目指すはシリコンバレー 宇宙インフラからサービス革新

衛星による観測、即位、通信を中心とする宇宙インフラの整備が急速に進んでいる。GESTISSは、地理空間・宇宙技術を用いて、実社会でのサービス革新を行うコンソーシアム。国内の5つの大学が民間企業や官公庁とも連携し、事業に落とし込む活動を開始した。

情報収集から実用へ

シリコンバレーがイノベーションの中心として確固たる地位を築いている事実の背後には、いくつかの要因がある。そのうち最も重要な背景の一つにスタンフォード大学の学術研究と人材供給があげられるだろう。学術機関においては、最先端を探索する様々な試みがなされており、事業化可能な種が存在しているが、その種がなかなか大きな実を結ぶことは少ない。産学連携はこれまでたくさん行われてきたが、ものづくりにおいては実を結ぶことがあっても、ことづくりにおいて実を結んだ事例は限定的である。

GESTISSは、Geospatial and Space Technology Consortium for Innovative Social Services(革新的ソーシャルサービスのための地理空間・宇宙技術コンソーシアム)の略称であり、大学で構築された知的資産・技術を革新的なサービスにつなげていくためのコンソーシアムである。東京大学、慶應義塾大学、東京海洋大学、青山学院大学、事業構想大学院大学の5大学で連携し、実施している。

衛星による観測、即位、通信を中心とする宇宙インフラの整備が進む一方で、携帯電話による地上ネットワークが爆発的に拡大している。衛星画像やデジタル地図といった背景情報も世界的に整備・公開が進んでおり、どこで何が起きているか、何がどう活動しているかを迅速に把握・解析できる環境が整いつつある。こうした環境変化は、地上での観測やデータ収集だけを前提に展開されてきた様々な社会公共サービスの革新や再構築を行う潜在能力を持っていると考えられる。個別システムでの運用が中心であった地理空間・宇宙技術を用いて実社会でのサービス革新を行うことが本コンソーシアムの目的である。

宇宙インフラによる社会課題の解決

外部連携で進む課題解決型学習

G-SPASE(宇宙インフラ利活用人材育成のための大学連携国際教育)は、GESTISS内で始動した教育プログラムである。現在、災害や気候変動、資源開発、物流、疾病対策、観光など多様な社会課題や社会需要に直面している。これらの課題に対して、衛星測位、衛星リモートセンシング、GIS、衛星工学などの知見を持った学生たちが、実際に課題解決を行うプロジェクトを立案・運営することで、サービスやシステムのデザイン力、マネジメント力を高めるためのプログラムである。現在は、「農業」「基準局設置」「ログ分析」「早期警報システム」「公衆衛生」「スポーツ科学」「シームレスな位置情報サービス」「TOKYO2020」「無人航空機」「都市マッピング」などのプロジェクトが進行している。

2015年度からは、文部科学省の宇宙航空科学技術推進委託費から「グローバルな学び・成長を実現する社会課題解決型宇宙人材育成プログラム」として委託をうけ、さらに進化した活動を続けている。具体的には、課題解決型学習をさらに深化させることや個別ニーズに応じたカフェテリア型学習プログラムの整備、プロジェクトを実際に事業化するためのプラットフォームの構築などである。加えて月一回のチュートリアル、成果報告会、シンポジウム、イブニングセミナーなどを実施し、学生の学びの機会をつくることと並行して、外部連携を模索している。大学の学生以外にも、多くの民間企業や官公庁の方々と接点をつくりだしている。

宇宙インフラの利活用を前提とした社会基盤サービスを実現するために必要な人材育成プログラムの要素

技術のコアを理解し事業に落とし込む

事業構想大学院大学は、2015年度よりG-SPASE活動に参画している。これは社会人中心の本学の院生にとっては、最先端の学術技術や研究者との接点となり、他大学の学生にとっては、実際に事業をおこなっている社会人との接点となっている。両者にとって有益な機会となっており、ここから実際に事業化につながる事例を構築することが事業構想大学院大学の使命でもあり、GESTISS活動のさらなる活性化にも必須の要件である。

事業構想は、望ましい未来を切り開くための理想づくりである。そのためには、課題の核心に迫りながら、革新的な技術を用いて、事業をつくりあげる必要がある。革新的な技術の活用に関しては、民間企業はまだまだ余地が残されている。ただ、外部から技術を移入するのではなく、技術のコアを理解したうえで、事業に落とし込める人材が不可欠である。G-SPASEプログラムの参加者には、技術と事業を架橋する人材として大きな可能性を秘めており、東京がシリコンバレーのようにイノベーションをうみだす生態系を構築するための最も重要な資源の一部になるのではないかと考えている。

昨年11月にシンポジウム 「宇宙システム×G空間情報;世界を動かすイノベーション人材を育てる」を日本科学未来館にて開催した。政府・企業・教育研究機関など100名を超える参加者が集まった

 

  1. GESTISS、G-SPASEの活動に関しては、以下ホームページに更に詳細な情報やイベント告知があります。外部に開かれたコンソーシアムですのでお気軽にお問い合わせください。
  2. http://gestiss.org/
  3. 事業構想大学院大学 事業構想研究科
  4. 准教授 小塩篤史
  5. a.koshio@mpd.ac.jp

 

 

新事業のアイデアを考え構想する
社会人向けの事業構想大学院大学 詳細はこちら

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り0%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。