公共施設の国産材活用を支える

国土の約7割を森林が占める日本。近年、その有効利用が社会課題となっている中で、公共建築物への国産材利用につながる、大建工業の独自技術が注目されている。地域材を「建材」に加工し、色あせない天然木の美しさと強度を両立する「WPCフロア」だ。

東京都港区の公共複合施設「みなとパーク芝浦」は、国産材のナラを使用した「WPCフロア」を採用

大建工業の創業は1945年。終戦直後の混乱の中、「復興資材として木材、製材品を手掛け、日本の再建に貢献する」という志の下、各種木製品と床材の製造に着手した。

資源の有効活用につながるモノづくりが企業の原点であり、創業以来、数々の高度な技術、素材を開発し、主に住宅用建材で成長を遂げてきた。住宅分野で培ってきた技術を活かして開発し、近年、公共施設でも利用が進んでいる製品が「WPCフロア」だ

富山県の小矢部市役所は、県産材のスギを使い、内装の木質化を実現した

木の質感と耐傷性の高さを両立

政府は2020年の木材自給率50%以上の達成を目標に掲げており、近年、全国各地の公共施設で地域材の採用が進んでいる。しかし、公共施設における国産材利用には課題もある。

公共施設は不特定多数が利用する場所であり、傷のつきにくさやメンテナンスの容易さが求められる。スギやヒノキのような軽くて強い反面、表面が軟らかい国産材は、構造材としては普及しても、床や壁などの内装材としての活用は進んでいなかった。

塗装を強くかければ木材は強くなるが、木の持っている質感や温かみが失われてしまう。内装として活用するなら、やはり木そのものの風合いを大事にしたい。大建工業の「WPCフロア」は、木の良さを活かしながら耐傷性・耐摩耗性・耐汚染性を飛躍的に高めた床材だ。WPC(Wood Plastic Combination)とは、木材組織にプラスチックを注入・充填し、硬化させる大建工業独自の加工技術である。

市場開発部部長の今井信之氏は、「WPCフロア」について、「土足用床材としても使える優れた性能を持ち、同時に天然木の持つ自然な美しさ、風合いを保ちます。当社の持っているネットワークを活かし、各地の地域材を設計・施工しやすい『建材』にすることができます」と語る。

今井 信之 大建工業 市場開発部 部長

大阪城天守閣の床材にも採用

一概にWPC技術といっても、その加工法は樹種毎に微妙に異なる。大建工業には、長年積み重ねてきたノウハウがあり、樹種に合わせて最適に加工できるという“強み”がある。また、充填するプラスチックの色によって木材の表情をさまざまに変えることができ、デザイン性を重視する施設にも対応する。さらに、メンテナンスマニュアルも確立しており、安定した維持・管理ができる。

今井氏によると、「供給面での心配もない」という。

「『WPCフロア』の最も汎用的なタイプは、加工の特徴として木材の乾燥工程が不要となるため、伐採・製材後すぐに工場へ納入でき、約2ヵ月で建材として供給できます。さらに、表面化粧材として0.2㎜程度の薄い板材にするため、地域材1㎥当たり床面積は最大2000㎡相当までの供給に対応できます」

すでに各地の公共施設で、「WPCフロア」は実績をあげている。1997年の大阪城の改修では、天守閣の床材として採用された。以来、年間約200万人以上が土足で入場しても、ほとんど劣化せずに美観を保ち続けている。

また、東京都港区の公共複合施設「みなとパーク芝浦」では国産材ナラの「WPCフロア」が使用されたほか、富山県の小矢部市役所では、県産スギ材を使ってロビー空間の木質化を実現するなど、「WPCフロア」は全国で広がり始めている。

「WPCフロア」の特徴

提案力を高め、課題に応える

現在、国産材の需要拡大に向けて、国や都道府県の支援制度は整えられており、各市町村にとっては、地元の木材を利用しやすい環境になっている。

東京都の「にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業」では、大建工業の「コミュニケーションタフDW<多摩産材>」が指定された。同製品は、WPC技術と基材強化技術が融合した、土足対応の高性能床材だ。

大建工業は、そうした技術の強みを活かし、各自治体に積極的にアプローチして採用実績を増やしていく計画だ。公共・商業建築分野における提案活動を強化するため、2016年3月には「DAIKEN 秋葉原テクニカルスペース」をオープンした。技術や素材、製品の展示のほか、製品開発のためのコミュニケーションスペースや試作品のシミュレーションスペースを広く設け、設計関係者の課題に柔軟に応えていくことを目指している。

「課題の解決に向けて、顧客とともにアイデアを創出します。懸案事項があれば、気軽にお問い合わせいただきたいと考えています」

今、日本では、戦後に大量に植林したスギやヒノキが伐採期を迎え、供給できる木材は増えている。豊かな森林資源を有効に活用するために、国産材の需要拡大と林業の活性化は喫緊の課題だ。

「大建工業は、事業活動で社会が抱える課題を解決し、社会と共有できる価値を生み出すことが、企業の持続的成長のためにも最も重要だと考えています。公共建築における国産材利用は、自治体や利用者にとって、環境教育や地域への愛着醸成にもつながります。今後もより一層、地域材の利用促進に取り組んでいきます」

大建工業のWPC技術は、木材自給率の向上を目指す政府目標の達成にも貢献する。そこには、日本の発展のために木材の有効利用を進めてきた創業来の強みが息づいている。

「DAIKEN 秋葉原テクニカルスペース」は、技術や素材、製品の展示のほか、コミュニケーションスペースを広く設けており、顧客とともに製品開発を進める

 

お問い合わせ

  1. 大建工業株式会社 市場開発部
  2. TEL:03-6271-7873
  3. mail:market-development@daiken.co.jp
  4. DAIKENとつくる公共・商業施設 http://www.daiken.jp/building/

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