2016年9月号

2020年に向けた新ビジネス

インバウンドで新たな挑戦 「手ぶら」から始まる観光振興

ヤマト運輸株式会社

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名古屋市内の複数の店舗で買った商品を、出国の前に空港でまとめて受け取れる。訪日外国人を対象に、持ち運びの負担を軽減し、快適な旅行を楽しめる新サービスの実証実験が、名古屋で行われた。精緻なオペレーションで、サービスの実現を支えたのがヤマト運輸だ。

ヤマト運輸と中部国際空港が共同で運営する、空港内の訪日外国人向け観光PR施設「Tourist Information&Service」。観光情報の提供から荷物の一時預かり・配送まで、ワンストップで提供している

旅行において、大変なことの一つが重たい荷物の持ち運び。特にたくさんの買い物をする訪日外国人にとって、大きな荷物を抱えながらの移動は大きな負担だ。その解決に向けて、新しい「手ぶら観光サービス」の挑戦が中部エリアで始まっている。

利用はQRコードをかざすだけ

近年、日本各地で「手ぶら観光サービス」は実施されているが、それは手荷物の預かりや、空港からホテル・旅館への当日配送にとどまっている。中部運輸局は、より利便性の高い「手ぶら」の実現を目指し、中部国際空港利用促進協議会と連携。2016年2月~3月、中部国際空港(セントレア)を発着利用する訪日外国人を対象に、「手ぶら観光サービス」拡充の実証実験を行った。

この「手ぶら観光サービス」の特徴は、名古屋市内の複数の店舗で買った商品を、出国時にセントレアでまとめて受け取れること。中部運輸局の鈴木昭久局長は、実証実験の背景についてこう語る。

鈴木 昭久 中部運輸局 局長

「従来の『手ぶら観光サービス』では、旅行中は購入したお土産などを持ち歩く必要がありました。また、観光地のコインロッカーが少なかったり、電車・バスなどの二次交通も荷物置き場が不足しています。そうした不便を解消し、『本当の意味での手ぶら』に近づくため、今回の実証実験を企画しました」

実証実験では、利用者はセントレア到着時にスマホ等で登録手続きを行い、QRコードを作成。調査に協力する各店舗には専用端末が置かれており、買い物時にQRコードをかざすだけで、配送の手続きは完了する。

システム開発や配送のオペレーションを担ったのは、ヤマトグループだ。

今回の『手ぶら観光サービス』の利用は簡単。スマホ等で登録手続きを行い、QRコードを作成。買い物した店舗でQRコードをかざすだけで、配送の手続きは完了する

「日本の宅配」を世界に発信

ヤマト運輸にとっても、今回の「手ぶら観光サービス」は大きな挑戦だった。複数の店舗から届く商品を利用者ごとにまとめ、セントレアの専用カウンターで引き渡す。航空便の時間に合わせるため、高い正確性も求められる。また、協力店舗の理解を得ることも重要になる。

中部運輸局とヤマト運輸は協力し合いながら、一つ一つの課題を解決し、サービスを実現へと導いていった。中部運輸局の鈴木局長は、今回の実証実験について、「外国の方々に、日本の優れた宅配サービスを体験してもらうこと」自体に価値があると語る。

「精緻なオペレーションによって実現する日本の宅配サービスは、世界に誇るべきもの。日本の宅配サービスの信頼性、品質の高さを海外に広く認識してもらう機会にもなります」

「手ぶら」の可能性は、訪日外国人の利便性を高めるだけにとどまらない。

「持ち運びが不要になることで、気ままにお店に立ち寄ったり、食べ歩きしたりなど、購買意欲がわくだけでなく、『何か体験してみよう』といった気分も生まれます。新しい『手ぶら観光サービス』の効果は、交通機関や宿泊施設だけでなく、地域の商店なども含め、広く観光振興につながるのです」

課題をカイゼン、今後につなぐ

しかし、サービスの利用実績は想定よりも伸びず、鈴木局長は「課題も多かった」と振り返る。現在、課題の解決に向けた努力が続けられている。

「実際にやってみてカイゼンを繰り返すのは、ものづくり中部圏の得意分野です。名古屋は東京ほど交通量が多くないため、配送の時間が読みやすく、今回のような新しい配送サービスに挑戦しやすい。そうしたアドバンテージを活かしながら、他の地域に先行して新たなモデルを確立していきたいと考えています」

ヤマト運輸は訪日外国人の観光サポートにおいても、各地の課題に寄り添い、それを解決するサービスを生み出してきた。中部における新たな「手ぶら観光サービス」実験の経験・ノウハウは、今後への貴重な財産となる。

訪日外国人の利便性向上は、観光立国を目指す日本の課題であり、大きな潜在力を秘める。各地の観光振興に向けて、ヤマト運輸は独自の強みを蓄積し続けている。

Column

セントレア 訪日客に「配送」のおもてなし

地域密着の強み、中部でも発揮

観光庁は、「手ぶら観光」のサービス拠点を増やす施策を進めており、ヤマト運輸は、すでに15店舗が観光庁の認定を受けている。中でも、先進的なサービスを提供する拠点の一つが、中部国際空港(セントレア)内の訪日外国人向け観光PR施設「Tourist Information&Service」だ。

同施設は、2014年9月にオープン。ヤマト運輸とセントレアが一体となり、観光情報の提供から荷物の預かり・配送まで、ワンストップで提供している。着実に利用者を増やしているが、中部国際空港営業所の営業所長・横山佳世氏は、課題も感じていたという。

「お客様が何に困っているのか、その肌感覚を常に大事にしています。外国人のお客様は、『宅配』というサービスに馴染みのない方が多く、送り状を書くのにも苦労されています。もっと簡単に配送の手続きができる仕組みをつくれないかと考えていました。そうしたときに、中部運輸局さんから、新しい『手ぶら観光サービス』の相談があったんです」

今回のサービスにおいて、利用者が登録する情報は、名前と連絡先(電話やメールアドレス)、搭乗便の3つだけ。あとは、買い物をする各店舗でスマホをかざすだけなので、外国人も手軽に使うことができる。

買い物は荷物になるため、お土産を購入するのは、旅程の後半、帰路につく場所になることが一般的だ。現状、セントレアから入国しても、そこからゴールデンルートを通り、帰りは成田空港や羽田空港、関西空港を利用するパターンも多い。立地上、中部圏は訪日外国人の消費を促す場所として、不利な側面もあるのだ。

今回の「手ぶら観光サービス」の実験は、出国時の空港としてセントレアの価値を高め、中部圏での消費を喚起する取り組みでもある。

「実証実験は、多くの企業・団体の協力を得て実現しました。共通しているのは、『中部経済のために』という思いです」

地域の観光振興に向け、ヤマト運輸は重要な一翼を担っている。

横山佳世 ヤマト運輸 中部国際空港営業所営業所長

 

ヤマト運輸株式会社 への

 

  1. ヤマト運輸株式会社
  2. URL:http://www.kuronekoyamato.co.jp/chiikishien/top.html
  3. TEL:03-3541-3411(代表)
 

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