長寿企業対決!老舗百貨店・松屋 vs. 天満屋

平成最後の年となる2019年、元年に創業して30周年を迎える企業は2万9,593社。創業100周年を迎える企業は1,686社にのぼる。創業150年となる松屋、190年を迎える天満屋、二つの老舗百貨店の歴史と現在を見る。

百貨店らしさを貫いて世紀を超える
二つのデパート

海外に比べてM&Aが必ずしも一般的ではない日本には、長寿企業が多いという。2019年に創業100周年を迎える日本の企業は1,686社で、うち421社が上場企業だ。中には、名古屋市の鉄鋼関連卸、岡谷鋼機のように、創業350年という老舗もある。百貨店では、東京・銀座と浅草に店舗を構える松屋が150周年、岡山市や広島市などに7店舗を展開する天満屋が190周年を迎える。

松屋は明治2年(1869年)に呉服屋として創業。最初の店舗は横浜で、東京進出は大正14年(1890年)のことだ。神田鍛冶町に構えた店舗は1907年に洋風に改築され、東京で初のデパート風の建物となった。銀座店ができたのは大正が終わる前年、1925年だ。

1918年から洋服の注文販売を開始、1925年、銀座店に百貨店初のカフェテリアを設け、1931年に屋上にスポーツランドを設けるなど、日本の百貨店文化を形作ってきた松屋は、今日もなお独自の商品企画や品揃えによる自主編成売場づくり、といった「百貨店らしさ」を貫く。時代の流れ、市場に合わせて変化しながらも、百貨店の本筋を守ってきたことが、苦境に立つ百貨店業界にあって特異な位置を保ち続けてこられた要因かもしれない。2018年2月期決算でも、百貨店事業は前年度比+5.4%の増収、+40.1%の増益となっている。

一方の天満屋は、江戸時代後期の文政12年(1857年)、備前西大寺で小間物屋として創業した。明治29年(1896年)から、当時としては異例の正札販売を開始、岡山市に進出したのは大正元年(1912年)のこと。大正14年に百貨店形態になったあと、昭和2年(1927年)には岡山店西館屋上に、ソーダファウンテンや岡山初のエレベーターを設け、昭和11年(1936年)には、岡山店新店舗屋上に子供の国をオープンしている。

現在、例えば広島アルパーク店、米子しんまち店を、地域マーケットの市場特性分析に基づいて郊外型百貨店とするなど、各店舗それぞれに独自の個性を作る一方で、単なる小売業ではなく文化の発信拠点でもあるという、昔ながらの百貨店の役割、「百貨店らしさ」も大切にしている。

様々な業態が進化し、消費者がそれらを自在に使い分ける今日、百貨店の存在意義とは何なのかを考えながら両社の長い歴史をたどると、単にモノを並べるだけではなく、夢を売り、楽しさと賑わいを創出し、大人も子供も足を踏み入れるだけでワクワクするワンダーランドという、百貨店本来の姿が浮かび上がってくる。「百貨店らしさ」というアイデンティティーは変えない。それが、長寿を支える力学と言える。

両社概要

松屋

創業 1869年(明治2年)
事業所 東京都中央区/台東区
代表 秋田 正紀( 代表取締役 社長執行役員)
資本金 71億円
従業員数 544名
主な事業と
主な
グループ会社
●アターブル松屋ホールディングス
 (飲食、結婚式場等、傘下子会社4社)
●シービーケー(宣伝広告等)
●スキャンデックス(輸入販売)
●東栄商会(包装資材等)
●エムジー商品試験センター(品質試験等)他2社
売上高 約906億円(2018年2月、連結)

出典:松屋ホームページ/有価証券報告書

 

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り28%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。