2020年4月号
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歴史から学ぶ新産業創出の意義

必ず起きる産業の衰退 新ビジネスへの変革を準備せよ

吉川 智教(早稲田大学 名誉教授)

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いかなる新産業も長期的には必ず衰退産業になるというプロセスを分析する。新しい産業は、どのようなプロセスを辿って、普通の産業になり、最終的には衰退産業となるか。全ての新産業がこのプロセスをたどると仮定すると、企業や地域はどのような戦略を考えるべきか?

先進国や先進地域が、長期的に同一の産業に依存すると、経済的に衰退地域となる。新産業が既存産業になる過程で、相対的に人件費が安い開発途上国が参入し、付加価値が減少するからである。先進国や先進地域では十分な給与が支払えなくなり、人口減少が起こる。もはやその地で働く人々は、豊かな生活ができないからである。

先進国や先進地域では、主要産業を、付加価値の高い新産業に移転する方向で、経済政策を実施する必要がある。日本でも人口減少が起きている地域は、高付加価値を生む産業がない。この移転に成功した地域の例が、米国ではシリコンバレーであるし、日本では新潟の燕三条である。

そのことを傍証するのが、表1と図1だ。表1は、シリコンバレーの主要産業の時代別の変化である。図1は、1950年から2000年までの、それぞれの時代の主要産業における付加価値を示す。1950年代~60年は防衛産業が主要産業で、集積回路は60年後半以降、PCは70年以降、90年以降はインターネットである。

表1 シリコンバレーの主要産業

 

図1 シリコンバレーの主要産業の変化と付加価値の変化

出典:2010年 Silicon Valley White Paper

 

ここで重要なことは、それぞれの時代と産業の付加価値の変化である。初期の段階では付加価値は増加するが、ある時点で増加は止まる。そして他の新しい産業が生まれ、その付加価値は、最初は増加するが、ある時期を過ぎると一定となる。他の多くの企業が新しい産業に参入し、独占的な利益が得られなくなるからだ。

同じ現象は、企業でも見られる。トヨタ自動車は、1933年に豊田自動織機の自動車部門として誕生し、それが1937年に独立の会社となった。スズキ(鈴木自動車)も同様で、1909年に創設された鈴木自動織機から誕生している。1954年に独立して、鈴木自動車となった。これらの企業は長期的に存続するために、時代に合わせて、製品の重点を自動織機から自動車へと移している。これらの現象を説明するのが「新産業から既存産業、斜陽産業へ変遷の理論」である。

技術の種類と競争 2)

ここではPCを例に、産業の発展と衰退を考えてみよう。ある製品に関する技術が進歩すると、顧客が要求する特定の技術のレベルを超えてしまうことがある。例えばPCの処理スピード。複数の企業がそれぞれの製品を発売していても、処理スピードが一定を超えた製品については、顧客の評価はどれも同じとなる。顧客は絶対的な技術レベルの高さを求めている訳ではないためだ。消費者が要求するレベルを超えた商品では、「差別化」は見られなくなる。そこで、顧客は次に他の基準を求めることになる。例えば、操作性、軽さ、画像のレベル等である。

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