2016年3月号

電力・ガス自由化ビジネスチャンス

エネルギー併売モデルの進化 ~LPG事業者のライフライン総合販社への布石

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 教授、事業構想研究所 所長 教授)

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2016年の電力小売自由化、2017年ガス小売自由化を前提に、昨年末から東京ガス等の新たな電力小売参入企業がマーケティング活動を活発化させている。特定規模電気事業者(新電力:PPS)が2015年12月時点で800社程度。一方で、50kW未満の電力販売を行う小売電気事業者は2016年1月18日現在で130社存在する※。既に市場開放されている高圧電力においてシェアを獲得しているエネットやF-Power等は当然として、ここにきて、大手企業の「規模の経済」が一気に作用しつつある。東京ガスやJX日鉱日石エネルギー(ENEOS)、SoftBank等の企業が、積極的にマスマーケティング・アプローチで電力小売市場を耕しはじめたのだ。

※いずれも「新電力PPSポータルサイト」から

2016年の電力小売自由化は、マーケティング上「B2B」から「B2C」にドメインシフトが行われるタイミングであり、これまでの勢力図を大きく変化させる可能性がある。既に事前申し込み等によって市場が大きく動き始めており、このまま大手主導のマーケティングを黙って眺めていれば、イギリスの自由化動静のように既存電力会社とほぼ同数の電力メジャーが形成され、市場が偏ることになりかねない。本来の自由化趣旨は、市場原理による価格妥当性の獲得と、地方創生等の新たな産業振興起点が包括されているはずだ。特に地方創生の礎となるLPG事業者にとって、電力の扱いをどのように位置づけるのか、エネルギーマーケット、ひいてはライフラインマーケット全体をどう俯瞰し、ビジネス化するかが大変重要になる。

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 教授、事業構想研究所 所長 教授)

地域と密着したLPG事業者の顧客資源は、エネルギーのビジネス変化にあたり大きな可能性を秘めている。おそらく既存のLPG事業者で、電力小売事業に無関心な会社は1社もないだろう。そして、そのスタンスの大方は「電力を扱ってません、なんて恥ずかしいこと、言いたくない・・・」という、顧客ニーズにおもねった消極的参入なのではないか。

これは、電力料金の原価ベースとなる託送料金等、一般電気事業者側の設定によって、価格弾力性がほぼない電力市場を理解しているという解釈ができる。そして電力小売参入にあたっては、ほとんどのLPG事業者が「採算度外視」という前提であるにも関わらず、大手企業が空中戦で「ガスとセットで年間~円安くなる!」とか「通信とセットで~」といった形でさらにプレッシャーをかけてくる。これではLPG事業者にとって、電力小売市場=死屍累々のレッドオーシャン市場確定である。

ここで、2つのマーケティングエフォートによって、課題解決を試みてほしい。1つめは、大手企業が攻勢をかけるマーケティングモデル=「セット割引」「ポイント還元」という、極めてプリミティブ(原始的)なモデルに対する対抗手段の想定である。この課題解決にあたり、通信サービス等、ライフラインとして既存顧客に併売可能なアイテムを増やすことによって、大手企業に近い価格弾力性を得ることができると考える。つまり、大手企業は市場規模の大きさを前提に価格弾力性を保持するのであって、元々市場規模の小さなLPG事業者の場合は、扱うサービスアイテムを増やすことで価格弾力性を保持する、という発想である。

2つめは、大手のプリミティブなマーケティング戦略に対して「高付加価値型」のマーケティング戦略を想定する必要がある、ということだ。最も大きな付加価値要因は「グリーン電力」の販売である。1億総消費市場の電力にあって、グリーン電力はある種のマイノリティかもしれない。しかしながら、一定の市場があることは既に広く知られているところである。そしてグリーン電力を専門的に取り扱うと共に、グリーン電力が地域内で発電・供給されていることで、より地域市場に対する付加価値(雇用創出、付帯サービス便益等)を検討しやすくなる。

海外のエネルギー市場において、「デュアルフュエル契約(電力・ガス一括契約)」は当然の併売モデルである。その上で、電力小売市場への参入を画策するLPG事業者は、上記2つのマーケティングエフォートによって、日本の電力市場を「イギリス化」させず、マーケッターが市場を握る「ドイツ化」を前提に市場成長させることを、ぜひに議論していただきたい。

岸波 宗洋(きしなみ・むねひろ)
事業構想大学院大学 教授
事業構想研究所 所長 教授

 

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    かつ電力や通信等ライフラインの併売を画策されている方向け
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