女性活躍、2018年度の重点施策3つの柱 内閣府・男女共同参画局

女性活躍の最近の動向や2018年度の重点施策について、内閣府 男女共同参画局 総務課総括担当課長補佐の中島氏に解説いただいた。本研究会メンバーは、中島好美・客員教授、青山商事、ポーラで構成。女性活躍の理想形を模索している。

中島 薫(内閣府 男女共同参画局 総務課総括担当課長補佐(役職は2018年7月24日当時))

企業の女性活躍の取組を促進する
「見える化」施策

内閣府で男女共同参画政策に携わる中島薫氏は、1946年の婦人参政権の行使と両性の本質的平等が明記された日本国憲法の公布から、2016年の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の施行まで、女性活躍を巡る政策の歩みを振り返った。そして、「女性の就業者数はこの6年間連続で増加し、第一子出産前後の就業継続率が50パーセントを超えるなど、社会における女性活躍は進んでいます。しかし、諸外国と比較すると、男女の賃金格差や女性役員・管理職の割合の低さなど、課題はまだまだ残っています」と述べ、現在政府が進める取組を紹介した。

2015年に成立した女性活躍推進法では、民間事業者や国・地方公共団体に対し、女性の採用や管理職割合、残業時間の状況などを把握・分析して、数値目標を含む事業主行動計画を策定し、それを公表することや、女性の活躍に関する情報を公表することを義務づけている。(ただし常時雇用数300人以下の民間事業者は努力義務)。

それに基づき、国は優良な民間事業者を認定(えるぼし認定)し、価格以外の要素を評価する公共調達の際に加点評価を行っている。この「えるぼし認定」は、企業のポジティブ・アクションを推進し、女性活躍の前提となるワークライフバランスを実現させようという取組である。国の全26機関が2016年度中に取組を開始しており、同年度の取組状況は、取組対象調達全体の約15%にあたる約6200億円。2018年6月末時点で、えるぼし認定取得企業数は630社となっている。

「企業にリサーチしたところ、これから認定を取得する予定の企業では、認定取得の目的として、『えるぼし認定による国の事業の入札等でのメリット』を挙げた企業が6割に上り、一定のインセンティブ効果が働いていることがわかりました。また、厚労省は、『女性の活躍推進企業データベース』において、企業の女性活躍状況を″見える化″しています。このサイトを見れば、各企業の女性活躍状況を比較することができます。就職活動にも活用してもらえるよう、学生さんにも働きかけをしています。」。

取組の「見える化」により、企業の女性活躍推進の取組は優秀な人材を確保するうえでますます重要なポイントになりつつあるようだ。

上場企業の女性役員数の推移

出典:東洋経済新報社「役員四季報」(2017年版)

2018年の重点方針は
フェアネスの高い社会の構築

この6月にすべての女性が輝く社会づくり本部は「女性活躍加速のための重点方針2018」を決定した。この方針は2015年から毎年策定している。

「日本にはいまだに根強い『男社会』が残っており、女性が抱える困難が解決すべき課題として社会で認識されていないのではないか。こうした考えの下、重点方針2018では、解決されないまま社会に残っている課題、例えば、女性特有の健康上の課題や、女性に対する暴力など『女性活躍"以前の"課題』を解消するとともに、女性が働きがいを持てる就業環境の整備を通じて、フェアネスの高い社会を構築することを基本コンセプトとしました」(中島氏)。

重点方針2018には3つの柱が設定されている。

①「安全・安心な暮らしの実現」。子宮頸がん・乳がん検診のさらなる普及や産後うつや女性更年期への対策を強化するほか、妊娠した学生への学業継続に向けた対応やひとり親家庭への支援などを行う。また、性犯罪・性暴力やセクハラ、DVなど、女性に対するあらゆる暴力の根絶に力を注ぐ。

「たとえば低用量ピルは、子宮内膜症など女性特有の疾患に比較的有効だと言われていますが、多くの女性がピルと聞いただけで使用を躊躇します。こうしたことを含め女性の健康保持への理解を広めていこうと考えています」。

②「あらゆる分野における女性の活躍」。多様で柔軟な働き方の推進や「学び直し」を拡充するとともに、男性の暮らし方・意識の変革を促進する。女性役員登用の拡大や女性の起業支援を強化するほか、あらゆる分野における女性の参画拡大・人材育成を進める。

③「女性活躍のための基盤整備」。子育てや介護基盤の整備や教育の負担を軽減する。学校教育段階からキャリア形成についての学びを充実させる。さらに、女性の働く意欲を阻害しない制度の在り方を検討する。

中島氏は、「重点施策のなかでも、とくに女性活躍情報の見える化の促進や女性役員登用の拡大、キャリア形成に係る学びの充実に注力したい」と意欲を示した。

女性役員候補者育成研修を実施
修了者は人材プールに登録

内閣府は、2017年9月に、女性役員登用の拡大に向けた「女性リーダー育成事業」をスタートしている。

「上場企業の女性役員の割合は現在わずか3.7%ですが、これを2020年までに10%に引き上げるのが目標です。しかし、役員と聞くと自分のこととして捉えられない女性が多いのも現状です」と中島氏。

そこで「女性役員候補者育成のためのモデルプログラム」を策定した。

「プログラムは企業会計や経営戦略、全体的な技術の動向など、役員として必要な知識、法律上の義務や責任、コーポレート・ガバナンスなどを学ぶとともに、縦横のネットワーク構築を促す内容です」。

昨年度は京都と神奈川でプログラムに基づいた研修を実施。61名の研修修了者には内閣府名の修了証書を授与した。また、修了者のうち同意が得られた28名は、役員候補者の人材プールとして企業に活用してもらえるように、内閣府のホームページにリストを掲載している。今年度は研修実施地域を神奈川・関西・愛知に拡大し、大学との連携も検討しているという。

「女性役員の登用により多様な視点や価値観が経営に反映されることは、イノベーション促進や企業競争力・企業価値の向上などにつながります。また、女性役員がメンターとなれば、裾野が広い女性人材育成が加速していくでしょう。その結果、女性役員が増える環境が整うことが期待されます」。

内閣府では女性活躍の社会的機運の醸成にも力を入れている。役員・管理職への女性登用に関する方針や、その取組と実績、それらの情報開示に優れた先進的な企業を顕彰するため、2014年に「女性が輝く先進企業表彰」を創設。2017年度は、高島屋と東邦銀行に内閣総理大臣表彰を授与。近畿健康管理センター、ヒューリック、積水ハウス、平鹿悠真会、日本アイ・ビー・エムの5社に内閣府特命担当大臣(男女共同参画)表彰を授与した。