浜松いわた信金の挑戦 スキルを身につけ地域のSDGsをけん引

浜松いわた信用金庫では、経営理念の中核にSDGsを据えている。今年、同庫のSDGs 推進部地方創生戦略推進室の竹内嘉邦氏はSDGs総研が実施する「SDGsプロジェクト研究」の第1期生となり、SDGsを達成するための新規事業開発に着手した。

竹内 嘉邦(たけうち・よしくに)浜松いわた信用金庫 SDGs推進部 地方創生戦略推進室 調査役

合併でSDGs推進役に

合併した浜松信用金庫、磐田信用金庫とも、営業基盤は自動車や二輪車、電気機器、楽器メーカーなど、製造業が盛んな静岡県中部から西部地域。近年、グローバル規模での技術開発競争・生産拠点の流出等の課題を抱えており、両庫ともその地域の課題に共通の危機意識を持っていた。

合併後の預金高は全国的に見てもトップクラスの規模となったが、そもそも、両庫とも合併前から健全性は高い。まさに、地域の先を見据えた、攻めの合併がなされたといえるだろう。

今でこそ庫内で最もSDGsに詳しく、"地域のSDGs伝道師"として地元企業や学校から、SDGsに関する相談、講演等の依頼が殺到する竹内氏だが、「昨年末の時点では、SDGsという言葉を知っている程度だった」という。

「SDGsプロジェクト研究」への参加にあたっては、「とにかく他の研究員の熱量に圧倒された」(竹内氏)という。

「新しい事業を開発するのだという強いミッション意識とパワーがあり、講師の先生だけでなく、他の研究員との会話の一つひとつが自分の糧となっている」。

また、それぞれが持ち寄る事例を共有しあえることも魅力の一つ。「持ち帰って、職員や地域のお客様に伝えることもできる」と業務への落とし込みを実践している。

地元企業の合同勉強会にSDGs出張講師として出向く竹内氏(左端)。

まずは従業員2,000人への
"腹落ち"を

プロジェクト研究を始めて4カ月。竹内氏は取り組みの第一歩として、「職員約2,000人にSDGsを"腹落ち"させること」をミッションとして掲げる。

まずは、この4月より、経営企画部と協働し事業計画にSDGsを盛り込んだ。また業績の評価指標にも「SDGsへの取り組み」を組み込むことで、職員のSDGs理解・実践を目指す。

同庫は地域の「総合サービス業」を掲げ、地域と顧客の課題解決を事業の中心に据えるが、「SDGsは課題解決の入口。SDGsのアンテナを高く持つことが、お客様の課題解決にもつながる」とその意義を述べる。

カリキュラムは1年で修了するが、「来年も引き続き、新たな職員が参加できれば」と語る竹内氏。

地域密着産業である信用金庫にとって、地域が活力を持ち続けることは不可欠だが、「何よりも今まで自分たちを応援して下さった地域に恩返しをしていきたい。一人でできることには限りがある。より多くの職員が、SDGsを地域に落とし込むスキルを身に着け、地域を強くしていければと思う」と今後の抱負を語った。

SDGs新事業 プロジェクト研究

SDGs総研(運営元:学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 事業構想研究所)では、1年間でSDGs達成に貢献する新事業を開発することを目的に、SDGs新事業 プロジェクト研究を実施中だ。

同研究所では、座学を受けるのではなく、自らが事業を開発するという目的意識の高いプロジェクト研究員が集まる。研究員の背景は企業経営者や、大手企業の社員、起業を目指す人間などさまざまで、自らの仕事の合間に参加する研究員が多くを占める。

研究会の特徴としては三つあり、一つはSDGsに資する新事業(イノベーション)の知識を体系化して研究ができること、一つは自社の経営資源を活用した実現性と独自性の高い事業を構想できること、そしてもう一つは、SDGs第一人者とのネットワークの形成が可能だ。

研究会ではSDGsの第一人者や先進的な成果をあげている講師が登壇する。
池田 陸郎(いけだ りくろう)カーボンフリーコンサルティング 国内事業本部 本部長

SDGsを具体的な構想に
落とし込む

研究会では、SDGsを抽象的なものにせず、企業が事業を行う目線で考えるワークショップなどを実施する。ゲスト講師として登壇したカーボンフリーコンサルティングの池田 陸郎氏は、先進的にSDGsに取り組んでいる企業や地域の事例をもとに、研究員が自社事業とSDGsをつなげるアイデアや気付きを提供している。研究会は現在東京と大阪で開催しており、今後も新たに研究員を公募する予定だ。