2018年12月号

地域企業での「右腕」という生き方

いなげや役員から三陸地方スーパー社長に オーナーの熱意に共鳴

日本人材機構

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首都圏の大手スーパーマーケットチェーンから、三陸地方を代表する同業、マイヤ(岩手県大船渡市)の社長に転身した井原良幸氏。人手不足の質が首都圏と異なるからこそ従業員の能力が上がり、先進的な課題が存在するのが地方であるという。

井原良幸 マイヤ代表取締役社長

51歳で三陸に来たとき、「若いわね」と言われた。何の冗談かと思っていたが、実際、会社の本部で働く従業員で、社長の自分よりも若い人は半分もいなかったという。「こっちでは55歳でも若者なんです」

首都圏の大手スーパーマーケットチェーンいなげやで29年間勤め、役員も務めた井原氏は、今年2月、マイヤの社長へと転身した。

採用担当やバイヤー、商品部長、不振部門の立て直しや新規事業、店舗の店長、農業生産法人の社長など、さまざまな部門を経験した井原氏に対する引く手はあまただったが、最後はインスピレーションと現会長の米谷(まいや)春夫氏からの熱心な誘いが決め手になった。

「マイヤから声をかけて頂いて、実際に大船渡の店舗を訪れたときに、素直に良いお店だなと思ったんです。綺麗なお店を作っているし、品揃えや設備面でも努力をされている。理想としているスーパーマーケット像に非常に近く、ここだったら役に立てるのではと思いました。何より、米谷春夫現会長の存在が大きかった。考え方や思いに共感し尊敬できたことはもちろんですが、何度かお会いした後『どうしても井原さんに来てほしい』と言ってくれたんです。色んな企業のトップの方にお会いしましたが、ここまで言ってくれたのは米谷会長だけでした。その熱意に打たれ、ここまで必要としてくれているのなら、やるしかない。そう思いました」

井原氏が社長に就任するということは、それまで26年にわたってオーナー兼社長を務めてきた米谷氏の退任を意味していた。米谷氏は「流通業の環境が激変し、ITも進化する中で、全体のパイは縮小。ここは新しい感性が必要だと思った。それに、東日本大震災で被災した店舗の建て替えが昨年4月に終わり、いいタイミングだと思った」と交代の理由を話す。とてつもなく大きな存在である米谷氏からバトンを受け取った。

会長と従業員と地域の絆

東日本大震災では、マイヤは大船渡、陸前高田市をはじめとする店舗で被災。本社並びに6店舗が津波の被害にあう事態となった。そんな中、残った店舗では地震発生から1時間後に店頭での販売を開始。社員は全員無事だったものの、家族や親族が犠牲になったり、行方不明となってしまった人もいる中で、住民の命と暮らしをつないだ。「米谷会長は『スーパーマーケットという商売は、地域のライフライン』とおっしゃいます。それはどのスーパーの社長もおっしゃるんだけれども、米谷会長はその重みが違います」という。

従業員との関係も同様だ。店舗被災によって一度は解雇しなければならなかった人を、その後再雇用。マイヤと地域、米谷会長と社員は、未曽有の災害を共に乗り越えてきた固い絆で結ばれている。

お客様アンケートを見ても、「岩手の会社だから応援しています!」「マイヤさんは岩手の会社だからどこどこの調味料を置いてますよね」などの言葉が並ぶ。井原氏は、地元スーパーとして地域の方々に応援されていること、そして絆を感じる。それを築いてきたものが米谷会長であり、従業員であるということもまた、実感する。

店頭には三陸の農家が育てた旬の食材が並ぶ

これまでマイヤと米谷氏が育んできた「ビックカンパニーではなく、グッドカンパニーを」というポリシーを、井原氏も大事にしていきたいという。「地域の食文化を理解し、地域を愛している従業員が地域のお客様のために働く。そういう会社が、ローカルマーケットでありグッドカンパニーじゃないかと。お客様にとっては、その企業の店舗数や年商は関係なくて、自分のそばにあるお店が『良いか、良くないか』だと思います」

だからこそ、従業員にはお客様のためになることを何でもやろうという意識が強い。「仕事の優先順位をつける」ことが重要な仕事だと井原氏は言う。

質が違う人手不足の問題

様々な職務を経験してきた井原氏にとって、社長就任以来直面したことのほとんどは想定内だったが、"人手不足の質の違い"は地方ならではの問題だった。

「東京の人材不足というのは、お金の話で、地方だと本当に数の問題なんです。地方には派遣会社もないですし、とにかく人が足りていない。例えば、マイヤでも、夕方に商品を前進陳列したほうが良いのは分かっていても、その人手が足りない」

時給を上げれば採用できるというものではないという、地方における慢性的な人手不足。しかし、そのおかげで「小規模・地方の店舗一人ひとりの守備範囲は広くなります。実際、マイヤの従業員の一人ひとりの能力は高い」のだという。しかし、能力が高いからこその落とし穴もある。気がついてしまう分、何でもやろうとしてしまう。

「お客様が思っていること、お店が思っていることを前提に仕事をしましょうと。スタッフにも、やりたいことやこうしたほうが良いという意見はあるので、その意見を集めて、経営としてどう道筋を立てるか。それが私の役割。課題の優先順位付けやスケジュール管理、事業計画の部分です。人が少ない中でうまく回せるように、優先順位をつけてあげるんです」

スタッフとのコミュニケーションも欠かさない

慢性的な人手不足に向き合ってきたからこそ、ある意味では「地方は、あらゆる最先端を行っているんです」という。

「(人手不足解消のため)自動発注やレジ機器の投入、AIの投入も先行している。でも、それを深く理解し操作・改善できる人材が足りないという世界なんです。マイヤも2012年から自動発注のシステムを投入しているけれど、使いこなせていない。システム入れて少人数でも回せるようになったけど、守備範囲が広いので他の課題に入ってしまう。深く理解が進んでいないので分からない、ここを直さないといけないとなる。意外と人手がかかる。もっといいシステムはないか。そういう課題に早くぶち当たっているのが地方企業ですよ」

東京のようには行かない。だからこそ、力強く早く育っているものが地方にはある。スーパーマーケット風に言えば、それをどのように陳列して(優先順位をつけて)成果を出していくのか。

 

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