「こども20年変化 タダ・ネイティブ、あらわる」博報堂調査

研究発表イベントには多くの人が集まった

 

石寺 修三 博報堂生活総合研究所所長

博報堂生活総合研究所は7月26日、研究発表イベント・サマーセミナー2017「こども20年変化 タダ・ネイティブ、あらわる」を開催し、子どもの意識調査の結果を発表した。同研究所は1997年から10年毎に、小学4年生から中学2年生の子どもを対象にアンケート調査を実施している。20年の間で子どもたちの意識や行動はどう変わったのか、また変わっていないのか、調査結果をもとに考察が行われた。

1997年の調査では、高度情報社会を生きる90年代の子どもたちを、世の常識や自分の役割、他者との関係などに俊敏に適応しながらスイスイ生きる「少子化時代のアメンボ・キッズ」と命名した。また2007年の調査では、00年代の子どもたちを、学校で穏やかな「関係」を、家ではしっかり「休息」を、興味領域では「自我」を確保して、暮らしをやりくりする「暮らしの『3点確保』に向かうアフターバブル・キッズ」と命名した。

10年ぶり3度目となる今回の調査では、首都圏800人の男女を対象に、アンケートや家庭訪問などが行われた。調査によると、「新しい商品が出るとすぐほしくなることが多い」のは97年の56.4%から41.6%に減少、「興味のある話は人に聞くより自分で調べる」は38.8%から63.3%に増加し、ネットにあふれる膨大な無料コンテンツの中から、流行や新旧に囚われずレコメンドされたものを楽しむ、といった、現代の子どもが生みだしつつある新しい消費行動が明らかになった。

こうした、スマートフォンやタブレットPCを活用し、タダ(無料)が前提の新しいコミュニケーションや消費を楽しむ10年代の子どもたちの姿を、「デジタル・ネイティブ(物心ついた時からデジタル機器に囲まれた若い世代)」にかけて「タダ・ネイティブ」と命名した。

未来を担う
「タダ・ネイティブ」に学ぶ

10年後には大人になるタダ・ネイティブと、どう"共生"するか。社会は人口の増える高齢者に目がいきがちだが、次代の日本を担うのは子ども。彼らを理解せずして、日本の未来を考えることはできない。

タダ・ネイティブを、コンテンツの新旧に囚われずに思わぬ価値や使い方を見つけてくる達人と捉え、「会社が持っている古い技術や商品・コンテンツを託してみてはどうか」と、同研究所の石寺修三所長により提案がなされた。

彼らに学ぶことにより、自社のアーカイブを、思いもつかない価値を生み出す可能性がある資産として、捉え直すことができるかもしれない。


調査データは、博報堂生活総合研究所のホームページで一般公開されている。