商社オープンイノベーション対決!伊藤忠商事 vs. 丸紅

斬新な発想を迅速に形にするためのオープンイノベーションが必要になっているのは、大手商社も同じだ。ネットワーク、データ、人材に豊富なリソースを持つ商社はどう対応しているのか。大手2社の取り組み例と、そこに込められた思いを見る。

「知の結合」に向けて動き出す総合商社

事業環境が刻々変化する中、企業が独力で新たな事業を発想するのは難しくなっていく。新しい知を取り入れ、持てる知を提供し、従来とは異なる流れを作らなければ成長は望めない。この新しい流れ、オープンイノベーションは今や企業の成長の原動力であり、その概念はバージョン2.0へと拡大している。

総合商社も例外ではない。それどころか、時代の流れの中でビジネスの軸足を卸売りから事業投資に移してきた総合商社にとって、オープンイノベーションによる新事業創出のプラットフォーム構築こそ、事業の目利きとしての真骨頂であり、新しい使命でもある。

例えば伊藤忠は、2018年7月から2019年1月まで、「伊藤忠商事アクセラレーター2018」として、特に「食」に関連する新事業を共創できるスタートアップを募集した。伊藤忠食品、プリマハム、不二製油、さらにはファミリーマートなどのカンパニーを持つ伊藤忠にとって、食は他の商社にない得意分野。他社が主力とする資源・金属などの分野に比べて、オープンイノベーションとの親和性も高い。想定しているのは、共働き家庭や高齢者の食、生鮮食品の流通履歴など、食・ライフスタイル関連の問題解決や、家族、人口、環境など構造的な社会課題解決をもたらすサービスだ。

一方、丸紅は、2018年11月から2019年6月まで、「丸紅アクセラレーター2018」として、内外のスタートアップを募集している。独立系発電事業者として日系で最大の持ち分発電容量を持つ丸紅電力グループを中心に、全国の顧客基盤、発電施設、ノウハウやデータ、人材を提供し、総合商社60年の歴史を誇る丸紅グループ全体でリソースを結集する。

目指すのは、既存事業の枠を超えて、社会課題の解決につながるサービスなど、新しい価値を共創すること。スマートホーム、バリアフリーなど、暮らしの質向上を目指すサービスや、ヘルスケアやエンターテインメントなど「貨幣価値より心に重きを置いたサービス」が、具体的なイメージだ。

いずれにも、Crewwがオープンイノベーションのプラットフォームを提供する。今後、日本でも「オープンイノベーション2.0」が広がっていく上で、大企業にない部分を補完し、スタートアップとの仲立ちとなるCrewwのような組織が果たす役割は、ますます大きくなる。

丸紅は、グループのビジョン、「在り姿」として、社会課題を先取りし、グループを一つのプラットフォームにして、事業間、社内外の壁を取り払い、知や夢、志をクロスさせて新しい価値を創造することを掲げている。新しい磁場として、社内外の知を結合すること。それは、丸紅に限らずすべての総合商社が目指すべき姿なのかもしれない。

両社概要

伊藤忠商事

創業 1858年
設立 1949年12月1日
本社 東京:東京都港区/大阪:大阪市北区
代表 岡藤 正広(代表取締役会長CEO)
資本金 253,448百万円
従業員数 4,380名
主な事業と
関係会社
●繊維:ジョイックスコーポレーション、三景 他2社
●機械:日本エアロスペース、ヤナセ 他6社
●金属:伊藤忠メタルズ 他4社
●エネルギー・化学品:伊藤忠エネクス 他5社
● 食料:伊藤忠食品、ユニー・ファミリーマートホールディングス 他6社
●住生活:伊藤忠建材 他5社
● 情報・金融:伊藤忠テクノソリューションズ 他6社
● その他(海外法人):伊藤忠インターナショナル 他5社
拠点数 ●国内9 ●海外99

出典:同社ホームページ、有価証券報告書

 

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