パナソニック、エンタメで存在感 空間全体を演出、収入増に貢献

新たな体験型エンターテインメントとして注目を集めている『フエルサ ブルータ』。同公演の空間演出をサポートしているパナソニックは、協賛・技術協力するだけでなく、自ら出資して製作委員会に名を連ねており、興行収益の増加にも貢献している。

ロビー空間をネットワークカメラで撮影し、画像を解析。来場者の滞在状況に合わせて、空間全体の映像表現を変え、物販収入・協賛金収入の増加に貢献する

8月1日にスタートし、多くの観客を熱狂させている体験型エンターテインメント『フエルサ ブルータ』。同公演は、これまで世界30ヵ国・500万人以上の観客を魅了してきた。

今回、東京・品川プリンスホテルの「ステラボール」を会場に、最新作「Panasonic presents WA!-Wonder Japan Experience」が世界初公開されている。

『フエルサ ブルータ』とは、スペイン語で『獣のような力』。360度の空間での爆発的なアクション、ダイナミックな音楽、光と映像、最新テクノロジーを駆使した装置が、スピード感あふれる演出によって一つになり、観客に驚きと感動をもたらす。その会場空間の演出に大きく貢献しているのが、パナソニックだ。

井上敏也 パナソニック ブランドコミュニケーション本部 Wonder推進室 総括担当課長

パートナーとして価値を高める

同社は、今回の公演に協賛・技術協力するだけでなく、自社で出資しており、製作委員会の一員となっている。

その狙いについて、Wonder推進室総括担当課長・井上敏也氏は、「エンタメ事業者のパートナーとして興行に参画することで、エンタメ事業側の課題に直接触れ、当社が、どういったソリューションを提供できるかの検討につなげます。通常のスポンサーシップでは、それは不可能でした」と語る。

会場では、同社のデジタルサイネージ新ブランド「AcroSign(アクロサイン)」を活用し、エントランスやロビーの空間演出を行った。コンセプト提案から施工、コンテンツ制作、保守・運営まで、ワンストップでソリューションを提供している。

「日本をテーマに制作した本作では、鳥居が一つのモチーフです。そこで、劇場の入口に鳥居型のゲートサイネージを設置し、プロジェクター、ディスプレイ、床面LEDなどを使い、空間全体で作品の世界観を表現しています。

課題の一つに物販促進があります。顧客の動線を考え、どういった情報を、どのタイミングで、どんな方法で伝えるか、という全体設計が必要になります。そしてそれが、全体の演出の世界観と調和していることが重要です。それをトータルにプロデュースすることで、興行に貢献していきます」(井上氏)

ロビーには、360度全方位を撮影できるネットワークカメラを導入。周囲の来場者の滞在状況を解析し、最適な演出・表示を行うことに加え、空間が一斉に連動する圧倒的な映像表現を実現し、物販収入・協賛金収入の増加につなげようとしている。

「ネットワークカメラを1台設置すれば、演出発動のトリガーになり、さらに顧客分析や運営改善提案までできるというトータルなソリューションが、我々の強みです」(井上氏)

エントランスには、鳥居型のゲートサイネージを設置

エントランスのゲートサイネージは、イタリアで開催される世界的なデザインの祭典「ミラノ・サローネ」で2016年にグランプリを受賞したインスタレーションをアレンジしたもの。インタラクティブに演出される床面のLEDボードが組み合わさり、立体的な映像空間をつくり上げている。

会場のステラボールには水族館、映画館があり、たくさんの人が行き交っている。同社の空間演出によって、通行客への公演の認知を高め、SNSでの拡散も促す。それは、チケット収入の増加をもたらすことになる。

佐村智幸 パナソニック システムソリューションズ ジャパン IoTプラットフォーム部 部長

技術視点から顧客視点へ

同社は「AcroSign」ブランドの下、観光や防災など、様々な領域でサイネージ事業を展開している。エンタメ分野は、「AcroSign」の活用シーンの一つだ。

パナソニック システムソリューションズ ジャパンのIoTプラットフォーム部部長・佐村智幸氏は、「パナソニックには製品が豊富にあり、多様なコンテンツを最適なシステムで配信します。映像・照明・音響など様々な技術を掛け合わせて、業界ごとのお客様に合わせた最適なソリューションを提供できます」と語る。

『フエルサ ブルータ』では、数々の実験的な取り組みを行っているが、そこで検証した集客や物販促進などのノウハウは、今後、スタジアムをはじめとする常設エンタメ施設、大型商業施設など、他の業界へも水平展開されることになる。

「魅力的な空間づくりは今、様々な業界で重要なテーマです。建築設計の初期段階からサイネージを活用した演出を検討するケースも増えています。かつてのパナソニックは、ハードや技術が先にあり、それをどう生かすかを考えていました。今は逆で、お客様が何を求めているのか、何を表現したいのかから入り、それに合わせたソリューションを構築します」(佐村氏)

メーカー視点、技術視点から、顧客視点へ。ハードの切り売りではなく、サービス提供型モデルへと転換し、パナソニックはBtoBでも存在感を高めている。

 

辰巳 清(たつみ・きよし)
アミューズ アミューズ総合研究所 主席研究員

 

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パナソニック株式会社
ブランドコミュニケーション本部
Wonder 推進室
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