ランサーズ 上場後の成長へ、「個の時代」を支えるインフラを築く

「個のエンパワーメント」を掲げ、フリーランスと仕事をマッチングする事業を展開し、2019年12月には、東証マザーズへの上場を果たしたランサーズ。成長への転機となった決断と「個の時代」を支える新ビジネスについて、秋好社長に話を聞いた。

秋好 陽介(ランサーズ 代表取締役社長CEO)

ランサーズは、フリーランスと企業を仲介するクラウドソーシングの先駆けとして2008年に創業し、「個のエンパワーメント」をミッションとして事業を展開してきた。現在では登録会員が100万人を超えるサービスに育っている。

起業して12年、一番迷ったのは最初の1人を雇うときだったと、秋好陽介社長は振り返る。

「いざ人を雇う段階になって、人生を背負うことや人件費の重さを考えて3ヵ月ぐらい迷いました」

秋好社長は幾多の困難を乗り越えてランサーズを成長に導いたが、起業家に求められるのは「あきらめないこと」と語る。

「事業がうまくいかない理由として、社員がいなくなったから、市場がないから、キャッシュが回らないからと、いろいろな理由が付けられますが、結局はあきらめたからで、本気で頑張れば何とかなる。一番良いのは、あきらめられないテーマを事業にすること。私がそうでした。こういう世界を実現したいと、人生を賭して挑戦したいと思えるテーマがあったから、簡単にはあきらめなかったんです」

高単価・高品質の案件にシフト

ランサーズが成長を遂げたターニングポイントの1つが、手掛ける案件内容を高単価・高品質にシフトしたことだ。従来のクラウドソーシングは記事作成など低単価の仕事が中心であり、企業がコスト削減などを目的に不特定多数のフリーランスに発注する仕組みだった。ランサーズは2016~17年頃から、低単価の案件を戦略的に減らしていった。

「当時は単価の低い案件が売上の多くを占めており、難しい決断でした。2017年頃が一番苦しかったですね。私たちのビジョンは『テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる』こと。そのビジョンを実現し、新しい働き方を広げていくには、単純なタスク業務やクリエイティブ業務だけでなく、オフィスで日常的に行われる仕事をオンライン化していく必要があると考えました」

ランサーズは、手掛ける案件をバックオフィス業務やシステム開発などの高単価の仕事にシフトし、不特定多数ではなく特定のフリーランスに仕事を依頼するモデルへと転換していった。そして、信頼できるフリーランスを定着・増加させる仕組みを整えたことで、業績拡大につながった。

「2019年12月に上場しましたが、もっと早く上場するという意思決定もあり得たと思います。しかし早期に上場していたら、事業の構造転換を決断するのが、より難しくなっていたかもしれません。成長への土台が整い、ベストのタイミングで上場できたと思っています」

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