパーの多い受発注作業など物流・物販の流れをIoT導入によって整理することで業務効率化を提案。配送の段取りの簡素化、社内外における情報共有をトライアル課題とし、現在はプラットフォームの選定を進めている。代表取締役社長中尾氏は、「我々の業界には古い体質が残っているがIoT導入により変わっていかねばならない。このワークショップが改善のきっかけとなり、新しい商品・サービスの開発につながることを願う」とコメント。

継続的に取り組むことで
第四次産業革命に対応

第四次産業革命による急速な情報通信分野における技術革新に的確に対応するにはIoT等の導入が必須である昨今、山口県では民間ノウハウを活用したサポートにより、IoTを活用した生産性の向上や新サービス・事業の創出を期待する。山口県内の中小企業におけるIoT導入率がわずか10.1%(2018年山口県調べ)という現実がある中、昨年から新たに実施しているこの「IoT導入促進実践ワークショップ」にはこれまでITに触れたことのない企業の参加もあり、まずはIT、IoTの概要を知ってもらうことからスタートを切っている。

この度の講師である(株)ウフル八子知礼氏は全課程終了後、「IoT導入に継続的に取り組んでいただき、ぜひ実装して欲しい」と呼びかけ、まずは自社の課題を見つけ、課題解決のためにテクノロジーをいかに活用していくかの発想を磨くところがIoT導入の第一歩であると説いた。

人手不足、過疎化・高齢化等の問題を抱える現代社会において、今やIoTは発展のためになくてはならないツールである。このワークショップのほか、「やまぐちIoT導入サポーター派遣事業」などIoT導入促進のためにさらなる事業に取り組む山口県の今後に期待したい。

 

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