アイセイ薬局 「拡散される」健康啓発フリーペーパーを実現

全国に約350の調剤薬局を展開するアイセイ薬局。地域や患者に役立つ健康情報を発信するため、薬局の店舗をメディア化した。クリエイティブにこだわったフリーペーパーを配布し、健康経営の支援も目指す。

堀浩之 アイセイ薬局 ストアプロモーション事業メディア統括(左)、門田伊三男 ヘルス・グラフィックマガジン編集長(右)

調剤薬局チェーンのアイセイ薬局では、自社で編集・発行しているフリーペーパー「ヘルス・グラフィックマガジン」と、薬局店舗をメディアとして、健康情報を発信している。ヘルス・グラフィックマガジンは、SNSやネットで注目を集めるなど、薬局のフリーペーパーとしては異例の成功を収めた。

アイセイ薬局がメディア活用を進めた背景には、医療費を抑制しようという社会の大きな流れがある。まず、調剤薬局チェーンに対して健康保険組合が支払う対価は、減らされる方向にある。今後も進む高齢化の中で、国民皆保険の健康保険制度を維持するためだ。2018年の診療報酬改定では、処方箋の受付回数が多い大手チェーンや、医療モールで医療機関に不動産を賃貸している薬局などに対し、調剤報酬を減らす処置が取られた。その一方で、経済産業省の「健康経営企業」認定のように、健康の維持や予防医療に投資をしようという機運も高まっている。

このような流れのもと、アイセイ薬局のメディア関連事業の狙いは2つある。1つは、主力事業の成長が見こめない中、自身をメディア化し、自社資源を生かした新規事業を育てること。2つ目は、健康に関する情報を企業の社会的責任(CSR)として発信していくことだ。

店舗を媒介に情報を流す

アイセイ薬局は、全国で約350の調剤薬局を運営している。店舗そのものをメディア化する「ストアプロモーション」事業では、薬局のデジタルサイネージを利用した広告枠の販売や、サンプリングなどを請け負う。調剤薬局を訪問すると、健康食品や化粧品などのポスターを見る機会がある。 これをチェーンとして組織化・洗練化し、広告枠として提供したものといえる。

アイセイ薬局のデジタルサイネージである「ヘルスケアビジョン」では、待合室のモニターに、疾患の治療や健康の増進に関する啓発の情報を提示するとともに、顧客企業・組織の広告を流している。調剤薬局は、処方箋を持って来局した患者の年齢や性別、治療を受けている病気のカテゴリーなどの情報を持つため、属性を絞った広告が可能になる。例えば、高齢の利用者が大半を占める薬局では、振り込め詐欺防止の広告を、小児科の処方箋を多く受け付ける薬局では、小さい子供を持つ母親向けの広告を表示するのだ。

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