2019年1月号

パナソニック、次の100年へ

パナソニック 目指すは「くらしアップデート業」

パナソニック

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次の100年に向けて、「くらしアップデート業」を営む会社へと進化していくことを宣言したパナソニック。各カンパニーの社長が登壇したセッションでは、その実現に向けた戦略や、競争力強化に向けた組織変革などが語られた。

「家電」から「KURASHI」へ
3つの挑戦

パナソニックは1918年の創業以来、「家事の電化」すなわち「家電」によって、人々を家事労働から解放するなど、くらしにイノベーションを起こしてきた。しかし、アプライアンス(AP)社 社長の本間哲朗氏は「近年、社会の成熟化によって、モノの進化によるくらしのイノベーションが起きづらくなっている」と語る。

本間哲朗 パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社 社長

多様な価値観、ライフスタイルが存在する中で、AP社が目指すのが「一つひとつのくらしアップデート」だ。「お客様一人ひとりに向き合い、その人のくらしや体験の一つひとつを見つめて、より豊かなくらしをお届けします」

パナソニックは、くらし全体を領域とし、製品とサービスを組み合わせた新たなソリューションを提供していく。AP社はくらしの統合プラットフォームである「HomeX」を生かして、3つの挑戦を行っていく。1つは「お客様に寄り添い続ける挑戦」。一人ひとりに寄り添うためには、お客様の行動や気持ちまでも理解して動く、すなわち家電を知能化させる必要がある。「知能化」とは、IoT化した家電にAIという頭脳を持たせること。そして、知能化した家電をスピーディに提供するためには、モノづくりの仕組みをも変革しなければならない。

「ポイントは、オープンイノベーション(共創)と、ソフトウェア・ハードウェアの開発を同時進行で進めるアジャイル開発手法の積極的な導入です」

AP社は今、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)と共に、ロボティクスとAI技術を用いたロボット掃除機の共同開発を進めている。そのコンセプトモデルは、わずか3ヵ月で完成させたという。

千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)との「共創」により、ロボティクスとAI技術を用いたロボット掃除機の開発を進めている

2つ目の挑戦が「お客様に新たな文化を提案し続ける挑戦」。それは、家電を売って終わりではなく、お客様と長くつながり、新しいサービスを提供し続けることを意味する。そしてパナソニックは、お客様のニーズを発見するだけでなく、自分たちでニーズを生み出すことにも力を注ぐ。

「最初は小さな市場であっても、それを育てることで、今までにない文化を創り出すことができます。そのためには、事業化プロセスを変革して、ニーズの発見からアイデアの事業化までをスピーディに進めていく必要があります」

2018年3月には、新規事業の創出促進を目的とした新会社「BeeEdge」を設立。すでに第1号案件として、チョコレートドリンク事業を展開するミツバチプロダクツ社が誕生している。

3つ目の挑戦が「お客様のくらしから社会を変える挑戦」。豊かなくらしは、持続可能な社会によって実現される。AP社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギー事業にも力を入れており、2021年に純水素燃料電池を、その先には小型・高効率な水素製造装置の製品化も検討している。

「一つひとつのくらしアップデート」を実現するために、3つの挑戦を続けるAP社。その第一歩として、本間氏は「2021年までに、今後開発する全カテゴリーの家電を知能化していく」という具体的な目標を掲げ、今後への決意を示した。

創業時からの思いを受け継ぎ
「人起点」で新たなお役立ちを

1918年の創業時、パナソニック(当時、松下電気器具製作所)が世に送り出したのが配線器具「アタッチメントプラグ」。同製品を受け継いだのがエコソリューションズ(ES)社であり、それは100年経った今も販売されている。

北野亮 パナソニック 専務執行役員 エコソリューションズ社 社長

ES社 社長の北野亮氏は、「松下電気器具製作所から発展を遂げる中で、パナソニックは照明器具から建材、住宅用設備、ソーラーエネルギー、自転車、介護サービスなど、様々な領域へと事業を広げてきました。現在では『家』だけではなく、『モビリティ』や『街・社会』までを含め、24時間人がくらす、あらゆる場面でソリューションを提供しています」と語る。

