新発想のデイサービス経営 理想の介護事業を自らの手で
マイクロソフト日本法人を経て、東海地区を代表するネット関連サービス企業に入社し、取締役として上場に導いた牧野隆広氏。同氏が新たな挑戦の舞台に選んだのは、介護事業。独自の方法で業界の課題を解決する、新しいデイサービス施設を運営している。
IT企業の上場を牽引し、
父の急死で介護事業に関心
ミライプロジェクト・牧野隆広代表の経歴は、特にIT関連で華々しい。最初に入社したシステム会社ではトヨタ自動車の営業担当を務め、日本がWindows95の登場に湧いた当時、マイクロソフト日本法人で働いていた。そして、東海地区を代表するインターネット企業、エイチームの取締役を務めた。同社は右肩上がりで成長し、マザーズ上場後233日という史上最速で東証一部へ市場変更した記録を持つ。
そんな牧野代表が新たなステージとして選んだのは、まったくの異分野と言える介護事業。牧野代表が介護を意識したきっかけは父の急死だった。
「上場準備中で忙しい時期でした。元気だった父が末期がんを宣告されて亡くなり、人はいつ死ぬかわからないという現実を痛感しました。幸いにもエイチームは上場後すぐに安定し、優秀な人材がたくさんいましたから、非常勤として退いても問題ない。残りの人生を悔いのないように送りたいと考えたんです」
父への親孝行を十分にできた自信はない。だからせめて母には孝行したい。悔いに似た心象が、牧野代表と介護事業を結びつけた。
「 母の介護を意識するようになって、以前から介護業界で働いていた弟と意見を交わすうち、自分でやろうと考えました。エイチームの上場で資金には余裕がありましたし、財務担当の取締役だったので銀行さんも身近でした。幸いにも、収益性よりも理想や社会貢献を優先できる環境だったと言えます」
介護保険制度の下、
事業を展開することの難しさ
牧野代表は、母に安心して勧められるデイサービスを地元で探してみたものの、見つけられなかった。そこで、自ら理想を実現することを考えたという。事業化を検討するうちに、デイサービスには、介護保険制度の枠組みによる不自由さがあることに気づく。
「老人ホームの場合は家賃を事業者が設定できるため、独自に付加価値を高めて、いわゆる『高級老人ホーム』が存在します。しかし、デイサービスには『高級デイサービス』がありません。基本的には施設の面積で定員が決まり、定員数で介護報酬の上限が決まる。どれほど良い施設をつくっても、売上規模を左右するのは面積でしかない。だから地価の高い都心では良いデイサービスをしにくいというわけです」
かつてIT業界という自由競争の最前線で活躍してきた牧野代表だからこそ、保険制度が適用される業界には不自由さを感じた。
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