パリ協定がもたらすビジネスチャンスと出遅れた日本の巻き返し

パリ協定が劇的な賞賛とともに閉幕して1年弱。日本が思ったより世界は気候変動を深刻に捉え、ビジネスにつなげようとしている。当初は予想しなかった「パリ合意の早期発効」が確実になる一方、日本は批准の遅れから第一回締約国会議(CMA1)の不参加が明確になった。はたして日本の逆転はあるか。COP22に日本の交渉官として参加している島田久仁彦氏の見解とは。

パリ合意発効の時期を見誤った日本

昨年12月12日、COP21においてパリ協定が合意された。閉会時に当時フランス外相であったファビウス氏(COP21議長)が「12月12日は歴史に刻まれることだろう」と評するほど、今後の地球の運命にとって重要な合意となった。

その決定に先立ち、日本政府は「発効のためには、55か国以上が批准し、それらの国々の排出量が全排出量の55%を超える」との要件(ダブル・トリガー)を提案し、「パリ合意の発効要件」として合意された。昨年12月12日の合意の際には、恐らく誰しもパリ合意の早期発効を予想していなかっただろう。日本政府も、また日本の産業界も同じだろう。

それが今年に入り、一気に批准の波が世界に広がり、極めつけはG20を前にして米中同時批准が行われたことで、今年中の発効の可能性が出てきた。しかし、まだその時点では、インドとEUについては今年中の批准はないだろう、との見方が多数で、日本もそう考えていたが、インドが大方の予想を覆して10月初めに批准し、EUも今年11月7日から開催されるCOP22で、パリ合意の第一回締約国会議(CMA1)を開催するべきとの考えから、国ごとの批准を待たずに、EU28か国としての批准に踏み切った。

結果、日本の批准を待たずに、パリ合意が11月4日に発効することとなった(言い換えれば10月4日に発効要件がそろった)。日本はといえば、急ぎ10月11日にパリ合意の批准を閣議決定し、正式に批准すべく、急ぎ国会審議にかけているが、CMA1には正式な締約国として参加できない見通しとなった。つまり、各メディアやNGO、野党などからの批判(出遅れ、外交の失敗など)にもあるように、各国の意図を読み間違え、パリ合意実施のためのルール作りの議論に最初から参加できないという結果になったと言える。

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