ES社が掲げるミッションは、「『ABetter Life』を家、街、社会へ広げていく」。そして、ビジョンは「人起点で『くらし』をより良く、快適にする」と掲げ、ES社は、そのミッション・ビジョンを通して、「くらしアップデート」の実現を目指している。

今、ビッグデータ収集・解析をはじめとした数々の先端技術が台頭している。そうした中で、北野氏はパナソニックの強みについて、「人々のくらしの中にリアルなタッチポイントをたくさん持っていること」を挙げる。

例えば、見守り。くらしのタッチポイントとデジタル技術との融合によって、人々のくらしぶりが手に取るように把握できるようになり、見守りの質は劇的な進化を遂げていく。

「パナソニックは、人々のリアルなくらしに寄り添った情報をさりげなく収集し、加工することで、お客様自身が気づいていなかった価値やサービスを、先回りをして提案することもできます。それは、ネットの情報だけに頼ったAIやビッグデータのサービスとは異なり、『パナソニックだからできること』を実現します」

パナソニックは、「HomeX」のコンセプトに基づいた製品の発売を予定している。それは例えば、朝になると、自動で窓のシャッターを開けて室内を陽光で満たしたり、お気に入りの音楽を静かに鳴らして、さわやかな目覚めを後押ししたりする。また、家事を賢くサポートし、花粉が多い日には洗濯物の部屋干しをお薦めするほか、家をエンターテイメント空間に変えて、映像や照明を使ったサプライズ演出を可能にしたりする。

人のくらしに寄り添う統合プラットフォーム「HomeX」。パナソニックは、「HomeX」のコンセプトに基づいた製品を発売していく

さらには、台風が近づいてきたら、自動でシャッターを閉めて蓄電池の充電を始めるなど、万が一の安全・安心も確保する。「HomeX」は、人々のくらし全体を支える情報基盤となるのだ。

北野氏は「『共存共栄』、『より良いくらし、より良い社会をつくる』という思いを大切にしながら、時代に合わせて常に変わり続ける必要がある」と語る。パナソニックは、今後も「人起点」でのお役立ちを目指して変化し続けていく。

変革するモビリティ
ミライのクルマ、街、くらし

パナソニックの考える「くらし」の領域は、家だけでなく、移動空間や街にも広がっている。

今、クルマを取り巻く環境は大きく変化し、コネクティッド化や自動運転、電動化などの技術革新に加え、シェアリングのような利用の変化が起きている。こうした変化への対応について、オートモーティブ&インダストリアルシステムズ(AIS)社 社長の伊藤好生氏は、「当社がこれまで家電で培ってきた独自技術は、車載システムにも応用できる」と語る。

伊藤好生 パナソニック 副社長執行役員 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社 社長

「家電で培ってきたデジタルAVC(映像・音響、情報・通信)や画像処理、電池・電源の技術などを活用し、コックピットシステムやADAS(先進運転支援システム)・自動運転、電動化の分野でクルマの進化に貢献していきます」

パナソニックが提供するコックピットシステムは、車内の複数のディスプレイに、クルマに乗る人それぞれに最適な情報を表示し、ドライバーの快適で安全な運転を支援する。ADASは、カメラセンシング技術によって、クルマの周辺状況を的確に認識・判断し、衝突防止をサポートする。電動化では、小型で高効率なパワートレインシステムを実現し、走行距離を伸ばしていく。

将来、小型のEVモビリティが街の中を行き交い、子供たちの送迎など、様々なくらしの領域で利用される時代になっていく

さらに伊藤氏は、完全自動運転時代のクルマにも挑戦していきたいと語る。

「ドライバーが運転から解放されることで、移動時間の過ごし方は大きく変わります。当社は創業以来、家電や住宅設備を提供し、より良いくらしのための住空間を提供してきました。その住空間の技術・ノウハウとコックピットシステムを融合させ、新たなコンセプトの移動空間を実現していきます」

