2018~2020年、政策の近未来年表 法改正が生むチャンス

5年間のアベノミクスの下、「デフレではない」状態にたどり着いた日本経済。とはいえ少子高齢化は止まらず、介護が必要になる高齢者は増えていく。この課題を解決し、成長を継続すべく、生産性を改善する仕組みの構築を計画している。

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2018年(平成30年)戌年、新規事業の構想に役立ちそうな国の施策、政策にはどんなものがあるだろうか。

観光業にとって歴史的な年に

2018年は、観光業や不動産業においては歴史的な年となることが決まっていると言っていいだろう。6月15日には民泊新法が施行され、空き部屋を旅行者に貸すビジネスが法的な裏付けを得る。と同時に、自治体への届け出義務が生じ、年間の稼働日数を制限するなどの規制も受けるようになる。

民泊の合法化を受け、これまで参入に慎重な姿勢を見せていた大企業も、先行している中小企業と連携する形で、民泊事業への参入を始めた。みずほ銀行は、米国の民泊仲介最大手企業Airbnb社と、国内の民泊の普及・拡大などを目的に業務提携。楽天は、LIFULLとともに立ち上げた合弁企業の楽天LIFULL STAYにおいて、楽天ブランドの民泊の運営を計画している。JTBは百戦錬磨(仙台市)と業務・資本提携。百戦錬磨の民泊予約サイトをJTBグループの訪日外国人旅行者向け予約サイトと連携させた。

民泊新法施行に先駆け、1月には改正通訳案内士法が施行される。これにより、通訳案内士の資格がなくても有償での通訳ガイドが可能になる。合わせて、改正旅行業法も施行され、旅行サービス手配業(ランドオペレーター)の登録制度が始まる。規制緩和で海外からの観光客に対応できる体制を構築するとともに、旅行の安全や旅行者の利便を害する業者を排除できるようにしている。

また、改正割賦(かっぷ)販売法も、6月に施行される。同法は、クレジットカードの利用に際して、カード事業者や契約店などの事業者が守るべきルールを定めた法律だ。改正の目的は、「革新的な金融サービス事業を行うFinTech企業の決済代行業への参入を見据えつつ、安全・安心なクレジットカード利用環境を実現するための必要な措置を講ずる」(経済産業省)こと。

今回の改正法の施行により、「クレジットカード番号の取扱いを認める契約を締結する事業者」に登録制度を設けることになった。これに登録すれば、スマホ端末決済などを提供するFinTech企業も、法的な地位を獲得できるようになる。

カードの不正利用防止策としては、ICチップ付きクレジットカード対応端末の導入義務付けがある。日本はICチップ対応端末の導入が遅れており、2015年のVISAの発表では2割を切っていた。海外からの観光客受け入れの面から見ても、重要な法改正と言えるだろう。

国の政策に関する近未来年表

出典「: 新しい経済政策パッケージ」を基に編集部作成

 

新しい経済政策パッケージ

2018年度から2020年度までに、国が力を入れて取り組む重点施策は、2017年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に詳しい。少子高齢化や成長力の停滞など構造的な問題を、「人づくり革命」と「生産性革命」の2本立てで解決しようというものだ。

人づくり革命は、高齢者を介護する人や子育て世代を支援するもの。保育・介護人材の賃上げや、教育の無償化などが盛り込まれている。これらに必要な約2兆円の財源は、2019年10月の消費税増税による増収分の半分と、企業拠出金3000億円を充てる。

生産性革命では、2020年までの3年間を集中投資期間として、税制、予算、規制改革を行う。目標は、生産性の伸びを年2%とすること(2015年までの5年間の平均は0.9%)、対2016年度比で日本の設備投資額を10%増加させること、そして2018年以降3%以上の賃上げを達成すること。

個々の施策の概要と、その達成時期は右表の通りだ。まず、「人づくり革命」として、待機児童対策や高等教育の無償化を行うほか、経験・技能のある介護職員の処遇改善を進める。消費税率を引き上げる2019年10月から、勤続10年以上の介護福祉士に対し、月額平均8万円に相当する給与アップを行う介護サービスだけでなく、障害福祉にかかわる人の処遇も同様に改善する。

また、「生産性革命」では、中小企業の事業承継を支援するため、今後10年間、取組を強化する。このため、早期の事業承継の準備開始から事業承継後の経営革新の支援まで、シームレスにサポートする。 事業承継税制については、制度の活用の阻害要因となる猶予制度や、雇用要件などを改善する計画。さらに、全国で幅広く地域経済牽引事業が実施されるよう、3年で2000社程度の支援を目指す。

経済が縮小傾向にある中、将来の財源を育てる狙いもあり、国の政策は挑戦する人の背中を押している。2018年に、どのような事業を構想したいのか。その実現のために、利用できる国の施策はないか。可能性があれば、詳細を調査してみる価値はある。