2019年5月号

産官学共創のキーファクター

SDGsから考える地域活性 横浜市の共創によるオープンイノベーション

河村 昌美(横浜市共創推進室 課長補佐)、中川 悦宏(横浜市共創推進室)

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横浜市共創推進室では、全国に先駆けて11年前から「共創」によるオープンイノベーションを実践してきた。本連載では、その中で培ってきた約350の実践例から、共創実現のキーファクターを紹介する。

市民のニーズが多様化・複雑化する中で、従来行政が提供してきたサービスだけでは不十分となっている。少子高齢化が進んでいることもあり、予算を増やすことは難しい。そこで、市民一人ひとりのQOL(Quality of Life)を高めるためには、AIやIoTといったテクノロジーの活用や、データや技術、ノウハウ、商品などを持っている企業・NPO・大学など、多様な民間の主体との連携が求められている。

こうした背景と約10年の実績を踏まえ、横浜市では、2018~2021年の中期計画の策定・推進にあたっての基本姿勢のひとつとして「オープンイノベーション」を掲げている。まず連載初回では、公民の共通する目標であるSDGsの着眼点でもある「社会・環境・経済」の3つの視点で事例を紹介する。

「社会」の面から捉える
在庫品を生活困窮者等支援に

セブン-イレブン・ジャパン、横浜市社会福祉協議会、横浜市健康福祉局が3者協定を結び、コンビニ店舗の改装・閉店時に食品や日用品などの在庫商品を、社会福祉協議会を通じて生活に困窮している方々等に届ける取組を2018年4月から行なっている(図)。

図 在庫商品の配送~分配までの流れイメージ

個々の市民のニーズに合わせてお届け

 

福祉目的として寄贈していただき活用する取組としては、全国初の事例だ。地域に貢献したいという企業と支援を必要とする人、その双方をつなぐための仕組みづくりが、連携により実現した。この取組は、日本の大きな問題である食品ロス削減のほか、地域が主体となったフードドライブや青少年自立支援など、幅広い効果を見せている。これまで見えにくかった地域課題の掘り起こしにもつながり、連鎖的な社会課題の解決に寄与するモデルとなった。

「環境」の面から捉える
AIでごみ分別方法を回答

横浜市では、各種ごみの分別方法をAIがチャットボット形式で回答するシステムを展開しているが、これはNTTドコモと横浜市資源循環局で共創したものである(写真1)。転入者が年間約14万人いる中で、横浜市の分別についてわかりやすく周知することは課題であった。そのような中で、NTTドコモから横浜市にAIを活用した地域課題の解決についての提案があり、既存のごみ分別検索データ約20,000語を用いてチャットボット形式の新サービスを共同で開発し、実証実験を行うことになった。

写真1 チャットボットによるごみ分別案内を操作する様子

さらに、ユーモアのある回答を取り入れたことで認知度が爆発的に高まることとなったのだが、これはまさに共創の効果であろう。「『旦那捨てたい』に神回答!?」という見出しでSNS、WEBニュース、TV等で大きく露出し、これによりアクセス数は一時100倍にまで上昇した。この"バズ"効果によって、回答の精度を上げるためのサンプルが取れ、2018年4月から本格導入されている。企業にとっては新たな製品やサービスの開発につながり、市にとってはごみの減量や資源化がさらに進み、廃棄物が与える環境へのダメージ軽減につながる取組となっている。

「経済」の面から捉える
コンテンツとの連携

最後に、民間サイドの強みが際立つ、コンテンツとの連携について紹介したい。横浜市では、行政からの制作協力として一般的な「フィルムコミッション」のみならず、プロモーション等の企画段階から連携を構想・実現するケースが多々ある。

例えば、スタジオジブリ作品「コクリコ坂から」での全面タイアッププロモーションや、ポケモンと連携した、みなとみらいの街で展開する夏の一大イベント「ピカチュウ大量発生チュウ!」など、構想時点から共創することでタイアップ効果を最大化し、より大きなWIN-WINを得る取組としている。

直近では、「ひつじのショーン」との連携を挙げたい(写真2)。横浜市は東京2020大会における英国のホストタウンとなっており、英国代表チームの事前キャンプの受け入れを行う。そこで、英国を代表するコンテンツの力を借りて、約374万人の市民の皆様とともに事前キャンプを盛り上げていくほか、横浜と英国のつながりをさらに深める取組を進めていく。

写真2 アードマン・アニメーションズによる横浜市オリジナルアート

魅力的なコンテンツとの共創は、許認可等をはじめとした行政の様々なバックアップが民間のプロモーション効果の拡大につながり、市にとっては街の賑わい創出による経済活性化への大きな効果や、行政が苦手とする「かっこよさ」や「かわいさ」や「オシャレさ」という視点からの訴求という面で、大きな力となっている。

今回は横浜市が取り組む様々な民間との共創事例を紹介し、行政との連携における展開イメージを掴むことを狙いとした。次回は、横浜市が共創事業を生み出すために、組織的に運用している各種の仕組みについて紹介したい。

 


横浜市共創推進室とは
2008年に設立された、横浜市の公民連携に関する総合調整部署。民間企業等からの提案・相談を受け付け、関係部署との間に立ちながら連携事業の構想~実現までをコーディネートする。また、PPP/PFIやサウンディング調査などを含む公民連携の各種制度を所管し、庁内での導入・運用を支援している。

※掲載文のうち意見に関わる部分は、執筆者私見として、横浜市の公式見解ではない部分を含みます。

 

産官学共創で新規事業創出を目指す方へ
地域活性化新事業プロジェクト研究 セミナー・説明会

●内容
自治体が取り組む「共創」におけるトップランナーである横浜市共創推進室の協力の元、参加者が地域活性化に資する事業構想計画の策定を目指す「地域活性化新事業プロジェクト研究」を開催いたします。本学の事業構想ノウハウを持った教授陣、横浜市、地域活性化政策・実践・研究の第一人者をゲスト講師として招聘し、三位一体となったコミュニティを形成し、5 月から開校する半年間のプログラムです。今回のセミナー説明会では、横浜市の取り組む共創の事例とそのポイント、プロジェクト研究の概要をご説明いたします。
●説明会日時
 4月4日(木)13:30~15:00
 4月8日(月)13:30~15:00
 4月12日(金)13:30~15:00
※4月4日の説明会は横浜市担当者も登壇予定
●会場 事業構想大学院大学東京都港区南青山3-13-16
●参加費 無料
●申し込み方法 https://www.mpd.ac.jp/projectresearch/project0031/

お問い合わせ先
事業構想大学院大学
TEL:03-3478-8402 Mail:pjlab@mpd.ac.jp
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