不治の病を抱えて歩むサッカー人生。それでも可能性はある
杉山新は2003年、不治の病である1型糖尿病だと宣告された。絶望の淵にいた杉山だが、サッカーを続けたいという一心で、病気を抱えながら13年間選手として活躍し続けた。引退した今、彼にできることは、病気でも諦めずに前へ進むことで、叶う夢もあると伝えること。同じ病気の人や未来を生きる子どもたちに、その想いを伝える術とは。
文・小島 沙穂 Playce
2003年11月。現役サッカー選手、杉山新は1型糖尿病の宣告を受けた。選手として健康管理には人一倍気を付けていたし、毎年のメディカルチェックだって万全だった。宣告を受けた当初は、すぐに治るだろうと楽観的に思っていた杉山だったが、事態は思いのほか深刻だった。
1型糖尿病とは、主に自己免疫の異常によって起こる病気である。体内のリンパ球が、本来は害のない膵臓のランゲルハンス島B細胞を破壊し、インスリンを生産できなくさせてしまうのだ。治療は、脳死膵臓移植や膵島移植を受けるか、毎日数回のインスリン注射を一生続けるしかない。生活習慣の乱れが原因となる2型糖尿病と混同されることもあるが、症状や治療法が似ているだけでまったく異なる、原因のわかっていない難病だ。心臓や腎臓、眼、神経などに合併症を引き起こす可能性があり、精神的、身体的、そして経済的にも負担の大きい病気である。
一生付き合っていかなければいけない難病だと知り、杉山は絶望した。1日に何度もインスリン注射を打ち、血糖値を管理し続けなくてはならない。
1型糖尿病と向き合いながら、運動量の多いサッカーを続けていくのは非常に困難を極める。サッカーを辞めて、身体に負担の少ない職業に転職しなければならないのか――そう考え、ボーっと求人誌を眺めるも、何も頭に入ってこない。当時23歳だった彼にとって、サッカーを辞めることは、人生の終わりのようなものだった。
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