未来の兆しは社会の中に「既にある」 気づきを得る行動のヒント

一般には認識されていない、数値化したデータには現れづらい社会の変化がある。周縁部で生まれつつある「小さな萌芽」や、人々の頭の中で眠っている「暗黙知」には未来の可能性が存在し、現場、実践、感覚によって、そうした情報を得ることが重要になる。

未来社会の構想を実現するために、今取れる具体的な行動や必要となる行動は何なのか。テクノロジーはそれそのものでは社会とならず、社会の流れの中で結果的にテクノロジーが用いられ、新しい社会の姿が実現していきます。

今回は、社会の動向を検討する視点から未来社会の実現に向けた行動へのヒントを考えていきます。

独自の未来予測をもとに、
新事業を創出してきたオムロン

オムロンの創業者・立石一真氏は、1970年に国際未来学会でSINIC理論と名付けた社会動向と未来予測の図を発表しました(図1参照)。

図1 オムロンが描くSINIC理論

科学・技術・社会の3つの軸を基盤に、社会の動向を予測している。

出典:オムロン会社資料(https://www.omron.co.jp/about/corporate/vision/sinic/theory.html)

 

SINIC理論は科学・技術・社会の3つの軸を基盤に、それまでの社会の動向を「原始社会→集住社会→農業社会→手工業社会→工業化社会→機械化社会」と捉え、今後起こりうる社会の動向を「自動化社会→情報化社会→最適化社会→自律社会→自然社会」と予測しています。

そして、自動化社会の構想を基に、1963年に自動食券販売機を開発して大丸百貨店京都店に納入、1964年には信号機を開発して京都・河原町三条交差点で導入実験に成功、1967年には阪急電鉄の北千里駅にて自動改札機の導入に成功、1971年には三菱銀行本店で世界初のオンライン・キャッシュ・ディスペンサーを稼働させるなど、人が行わなくても済む自動化のための新たな事業を様々な社会領域で生み出してきました(図2参照)。

図2 オムロンのSINIC理論と未来社会デザイン

社会動向の流れの予測をもとに、オムロンは様々な新規事業の開発を行ってきた。

出典:ミラツク資料

 

量的なデータに現れない変化が、
未来を実現する基盤になる

P.F.ドラッカーは著書『すでに起こった未来』(ダイヤモンド社、1994)の中で、社会の動きを検討するための視点として「すでに起こってしまい、もはや元に戻ることのない変化、しかも重大な影響力を持つことになる変化でありながら、まだ一般には認識されていない変化を知覚し、かつ分析すること」を挙げています。

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