パン業界をリードする 誰も真似できない「理想のパン作り」

"低温長時間発酵"や"多加水"といえば、いまや多くのパン店で取り入れられている製パン技術だ。これらを生み出し広めたパイオニアこそ、志賀勝栄である。常にパン業界をリードし、トレンドを切り拓いてきた志賀は、パン好きはもちろん、パン業界のプロたちも常に注目する真の職人であり、研究者であり、そして、哲学者なのだ。

文・油井なおみ

 

志賀 勝栄(『シニフィアン シニフィエ』シェフ)

1本のバゲットとの出会いが
パン業界に新風を吹き込んだ

パン業界をリードし続けている志賀だが、子どもの頃はパン嫌い。給食のパンもいつも残していたという。

「新潟の田舎じゃ、パン屋にも、あんぱん、コッペパン、ジャムパンくらいしかなかったですしね。上京してからパンも食べるようになり、なんとなくバゲットを買ってみたら、うまくて。こんなパンもあるんだと、驚きました」

就職を考えたとき、そのときの衝撃が頭をよぎった。実家は農家。食に携わることへの特別な思いもあり、パン業界に身を投じた。基礎を身につけた後、転職したアートコーヒーでは、職人気質の上司のもと、その腕を磨くが、大きな企業の"サラリーマン"であることに違和感も覚えたという。

「会社の方針やコストの壁があるので、作りたいパンをそのまま商品化できるとは限りません。働いた時間が賃金になるような働き方にも疑問を感じました。30歳を過ぎて管理職になってからは、会社の方針ではなくて、自分の基準で採用し、育成できたら、もっとちがう仕事ができるんじゃないか、などと考えるようにもなりました」

そんな志賀の元に、当時はなかった"ベーカリーカフェ"のシェフにとの誘いが舞い込んだ。

「1階がベーカリーカフェで2階はレストランという、それまでにないスタイルで、上司はレストランの総料理長。新しい環境で、初めて違う職種の人たちと働き、刺激を受けました」

賞もコンペも負け知らず
天才が見つけた自ら生きる道

ベーカリーカフェが人気店として軌道に乗った頃、ある有名雑誌で、『ゴー・ミヨ』のレストラン批評などで著名なフランスのジャーナリスト、フランソワ・シモン氏が最高のバゲットを選ぶという企画が立ち上がる。バゲットに導かれてこの道に進んだからには、トップを獲りたい。志賀はさらなる研鑽を重ね、見事優勝。志賀のバゲットの評価は確かなものとなった。

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