『図書館』から街の未来を描く 建築が変える「公共」のカタチ

建物をつくるだけでは、街は変わらない。公共領域で実績を築く新世代の建築家、UAoの伊藤麻理氏は、街の未来を視野に入れ、新しい『図書館』を設計する。

今、都市におけるパブリックスペース(公共空間)のあり方が、問い直されている。全国には、数多くの公共施設があるものの、あまり活用されず、遊休化している施設も少なくない。人口減少・少子高齢化が進み、地域は深刻な課題を抱えているにもかかわらず、多くの公共施設が、課題の解決に資するような役割を果たせていない。

そうした中、栃木県那須塩原市で新しい『図書館』の建築計画が進んでいる。設計を担当しているのは、UAo(Urban Architecture Office)。代表の伊藤麻理氏は、1974年生まれの若手建築家だ。

図書館に限らず、美術館や博物館など大型の公共施設は、これまでベテラン建築家の領域だった。伊藤代表は従来の「建築」の枠組みを超えた手法によって、公共領域で自らの活躍の場を広げている。

2019年春に竣工予定の「那須塩原市駅前図書館(仮称)」。本で情報を得るだけでなく、人とつながり、体験から学びを得る新しい『図書館』になる

日本を離れ、単身オランダへ

UAoが重視しているコンセプトは、「建築とランドスケープ(自然、周辺環境)の融合」。伊藤代表は那須塩原市の出身であり、大学で建築を学ぶために上京したことが、自身の建築家としてのビジョンにも影響を与えた。

「自然が豊富な那須で育ちましたが、東京に来て、緑がないことに違和感を抱きました。それで、建物と自然との調和、バランスに関心を持つようになったんです」

海外に目を向けると、自身が理想とする「ランドスケープとの融合」を実現している建築は数多く生まれいた。レム・コールハース(オランダの建築家、都市計画家)などに関心を持った伊藤代表は、大学院で建築学を修めた後、オランダに渡り、現地の建築事務所で働きながら経験を積んでいった。

「海外では、建築と街づくりが一体になっていて、その街に必要とされる機能や人の流れを考えて、建物が設計されています。一方、日本は縦割りになっていて、まず都市計画があり、建物の要件が決められたうえで、その話が建築家のところに降りてきます。日本では、その建物が本当に必要なのかが問われることもなく、計画ありきで進められて、『ハコモノ』などと言われるような、あまり使われない公共施設も増えています」

建物をつくり、一時的な賑わいが生まれたとしても、それだけで街が変わるわけではない。街の持続的な発展につなげるためには、建築と街づくりが一体となるような方法を確立し、日本でも実践していく必要がある。

オランダから帰国後の2006年、伊藤代表はUAoの前身となる事務所を設立。自身の理想をカタチにするための一歩を踏み出した。

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