リカレント教育対決! 放送大学 vs. 日本女子大学

リカレント教育をめぐる日本の環境は、まだまだ発展途上だ。いち早く生涯学習の基盤を作った放送大学、キャリアブレークした女性の復帰を支援する日本女子大の取り組みの今を見る。

生涯教育のさきがけとなった 二つの大学

放送大学は1981年の設立。教養学部と大学院から成り、テレビ、ラジオによる放送授業の他、面接授業、インターネットによるオンライン授業を行う。全都道府県に学習センター、サテライトスペースなどを展開、CDやDVDによる学習もできる。原則的には遠隔授業で、入試もなく、誰でも手軽に、学びたいことだけ、自分のペースで学べることもあって、今年度1学期の在籍者数は全国で約9万人に達する。最も多いのは会社員で、看護師,定年退職者,公務員、教員、専業主婦と続く。年齢層割合も各世代ほぼ同程度で、学位、資格の取得からキャリアアップ、生涯学習,専門的な研究に至るまで、幅広い世代のニーズに開かれた学習拠点と言える。中には90歳を超えてなお学び続ける人がいるという。

学び直しのニーズは高く、35歳以上を対象にしたある調査によると、希望者は90%を超える。むろん、受講する上での課題はあり、「学費や受講料の負担が大きい」が73%、勤務時間が長くて十分な時間がない」が48%で続く。とはいえ最大24,000円の入学金と1科目最大11,000円の授業料、遠隔授業という放送大学の手軽さは大きな魅力だ。

女性の社会進出に伴って、結婚や出産などでキャリアのブランクができた女性の再就職に必要な学び直しニーズも高まっている。日本女子大学の「リカレント教育課程」はそうしたニーズに応えるもので、文部科学省の2007年度「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採択されたことからスタート、2010年から同大学「生涯学習センター」が運営し、2015年には文部科学省「職業実践力育成プログラム(BP)」に認定されている。1年間2学期のリカレント教育と、一人ひとりの資質に合わせた再就職先を斡旋する。受講生の内訳は40歳代が5割、既婚者が7割を占め、出身は6割以上が他大学だ。女性のキャリアブレークに対応するこうした取り組みが今後広がっていくことが望まれる。

OECDの2014年調査によると、日本で大学入学者に占める25歳以上の割合は、各国平均約37%に対してわずか4.36%。日本のリカレント教育はまだ始まったばかりだが、ニーズは高い。「人生100年時代」、大学のみならず、企業や自治体が今後取り組むべきことは数多い。

両大学概要

放送大学

開校 1981年
所在地 千葉県千葉市
理事長 有川 節夫
学長 來生 新
設置学部 教養学部(6コース)
大学院(7プログラム)
在学生数 ●教養学部:1 学期83,519人
●2学期85,420人
●大学院修士課程:1学期5,161人、
 2学期5,345人
●大学院博士後期課程:1 学期46人、
 2学期42人(以上H29年度)
卒業生数 ●教養学部:1学期3.272人、2学期2,122人、
 累計100,215人(H30/3月まで)
●大学院修士課程:1学期322人、
 2学期8人、累計5,535人
●大学院博士後期課程:2学期4人
(以上H29年度)

出典:ホームページ

 

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