フィンテック時代、東証のビジョン 取引所ビジネスの新たな地平

3600社超の企業が上場する東京証券取引所。地方企業を含めて、IPO(新規株式公開)の促進に力を入れるほか、フィンテックの活用に向けた研究も推進する。取引所ビジネスの新たな展開について、東証・宮原幸一郎社長に話を聞いた。

宮原 幸一郎(東京証券取引所 代表取締役社長)

――近年、AI(人工知能)やITの進化によって、フィンテック市場が急速に拡大するなど、取引所をめぐる事業環境や市場構造は大きく変化しています。

宮原:我々にとってAIやフィンテックは、それらの活用によって効率的で安価なサービスが実現される期待がある一方で、取引所を代替するような新たな技術、事業者の出現への脅威という、2つの側面があります。

脅威という面で言えば、全く想定していなかったところから新しいプレーヤーが登場し、これまで取引所が担ってきた機能を代替するかもしれません。何が起こるのかを正確に予測するのは難しく、重要なのは、新技術の動向を迅速につかみ、活用できるものは我々も早急に導入していくことです。

2013年に東京証券取引所グループと旧大阪証券取引所(現大阪取引所)が統合し、日本取引所グループ(JPX)が発足していますが、現在JPXでは、世界の動向を調査し、新技術に迅速にキャッチアップするための組織「フィンテック推進室」を設置しています。

特に注目しているのは、「ブロックチェーン」と呼ばれる、仮想通貨にも使われている分散型ネットワークの技術ですが、こうした新技術の検証を1社だけで進めるのは限界があります。

そこでJPXでは、40社ほどの証券会社、金融機関のほか、金融庁、日本銀行も参加する業界横断的な実証実験の環境を提供し、活用の可能性について検証を続けています。

一方で、AIやフィンテックは、我々にメリットをもたらす側面もあります。

例えば、JPXの一員であり、取引所において自主規制業務を行う専門機関、日本取引所自主規制法人は、多くの人手をかけて不公正取引の審査を行っていますが、初期段階の調査にAIを導入しました。これにより審査担当者は本格的な審査に注力できるようになり、大幅な業務効率化が期待できます。

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