電力×●●で付加価値を生む エネルギー併売モデルの成功要素

2016年4月に電力、17年4月からは都市ガスの小売りが完全自由化される。参入事業者には、今後どのような戦略が求められるのか。エネルギー×通信の統合提供による付加価値を提案する、NTTコミュニケーションズ第五営業本部第二営業部門担当課長の吉田利一氏に聞いた。
聞き手・岸波宗洋 事業構想大学院大学教授、事業構想研究所所長

 

焦点となる併売モデル

岸波 今春の電力小売り自由化、さらに17年4月の都市ガス小売り自由化を控えて、エネルギー業界は激変の時代にあります。通信業界も、過去に自由化を経験しましたね。

吉田 1985年の通信自由化では、民間企業の新規参入や競争によって、当時、東京-大阪間で3分約400円だった電話代は大きく下がり、電話機やFAXも自由に選べるようになりました。自由化によって通信業界は想像できないほど変化し、エンドユーザーも大きなメリットを受けたと思います。

吉田利一 NTTコミュニケーションズ第五営業本部第二営業部門担当課長

岸波 自由化の便益性は、企業が消費者のニーズに応えようと、マーケティングを進化させることから生まれます。電力・ガス自由化においても、最大の焦点はいかにサービスの機能価値、情緒価値を提示するかです。電力小売り自由化では、小売電気事業者の事前登録をすでに169社が行っており(※)、特定規模電気事業者(PPS)を含めると1000社近くになるなど、市場は盛り上がりを見せています。(※2月8日現在、新電力PPSポータルサイトより)

吉田 通信事業者にとっても大きなチャンスです。NTTコミュニケーションズは通信分野で、色々な異業種にサービス基盤を提供して、各社ごとの強みと組み合わせた独自の統合サービスを展開することを支援してきました。当然、電力・ガス自由化においても同様の連携が考えられます。通信サービスを電力・ガスなどとセットで提供するモデルは、参入事業者にとってもメリットは大きいと思います。

岸波 電力・ガスの単品販売では、もはや価格競争で勝ち抜くことは困難です。実際、大手事業者の電力小売マーケティング戦略は、電力と通信・ガス等のセット割引モデルとポイント還元モデルに集約されつつあります。

LPG事業者参入の成否は価格弾力性の創出方法にある

岸波 併売モデルのアライアンス先として有望な事業者はどの分野でしょうか。

吉田 私自身が注目しているのはLPG事業者です。地域と密着したLPG事業者は、数万人規模の顧客データベースを持ち、料金請求システムも持っています。

岸波 確かに、多くのLPG事業者は電力自由化に関心を持っています。ただ、自社の顧客を囲い込むために電力も扱わざるを得ないという、どちらかと言えば消極的姿勢が目立ちます。ここには、価格弾力性という問題があると思います。自由化市場の参入には価格弾力性を確保することが前提となりますが、電気料金の原価ベースとなる託送料金はほぼ一律です。そんな厳しい状況で大企業の『規模の経済』に伍して勝つために、中小LPG事業者にどんな知恵が求められるのでしょうか。

吉田 新たな付加価値・価格弾力性を出すためのポイントは、地域顧客にあったサービスメニューをいかに作り込むかにあるでしょう。地域の居住者には若者が多いとか、高齢者が多いといった特性があります。そうしたデータベースをLPG事業者は持っており、分析できます。これはあくまでも私の仮説ですが、例えば20-40代のインターネット利用者が多いエリアはビッグデータ用光/モバイル回線を提供し、高齢者の多いエリアにはライトモデルの光/モバイル回線とPC利用をサポートするオプションをあわせて提供するなど、地域に特化した、多様なメニュー開発が可能でしょう。これは大手ではなく、地域密着型企業にしかできないことですし、通信事業で培ってきた我々のノウハウを活かせる可能性を感じています。

Face to Faceの関係性を持つ地域事業者にこそチャンスあり

岸波 地域の中小LPG事業者にも、参入チャンスは十分あるということでしょうか。

吉田 むしろ、私はLPG事業者こそが電力自由化の最有力プレイヤーになることができると思います。なぜなら、LPG事業者は地域のお客さまとFace to Faceの関係性を築いているからです。これまでの各社との通信分野での卸売りの連携などで痛感したのは、最も事業者が苦労するのは新しいユーザーを掘り起こすことです。電力自由化においても、例え大手の新規参入事業者でも、一般電気事業者からユーザーを移行させることは大変な苦労が伴うでしょう。一方、LPG事業者はお客さまと玄関先での付き合いをしているから、販売もしやすいのです。

岸波 電力やガスはライフライン、つまり『信頼財』です。一人ひとりの顧客とコミットしている地域のLPG事業者にこそポテンシャルがあるというのは、全く同感です。2017年の都市ガス小売り自由化に続いて、早ければ2018年には、一般電気事業者も料金が全面自由化されます。真の自由競争が始まったとき、生き残れるLPG事業者は、顧客との関係性ができている会社だけでしょう。各社には今すぐ、最適なアライアンス先を見極め、事業計画を検討していくことが求められるはずです。

地域事業者に必要な「統合型ライフラインサービス」構想

今回の対談の中で、いよいよエネルギー市場が再編される時代の流れを強く感じた。電力の完全自由化によって、戦後継続された電力メジャー構造に終止符が打たれ、新たな市場価値へ変化していくことだろう。デュアルフュエル契約(電力・ガス一括契約)が発展し、「インテグレーテッドサービス契約」と呼ぶべき、完全自由化したコモディティ市場を束ねる統合型ライフラインサービスが担保され、その中で生活そのものを便利に、そして幸せに彩る様々な付加価値サービスが誕生してくることも、大いに期待するところである。

一方で、昨年末から電力完全自由化に向けて、大手企業の空中戦は熱を帯びている。記事中にもあったセット割引やポイント還元の類がそのメッセージの中心である。このままの「規模の経済戦略」を電力参入大手各社が継続すれば、イギリスの電力マーケットと同じように数社の電力メジャーが新たな資本構成によって誕生するだけ、である。ドイツの地域マーケッター主導型市場をベンチマークし、地域のマーケティングパワーを徹底的に自由化市場に注入する必要性を強く感じる。その意味でも、吉田氏がベンチマークしているLPG事業者とのアライアンスの必然性については、論を俟たないだろう。(岸波宗洋)

 
  1. LPG事業者(供給、卸、小売)で、
    かつ電力や通信等ライフラインの併売を画策されている方向け
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  3. 参加者募集中
  4. >3月4日(金)14:00~17:00
  5. >3月18日(金)14:00~17:00

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