当事者意識で復活したローカル線 カギは13自治体の広域連携
過疎、高齢化が進む秋田県、青森県。地元の希望の星となったのが、ローカル線である「五能線」の復活だった。この路線を走る人気の観光列車「リゾートしらかみ」は、大きな窓にゆったりとした座席がある全車指定の快速列車。絶景ポイントでは速度を落として走る「サービス徐行」、車内で津軽三味線の生演奏が聞けるなどユニークな観光サービスを提供している。今では、観光シーズンには入手困難といわれるプラチナチケットになっている。
80年の歴史を持ちながら、地元では廃止の噂まで囁かれていた五能線。その再生を追った本書の著者、ローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤功氏は、「地元の人たちが強い当事者意識を持ち、できることから始め、アイデアを出しては実行し続けたことが成功の秘訣。小さな成功体験を積み重ねて、今の五能線は生まれました。ホームランではなく、ヒットをコツコツと積み重ねてきた結果です」と話す。
再生が始まったのは、1990年。JR東日本の秋田支社を中心に、地域の自治体やコミュニティは、「五能線を残したい」という強い思いを持っていた。過疎化、自動車社会へのシフトの逆風の中、五能線を残すために生活路線から観光路線への転換を決断。「お客様に楽しんでもらいたい」という鉄道マンたちの思いが「日本で一番乗りたいローカル線」になる原動力だった。
「再生に関わった人たちには、“圧倒的な当事者意識”があります。その思いと現場力こそが五能線の最大の成功要因です」
五能線物語
―「奇跡のローカル線」を生んだ最強の現場力
- 遠藤 功(著)
- 本体1,400円+税
- PHP研究所
テーマパーク型“広域連携”
成功の第2の秘訣は「広域連携」にある。五能線は青森県と秋田県を横断し、沿線には当時13もの自治体があった。「自治体が連携して『点』ではなく、『面』として売り込んでいます。これからの観光は広域連携が不可欠。観光スポットを個別の『アトラクション』としてPRするのではなく、複数のアトラクションを持つ『テーマパーク』としてアピールすることによって、エリアの魅力が大きく高まります」
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