「不吉」な樹海は、人気の観光地 「負のイメージ」が非日常を生む
旅の非日常性は、何によってもたらされるのか。ときには、「負のイメージ」を持つ観光資源も、非日常の舞台になり得る。今、「死」のイメージで語られる樹海の洞窟探検が、人気を集めている。
「人はなぜ旅をするのか」とは唐突な問いかけだが、それは突き詰めていくと「日常から離れた非日常的な空間の中で、各人が求める何かを得るため」と定義できるのではないだろうか。都会の喧騒が日常の場合は田舎の田園風景が非日常となり、一方で牧歌的な町並みが日常であれば、都会のスクランブル交差点の中で得られる何かに思いをはせる。
技術革新がもたらした情報化社会の中において、人々の生活はめまぐるしく変化している。同時に、旅行者のニーズは多様化が進み、多くの観光商品が生み出されている。それを購入する消費者心理は、お金をかけてでも、非日常の中にわざわざ得たい何かがあるということに尽きる。今回は、一見変わったユニークな視点で、「非日常」の観光商品を紹介したい。
樹海に年間5000人の観光客
舞台となるのは、山梨県南都留郡。人口5万人弱の地域だが、東京ドーム9000個分の敷地面積の中に富士五湖のすべての湖を有し、観光資源が豊富で行楽シーズンは多くの観光客で賑わう。
観光商品として人気が高いのは、湖で行われるボートやカヌーなどのレイクアクティビティだ。最近ではウェイクボードやフライボードなども、アクティブな若年層を中心に人気がある。
しかし、今回は、爽やかなイメージで彩られた湖が焦点ではない。その逆、と言っては語弊があるかもしれないが、どちらかと言うと負のイメージが否めない「青木ヶ原樹海」で開催される「樹海洞窟探検ツアー」に注目した。
先述の通り、樹海と聞くと、一般的に連想するのは「死」、あるいは「異世界への入口」など、決してポジティブなものではないだろう。それにもかかわらず、このツアーに年間5000名もの観光客が訪れているというのだ。
ツアーを主催するカントリーレイクシステムズ代表の田村孝次氏は、人気の背景をこう話す。
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