いつもの公園、いつもの場所を、そのまま「シアター」にする――。松戸市において、公共空間を活用したユニークな取り組みが続いている。数々の企画を実現できた背景には、行政との関係を築いてきた努力と工夫がある。

千葉県松戸市の「21世紀の森と広場」を舞台に行われる『ドコでもシアター』。プロのミュージシャンによるイベント等を開催し、人が自然と集う場をつくり出している
市との信頼を築いてきた実績
2018年6月までに千葉区間の開通を目指して、建設工事が進む「東京外環道」。工事が完了しつつある千葉県松戸市区間では、開通前の2017年春から一部を開放してコンサートや防災イベントの開催、有名アーティストのミュージックビデオの撮影などが行われている。
これらを実現させているのが、松戸市や首都国道事務所(国土交通省関東地方整備局)と連携したプロジェクト「MATSUDO DANDAN HIGHWAY(マツドダンダンハイウェイ)」。その中心人物が、一般社団法人STUDIO MOC代表理事の萩野正和氏だ。
近年、日本各地で「公共空間の活用」が模索され、さまざまな試みが行われている。しかし、開通前の高速道路を長期間開放し、官民連携で活用するのは前代未聞だろう。萩野氏がこのプロジェクトを担当できるのは、松戸市との信頼関係を培ってきた実績があるからだ。
萩野氏は、「公共空間の活用」が現在ほど注目されていなかった2012年から、松戸市と組み、市内にある約50haの公園「21世紀の森と広場」を舞台にして『ドコでもシアター』というイベントを開催してきた。
とはいえ、そうした協働を実現するまでには、数々の試行錯誤があった。そもそものきっかけは、萩野氏の提案だった。
「最初は、夜に野外で映画の上映会をしたいと考えていたんです。私は松戸市の在住で、あるとき、『21世紀の森と広場』に良い空間があると気づきました。それで、松戸市に問い合わせたのですが、『夜は公園を閉めているからダメだ』と。でも、担当者から『みどりの良さを伝えるイベントをやりませんか?』と逆に提案されたんです」
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