ミシュランガイドの本質とは? 100年続く仏タイヤメーカーの戦略

世界中のレストランやホテルを星の数で評価する『ミシュランガイド』。出版元のミシュランは、100年以上の歴史を持つフランスのタイヤメーカー。ガイドブックを作った歴史を紐解きながら、そのビジネスの本質を探る。

伊東 孝泰(日本ミシュランタイヤ ミシュランガイド事業部)

ドライブを快適にすれば
タイヤが売れる

ミシュラングループはパリから南に約400㎞のクレモン・フェランに本社を置く、フランスの会社。従業員は全世界で11万7,000人。現在、170カ国で68カ所のタイヤ生産工場を有し、ヨーロッパ、北米、アジア(日本:群馬県太田市)に3カ所の研究開発センターを持つ。

日本ミシュランタイヤ・ミシュランガイド事業部の伊東孝泰氏は、「本社のクレモン・フェランは山岳地帯で気候の寒い地域ですが、そこにわざわざ温室を作り、ゴムの木を育てるほど、タイヤを愛している会社です」と話す。航空機、自動車、自転車、建築機械、農業機械、大型トラック、オートバイのタイヤ...。リヤカーからスペースシャトルまで、タイヤであれば何でも作る。

ミシュランの歴史は1889年に、ミシュラン兄弟が、実家の小さなゴムと農機具の製造会社を引き継いで創業した。1891年、15分という短時間で着脱可能な空気入りタイヤを開発。ユーロッパで有名な自転車レースに出場し、2位に8時間の大差をつけ優勝。ミシュランの名を世に知らしめた。1895年には自動車タイヤに挑戦。重量が大きな自動車に、世界で初めて空気入りタイヤを装着することに成功した。

当時、フランス全土で走っていた車は2500台程度。故障やパンクを恐れ遠くには行かず、富裕層が購入し、周囲に見せびらかすといった使われ方しかされていなかった。「安全で快適な乗り物である自動車で遠くに行ってほしい。そうでなければタイヤはすり減らないので売れない」と考えたミシュラン兄弟が思いついたのがガイドブック。1900年8月、車の修理の方法、ガソリンスタンドの場所、宿泊するためのホテルの情報を載せた『ミシュランガイド』が誕生した。

「車を使ってくださいと。安全で快適な車で、ビジネスや旅行に、遠出をするお手伝いができれば、ミシュランのタイヤは売れる。このコンセプトは今も変わっていません。モビリティへの貢献。といっても、直接的にタイヤを売るのではなく、結果的に自分たちのところに見返りがあるというユニークな発想から生まれたのが『ミシュランガイド』です」(伊東氏)。

1900年に発行されたミシュランガイドは、1904年にはフランス国外に進出、ベルギー、オランダなど、ヨーロッパ全域へ広がり、1908年には英語版が発行された。

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