「温泉力×X」で長期創生 これからの温泉地に求められる視点

今や世界の人々からも愛されるようになった日本の温泉文化。それを通じた地域の創生には、長期的な繁栄の可能性がある。しかし、それは決してたやすいことではない。では、いったいどうすれば実現できるのか? 「温泉力×X」という視点から検討したい。

大分県の由布院温泉は、軽井沢を彷彿させるオシャレで洗練された「地域づくり+宿づくり」をしたことで、若い女性を中心に人気が爆発
Photo by Kzaral / Jerry Lai

失われゆく温泉資源

高度経済成長期からバブル経済期にかけて、「温泉ブーム」を背景に、全国各地の大規模温泉郷を中心に、旅館・ホテルの建設ラッシュが起こり、既存施設も競って施設の拡張を行った。そして、バブル崩壊を経て「平成大不況」期になると、今度は、心身の癒しを求める人びとによる「秘湯ブーム」が発生する。その結果、山間部や海辺の中小零細規模の温泉郷にも観光客が殺到。それに対応するために多くの旅館・ホテルで施設増設、特に風呂場の拡張が盛んに行われた。

その結果、規模の大小を問わず、各地の温泉郷において、源泉量の不足ないしは枯渇という問題が深刻化。これに対処するために、日本全国で広く導入されてきたのが、「濾過循環方式」、つまり、温泉水の使い回しシステムであった。多数の人が入浴して汚れた湯を集めて濾過し、そこに加水・加温・塩素注入をした上で、再度、湯船に送出する。それが汚れたらまた濾過し、加水・加温・塩素注入して湯船に出す、それを繰り返す。

図 温泉による地域創生

 

当然のことながら、大幅な加水によって温泉としての効能は低減し、ボイラーによる加温で、さらに効能は減り、大量の塩素注入で、いよいよ効能は失われる。湯治目的で行っても意味はないし、飲泉など、とんでもない。このシステムは、よほど丁寧に清掃しないとレジオネラ菌が発生するリスクが高く、過去の温泉施設での死亡事故は、ことごとく、このシステムで発生している。また、塩素は、肌を荒らすだけでなく、皮膚から吸収され体内を老化させる。濾過循環方式を採用している施設は、今や日本全国の温泉施設の8割以上とされる。

こうした事実に触れると、「だったら、日本は火山列島なのだから、新たに地中深くボーリングして新たな源泉を掘り当て、源泉かけ流しの旅館・ホテルを作って、それを核に地域創生を図ったらよいのではないか?」と多くの人が思う。しかし、源泉かけ流しは本当に万能なのだろうか?

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