「江戸」という地域ブランドを活かす 大都会に蘇った酒蔵

東京・港区のビル街で、100年前まで営んでいた酒蔵が復活した。その歴史や地元の地名にちなんだ名前の酒は、東京土産として観光客にも人気だ。顧客や市場の変化に柔軟に対応し、事業を運営するその取り組みを聞いた。

(右から)齊藤 俊一(若松 代表取締役)、寺澤 善実(取締役杜氏)

100年の時を経て東京都心に酒蔵が復活

2011年に100年の時を経て、東京都港区に復活した酒蔵「東京港醸造」が今、注目を集めている。都心のビル街にある敷地22坪、鉄筋コンクリート4階建ての酒蔵で、年間を通じて酒造りが行われている。1階店舗には「江戸開城」や「東京 芝の酒」、「東京あまざけ」など、地元にちなんだ名前の商品が並ぶ。

酒蔵を復活させたのは、「若松」代表取締役で「若松屋」七代目の齊藤俊一氏だ。若松屋は1812(文化9)年、長野から上京した初代が造り酒屋として創業した。幕末には薩摩屋敷の御用商人となり、薩摩焼酎の造り酒屋として栄えた。西郷隆盛や勝海舟らも頻繁に訪れ、奥座敷は江戸開城を目指す藩士らの密談の場にもなった。藩士らが酒代代わりに残したという書は、今日も残る。

しかし、戦費として酒税が徴収された日清・日露戦争の時期には経営が困難になり、1911(明治44)年に酒造業を廃業、その後は物販業を営んできた。その若松屋を継いだ七代目の齊藤氏が、酒蔵を復活させようと思ったのは15年ほど前だった。

「戦後は約70年間、雑貨の小売業をしてきましたが、バブル崩壊後は売上が低迷していました。また、ネット通販の普及もあり、小売業の存続は困難と考えました。その一方でギフト商品はまだ売れており、何か東京産のオリジナルの商品を作りたいと思いました」(齊藤氏)

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