新たな移動空間である「次世代キャビン」は、車内の一人ひとりをセンシングし、乗っている人たちに最適な空間をつくり出す。例えば、人の表面温度を測定して空調をコントロールしたり、用途に合わせて照明・映像・音響を制御して、移動空間をリビングやオフィス、映画館のような空間にすることができる。

そしてパナソニックは、未来のモビリティ事業にも挑戦していく。現在、パナソニックは自治体とも連携し、藤沢市や綱島(横浜市)でスマートタウンのプロジェクトを展開しており、エコで快適、安心・安全なくらしを実現するインフラやサービスを提供している。

「スマートタウンの開発・運営のノウハウと、自動運転や電動化のシステムを活用し、人・モノの移動を支える新しいモビリティ・サービスを実現していきます。例えば、少子高齢化による公共交通機関の人手不足や、高齢者の運転免許返上、ラストワンマイル物流の課題、電動化による環境負荷低減など、社会課題の解決と地域社会の発展に貢献することを目指しています。それは、誰もが安心して外出できる社会の実現につながり、街の施設の有効活用を促し、人の交流を活性化させていきます」

パナソニックは、モビリティを進化させることで、そこから街やくらしを変えていこうとしている。

日本企業の復活、次なる成長に
向けた変革へのチャレンジ

法人向けソリューションを手掛け、企業が抱える「現場」の課題を解決するのが、コネクティッドソリューションズ(CNS)社だ。同社社長の樋口泰行氏が登壇したセッションは、「日本企業の復活」をテーマに様々な議論が行われた。

樋口泰行 パナソニック 専務執行役員 コネクティッドソリューションズ社 社長

樋口氏はセッションの冒頭、日本企業の課題を「沈没する日本企業丸」のイラストで表現した。

樋口氏は日本企業を取り巻く厳しい現状を、沈みかけている船に例えて説明した

「激しい環境変化に対応できず、沈みかけている船の中にいるのに、若い社員は外を見ず一心不乱に社内の仕事をしており、危機感を抱いていません。また、経営層は自分の任期数年程の視野しかなく、持続的に成長・発展につながる戦略を考えていません。日本人は高いポテンシャルがあるのにもったいない」

さらに樋口氏は、伝統的な日本企業が抱える課題を3つのキーワードで表した。まず、最初に挙げたのが「木を見て森を見ない体質」だ。

「今、世界ではデジタルによるディスラプション(創造的破壊)が起こっています。そうした大きな潮流を見ないと、正しい戦略は立てられません。日本企業はこの20年間くらい、目前のことに一生懸命で、世界の企業をベンチマークするのを怠っていたのではないか。一方で、世界の景色だけを見ているのも駄目で、現場がどうなっているかを理解しないと、戦略を現場に落とし込むことができません。複眼的に木と森の両方を見ることが必要です」

2つ目のキーワードは「フォーマリティ(形式的であること)の排除」。

「『ずっとこうやってきたから』と何も考えずに同じことを続けたり、形式が優先されるカルチャーがあります。組織の壁をどんどん壊し、年齢・役職・性別等は一切関係なく、正しいことを何でも言えるカルチャーに変えていかないと、世界との競争に勝てません」

3つ目のキーワードが「ダイバーシティ(多様性)」だ。

「同質な人材が集まって同じ方向を向いていたら、別の角度から攻められたときに、簡単に負けてしまいます。個が活躍できるダイバーシティを重視し、多様なものの見方を採り入れることが重要です」

樋口氏自身、新卒でパナソニックに入社後、30代半ばで一度退社して、大手IT企業のトップなどを経験。20数年を経て、CNS社社長としてパナソニックに復帰した異色のキャリアを持つ。

日本企業の復活と次なる成長に向けては、抜本的な変革が求められる。CNS社もチャレンジを続けており、樋口氏は「カルチャーを変革し、世界を見ながら戦略を立て、正しいことを実行することで事業の成長に貢献し、日本全体を盛り上げていきたい」と語った。

クロスバリューイノベーションフォーラム2018 オフィシャルサイト
https://www.panasonic.com/jp/100th/forum
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