「まちは一つの旅館」実現へ 老舗旅館を支える予約管理システム

温泉街最大の旅館が、将来を見越して開始したIT経営。事務の効率化や、労働環境の改善、サービスの質向上を実現した。地域で結束しデータを集め、観光スマートシティを目指す。

西村 総一郎 西村屋 代表取締役

地域のリーダーとして
まちの価値向上に尽力

京都・大阪から電車で2時間半。城崎温泉で160年の歴史を持つ老舗旅館が「西村屋」だ。城崎の宿泊客数は年間62万人。うち同館の宿泊客数は9万人と、全体の1割強を誇る。西村屋代表取締役の西村総一郎氏は「私たちは地域のリーダーとして観光業界を牽引し、まちを活性化していく責務があると考えています」と力を込める。

地域観光経営の視点から、西村氏は城崎温泉の価値向上に向けてさまざまな取り組みを行っている。その1つが、2012年から進めている交通整備計画だ。街中の外周にバイパスを通し、温泉街に入る車を減らすことでそぞろ歩きのしやすいまちづくりを目指す。

「城崎にはまち全体が一つの旅館だという発想があります。『駅は玄関、道は廊下、旅館は客室、土産屋は売店、外湯は大浴場』と捉え、強い地縁のもとに繁栄してきた共存共栄の伝統があるのです」。

シフトコントロールシステムで
ESとCSの向上を実現

地域が描く理想像を実現する上で、西村氏は「目下の課題である人手不足を解消すると同時に、将来的な需要不足を見据えて今すぐに動かなければなりません」と話す。強い危機感のもと、同館がマンパワーを補填する手立てとして開発したのがシフトコントロールシステムだ。以前は予約が入ると予約管理システム(PMS)から客室係のシフトを手書きで作成し、紙で共有していたため、リアルタイムの変更や情報共有が難しかったという。

「客室係の必要人数を自動で割り出し、常時シフトをアップデートできるようになったことで、過重労働が抑制され、従業員満足度(ES)が改善しました。また、リピーターの方に前回と同じ客室係を配置することはもちろん、外国語など客室係がもつスキルとのマッチングもスムーズに行うことで、顧客満足度(CS)の向上も期待されます」。

同館の宿泊者アンケートでは、「○○さんにお世話になりました」という従業員に対する評価が大部分を占めることから、「魅力ある接客でファンを増やすことが何よりも重要です」と西村氏。客室係の人数と在庫状況を同時に管理できるようになり、接客・人事・営業が連携した戦略的な経営が可能になったと微笑む。

地域での情報共有で
世界に豊岡を発信

将来的な需要不足に対する方策としてもITの力が欠かせない。「旅館は繁忙期と閑散期の差が大きく、閑散期にいかに顧客を呼び込めるかがカギとなります。膨大な顧客情報をITで管理・分析し、データに基づいた施策を適切なタイミングで打つことができれば、潜在顧客の掘り起こしやインバウンド向けの情報発信などに役立ちます。さらに、各旅館の情報をクラウド上で共有すれば、在庫や備品など地域での生産性向上に繋げることもできます」。

城崎温泉では、Googleマップ上に旅館や店情報を掲載した多言語対応のウェブサービス「城崎温泉プラットフォーム(Onsen Cloud)」を開発した。Salesforce基盤上の Marketing cloudを利用したものだ。ここでは代理店を介さない予約システムを採用するなど、地域ぐるみのデジタルマーケティングに力を入れている。

「地域として面での取り組みはまだこれから。課題もありますが、私たちは他の温泉地にはない結束力という強みがあります。これからもおもてなしの心を大切にしながら、ITを活用して豊岡市の観光スマートシティの実現を目指します」。

 

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