体験型の防災訓練 「巨大マップ」で地域の危険を共有

2017年、3度の集中豪雨に見舞われた愛知県犬山市は9月3日、総合防災訓練を今井地区で実施した。住民が主体となる「避難」と「避難所運営」に主眼を置いた訓練では、ゼンリンが制作した巨大マップが活躍。地域全体を俯瞰して見ることで、地域に潜む危険を住民全員で共有することを狙った。

山田拓郎 犬山市長

百武俊一 犬山市市民部地域安全課課長

豪雨被害で明らかになった
土砂災害リスク

愛知県犬山市は、2017年7月、8月、立て続けに大雨による自然災害に見舞われた。特に7月14日には記録的短時間大雨情報により、土砂崩れや河川越水による災害の危険があるとして、市は約3万世帯、約7万4千人に避難指示を出した。

実際に市内で土砂崩れが確認されたほか、床上浸水、床下浸水、各地で道路が冠水するなどの被害が出たという。今回防災訓練を行った今井地区は、山間部で大雨などによる土砂災害の危険性が高く、2010年にも梅雨前線による大雨で土砂崩れが起きている。

犬山市の山田拓郎市長は、「犬山市として土砂災害のリスクを再認識しています。どこにどんな危険があるのか、いざという時にどのように自分たちの命を守ったらいいのか、そうしたことに関して共通認識を持つ。あるいは、地域の地勢を改めて確認することが非常に重要だと感じます。訓練を機会に、住民のみなさんと防災への意識を高めていきたい」と話す。

当日は8時30分に安心情報メールを配信し、訓練を開始。各地区とも事前に決めた集合場所で安否確認を行い、歩いて会場となる今井小学校へ。会場ではスタンプラリー形式で、応急手当やAEDなど各ブースを体験、学習した。

災害時には公助だけでなく自助共助が重要となる。犬山市市民部地域安全課の百武俊一課長は、「こうした体験型の訓練を行うことで、避難所を開設した時に自分自身がどんな役割を担うのか、どんなことができるのかを意識していただければと思います」と話す。

訓練の為に用意された特製巨大マップ。参加者が自宅の位置や地域の警戒区域を確認しながら、避難経路を把握できるようになっている。

巨大マップで
身近な危険を再確認

今回の防災訓練での大きな特長は、避難会場に地域全体を俯瞰できる縦8.5m×横6mの巨大マップを準備したことだ。

巨大マップはゼンリンが制作したもので、各住民の家の位置が明確に記された地図上に、愛知県のまとめた土砂災害情報などを反映している。参加者は自分の家を見つけ、さらに、自宅周囲や避難経路にどんな危険エリアがあるのかを把握。実際にどこに避難すれば安全なのかを、目で見て体験することができる。

「今井地区は、土砂災害の警戒地区の多い地域です。山の近くに住んでいる方は、リスクをなんとなくは分っていると思いますが、実際に地図で見て、自宅が危険区域に指定されているのかを確認することで、防災の意識がより高まります。その上で、どこにどう避難すればいいのかを、改めて確認することが重要だと考えます」(百武課長)。

災害時にはいかに早く避難するかと、いかに災害に合わせた避難ができるかがカギとなる。自分たちの住んでいる地域の特性、家の周囲の状況を知ることは、安全に避難する上で欠かせない要素だ。実際に住民からは「これだけ大きい地図だと自宅も把握でき、避難すべき経路もわかりやすい」「実際に巨大マップを見て、災害の危険性がある地域がこれほど多いことに驚いた」という声があがった。

「どの自治体でも防災訓練を行っていると思いますが、特に体験型の防災訓練には、こうした巨大マップの活用が効果的かと思います」と百武課長。犬山市では、巨大マップを使った防災訓練は今回が初めて。今後、地域の特性ごとに必要性や有用性を検討し、他地域での訓練での活用も考えているという。

豪雨被害時は、
ゼンリンとの協定が有効に機能

防災訓練向けの巨大マップを制作したゼンリンと犬山市は、2017年1月に『災害時支援協定』を結んでいる。

これは、有事に"即、地図を利用し行動する"ための協定。地震や台風などの災害発生時には、場所の特定や周辺状況の確認に地図が欠かせない。しかし、災害発生時にゼンリンから現地へ即地図を届けられるとは限らず、自治体が常時最新の地図を保有することも困難だ。協定では、ゼンリンが災害時に利用できる備蓄用地図・広域地図を提供。備蓄地図に関しては一定期間の複製利用を許諾するとともに、インターネットで利用できる住宅地図も無料で提供する。

実際に7月に起きた豪雨では、この協定による地図の存在が有効に機能した。百武課長は「協定により、最新の備蓄地図を5冊提供してもらっています。浸水や冠水、土砂崩れなどの被害情報が入ってきた時に、場所を特定するのに本当に役立ちました。特に新しく転入された方の家などは、直近の地図でしか確認できませんので、災害時に最新の地図が手元にあることは、大きな意味を持ちます」と話す。

また、広域地図は、他地域からの応援を受け入れた場合に、地域全体の状況を説明するのに役立ったという。

犬山市では2018年に向け、現在ある防災マップをリニューアルし、市民へ配布する予定だ。防災マップには、どこにどんな危険があるのかはもちろん、それに対してどんな備えが必要か、いざ起きた時に必要な心構えなども入れ込む。防災に関する情報を分りやすくコンパクトにまとめ、地域で共有するためのツールとしていく方針だ。

災害発生時はもちろん、防災意識の啓発にも大いに役立つ地図。ゼンリンは自治体それぞれの課題に寄り添い、「安全・安心なまちづくり」をサポートする。

ゼンリン
自治体支援プロジェクト
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