快眠関連サービス対決 西川 vs.エアウィーヴ

ヘルスケアの根幹ともいえる睡眠の分野では、睡眠や寝室環境、身体のデータに基づく快眠提案が、ビジネスの成否を握る時代となっている。経営統合で新展開を図る老舗の西川、新素材で急成長したエアウィーヴの動向を見る。

科学的アプローチで進化する老舗と新進

日本人の睡眠時間はこの半世紀で緩やかに減少、世界主要29カ国中、日本は韓国に次いで2番めに短く、睡眠不足によるGDP比の経済損失が最も深刻なのも日本だという。逆に言えば、睡眠を改善するための関連市場は、今後の大きな伸びが望める。未解明の部分が多かった睡眠についての研究も進み、快眠を求める消費者の意識も高まっている。寝具をはじめ、睡眠関連メーカーは、寝室環境も含めたデータに基づく快眠への科学的アプローチ、スリープテックに力を入れている。

蚊帳問屋として1566年に創業、約450年の歴史を持つ老舗・西川も例外ではない。1984年開設の「日本睡眠研究所」による知見の蓄積をふまえ、2017年に開始した快眠コンサルティング事業「ねむりの相談所」では、専用の活動量計を貸し出し、1〜2週間・24時間装着した利用者の活動量や睡眠状態のデータを基に、「スリープマスター」がアドバイスする。データ分析には富士通と共同開発した技術を使い、寝室の温度、湿度、明るさ、音も測定してコンサルティングに活かす。対応店舗は現在の30店だが、今後1,000店まで拡大するという。

先頃、3社を統合して体制を一新した西川は、スリープテックを軸に寝具の新時代に臨み、パナソニックやスタートアップとの恊働も進めている。

その西川をはじめ、老舗ばかりのオーシャンに決然と飛び込んだのが、2004年設立のエアウィーヴだ。樹脂射出成形機の製造精緻メーカーだったが、2007年に寝具分野へ進出、低反発寝具が主流になっていた市場に、高反発素材で打って出た。浅田真央選手など有名アスリートを広告に起用したことも大きなインパクトとなって、瞬く間に認知度を上げ、売上も2010年の4億円から、2018年には135億円にまで急拡大した。米国スタンフォード大学と東京慈恵会医科大学の共同研究も、エアウィーヴの効果を立証しており、今後は、スマートフォンアプリで体形を測定して、体に合ったマットレスを組み合わせるなどの新展開も計画する。

東京2020オリンピック・パラリンピックでは、世界のアスリートに寝具一式を提供してデータを収集、アスリートを味方につける戦略強化を狙い、関西電力や中部電力と共同で、IoTスマートホームに寝具を組み込む戦略も進行中だ。

ヘルスケアの根幹たる睡眠。その質を大きく左右する寝具は今、データとIoT、そして科学的実証に基づく研究開発によって進化しようとしている。

会社概要

西川

設立 1947年(創業1566年)
本社 東京都中央区、京都市下京区、大阪市中央区
代表 西川 康行(代表取締役社長)
資本金 1億円
従業員数 1, 685名(2019年2月現在)
事業内容 ●寝具・寝装品等の製造・加工・売買・輸出入
●医療・介護機器等の製造・加工・売買・輸出入
●データ解析、情報提供 など
関係会社 西川、東京西川コーポレーション、心斎橋西川、
西川テックス、西川ローズ、大阪西川(上海)
など14社

出典:同社ホームページ他

 

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