ベンチャー支援大学対決! 東京大学 vs 京都大学

各産業分野での膨大なシーズを事業化する大学発ベンチャー企業への期待は大きい。ベンチャー育成・支援に力を入れる大学が増加するなか、特に多くの実績を残してきた東京大学と京都大学の現状を比較する。

国立大学が示す大学発VBの新段階

経済産業省によると、2015年に最も多くの大学発ベンチャー企業(VB)を創出したのは東京大学で216社。続く京都大学は97社で、東大の起業熱が特に高いことがうかがえる。

国立大学がVB育成に乗り出す転機となったのは2004年。国立大学法人化により国の交付金が減ったことで、大学は自前で外部資金を捻出し、特許などの知財も管理する必要に迫られた。このため、蓄積されたシーズをマネタイズするための大学発VBが急増。東大からは、2005年に、ミドリムシから化粧品やバイオ燃料を製造する「ユーグレナ」、2007年には、ペプチドから創薬する「ペプチドリーム」といった有名VBが生まれている。

創出数はその後いったん沈静化するが、2014年の「産業競争力強化法」施行により政府が国立4大学に計1,000億円を拠出したことも契機に、再び増加傾向に転じる。その2014年、京都大学はファンド規模160億円の「京都大学イノベーションキャピタル」を設立、運用期間を通常のベンチャーキャピタル(VC)より長い15年とすることでイノベーションの基盤技術育成とVB創業時の「アーリーステージ」からの投資に力を入れる。昨年の第1号案件では、再生医療関連装置を製造する「AFIテクノロジー」など計3社に、他の国立大学VCとの共同という形で投資したが、これも将来の追加投資などを容易にするためだ。昨年は東京大学も新たなVC「東京大学協創プラットフォーム開発」を設立。250億円と大学VC最大のファンド規模をもとに、東大発VBのみならず成長期のVBにも他のVCと共同投資していく。

2016年度の大学発VBは1,851社で、前年比4.4%増。研究開発を加速し競争力を向上すべく、オープンイノベーションやM&Aの活用、そして大学発VBとの連携に動き出した企業マインドの変化、国や経済界の積極的な関与も追い風に、日本の大学発VBは第2ステージに入ったと言える。

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