「役員食堂」で組織活性 社内制度をオーダーメイドする新事業
事業の成否は「人と組織」で決まる――。昨今、離職率の高止まりや人材流出など、「人と組織」の問題が深刻化している。そうした中で、オリジナリティあふれる「社内制度」を提案し、社員の定着や組織を活性化させる新しいツールを提供するのが、スタメンだ。
多くの企業が、人材の定着や組織の活性化の問題に直面している。上司が部下を気軽に誘いづらくなっていたり、メールの普及から直接に会話する機会が減り、コミュニケーションが気薄になっていることを気にしつつも、何をどうすればいいのかは難しく、「人と組織」を変えるのは簡単ではない。
こうした問題を解決するために、風土や社風の基盤になる「社内制度」を提案し、それを運用するためのプラットフォーム『TUNAG(ツナグ)』を提供しているのが、2016年1月に名古屋で設立されたベンチャー、スタメンだ。『TUNAG』は2018年5月に正式リリースされ、導入企業数は120社を突破。運用されている「社内制度」の総数は、2000件を超えている。
試行錯誤を経て、見出した答え
スタメンの加藤厚史社長は、名古屋に本社を置くITベンチャーのエイチームなどを経て、2016年1月に起業した。エイチームでは人事を担当するとともに、ウェディング関連や自転車通販サイトなどの新規事業を立ち上げた経験を持つ。
「事業を成長させるにはビジネスモデルも重要ですが、成否を決めるのは、やまり『人と組織』だと感じました」
加藤社長は「人と組織」を事業領域に定め、独立を決意。『TUNAG』は企業のエンゲージメント経営を支援するツールだ。エンゲージメントについて、スタメンでは「会社と従業員、従業員同士、相互の信頼関係」と定義している。
「エンゲージメントは、単なる従業員満足度とは異なります。企業がピンチに直面して待遇が悪化したら、従業員満足度は下がって辞めていくかもしれません。一方、逆境に直面しても『一緒に頑張ろう』というのがエンゲージメントです」
2016年1月の起業当初から、加藤社長の中には「エンゲージメント」というコンセプトがあった。ただ、それを具体的なプロダクトに落とし込むまでには、試行錯誤が必要だった。
「最初はもっと福利厚生寄りのものを考えていました。エンゲージメントというキーワードはあったのですが、その解決策として福利厚生という1ジャンルに絞り込みすぎていたんです。最初の1年程、売上げは全然立ちませんでした。福利厚生はエンゲージメントの数ある手段の1つだと気付いて、そこから今のプロダクトが見えてきました」
そして2017年8月頃、現在の『TUNAG』のプロトタイプが出来上がった。それに先立つ2017年3月、スタメンはジャフコや中京テレビ放送などから総額約2.8億円の資金調達を実施している。
「プロダクトがまだ固まっていない時期でしたが、私たちの『人や組織』を評価していただきました。私自身、これだけ良いメンバーがいるのだから、これで負けたら、よほど自分にセンスがないと考えていました。また、名古屋のスタートアップ・コミュニティは東京ほど大きくないので、投資家の方も含めて、お互いの顔が見えやすい。それも、投資を受けられた要因の1つだと思います」
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