2016年2月号

新春座談会2016

事業と社会の未来を拓く アイデアが生まれ、広がる「場」

東 英弥(学校法人日本教育研究団 事業構想大学院大学 理事長)

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従来にない社会人向け大学院である事業構想大学院大学は、2016年に5期目を迎える。事業構想修士を取得して幅広い分野に活躍を広げる修了生、構想に取り組む現役生が、同大学を運営する学校法人日本教育研究団の東英弥理事長とともに座談会を行った。

左から)佐藤 淳平(Daiho (Thailand) Co.,Ltd. 3期生(2014年度入学))
爪川 治(ブライトンコーポレーション 代表取締役 1期生(2013年度修了))
東 英弥(学校法人日本教育研究団 事業構想大学院大学 理事長)
上杉 奈保美(王子ネピア 取締役兼パーソナルケア・イノベーションセンター長 2期生(2014年度修了))
行廣 和彦(住友商事 ライフスタイル・リテイル事業本部 ダイレクトマーケティング事業部 4期生(2015年度入学))

大学院修了後事業構想を社会で実現

理事長:事業構想大学院大学は、理想とする事業構想を考え、実現するための「構想計画」を研究することを目的に、文部科学省の認可を得て2012年に開学しました。これまでに1期生、2期生が修士課程を修了し、それぞれの分野において社会に有意義な事業構想を実現しつつ、活躍を始めていることを嬉しく思います。

爪川:入学時は、親会社ホテル部門の取締役として新規開発を担当していました。事業のアイデアが出てもブレイクスルーが上手くいかなかったり、上司を納得させるような説得力のある事業計画まで持っていけずに行き詰まっていた頃に、院生の募集を知りました。多彩な教授と従来にないカリキュラムに魅力を感じて、この大学でヒントが得られるのではないかと思ったのが出願のきっかけです。

在学1年目に固めた構想案をもとに、2013年3月に京都や大阪など全国に4つのホテルを持つブライトンコーポレーションのM&Aを実行し、代表取締役社長に就任しました。これまでホテルは舞浜周辺のみでしたが、京都・大阪に拠点ができたことは会社の大きな変化であり、これを基盤に将来は更なる拡大の夢を持っています。現在は構想計画をもとに、さらなる事業拡大に向けて動いています。

上杉:日系・外資系メーカーで培った消費財マーケティングのキャリアを生かし、「日本の製造業における新しい価値創造」をテーマに研究しました。入学時はフリーランスで活動していましたが、在学1年目の2014年2月に王子ネピアのパーソナルケア・イノベーションセンター長に就任しました。

王子ネピアは、ティッシュペーパーやトイレットペーパーの家庭紙と紙おむつ事業を柱としており、私は後者の商品企画・開発・マーケティングを統括しています。少子高齢社会を迎えるにあたり、大人用紙おむつの需要は拡大していきます。そこに対応すべく、商品のアイデアと新しいブランド、それを取り巻く全体のビジネスモデルを構想計画にまとめました。2015年3月に大学院を修了後、4月より取締役となり、構想実現に向けて動きを加速しています。

東 英弥 学校法人日本教育研究団 事業構想大学院大学 理事長

理事長:「事業計画の理想形」である構想計画は、実際の事業計画に落とし込んでいくものです。例えば、その事業にはどの程度のニーズがあり、規模をどのくらいに想定するか、またマーケティング・コミュニケーションをどのように展開していくか、どのような形が良いかを考え抜き、最も理想的な形を考えます。構想計画があれば、事業を始めた時には社員数や規模が小さくても、将来の予測ができ、目指す姿を共有できます。すると、社員もモチベーションが上がりますし、社内外において応援者や賛同者が出てきて、事業に勢いがついていきます。

しかし、実際の事業環境では、構想計画を考えた時点よりも事業内容が進化していることや、周囲の環境が変化していることもあります。事業構想は、その時々の環境に応じて、永続的に考え続けていくものです。院生はそのような意識をもって、修了後も取り組んで頂きたいと思います。

アイデアを生み出す“本気の姿勢”

理事長:事業構想は、アイデアを考えるところからはじまります。事業構想大学院大学は、知識を学ぶのではなく、2年間で構想計画をつくるための大学院であり、院生には、たくさんのアイデアを考える姿勢が求められます。

佐藤:父がタイで創業した食品加工会社の事業承継を予定しています。時代の変化とともに、新しいアイデアや構想をもって事業に挑んでいかなければ、会社を継続・進化させていくことはできないと考え、入学しました。

タイは食料自給率が100%を超える食材輸出国ですが、生産性を上げるためにケミカルを使用する率が年々高まっています。食品の安全性は、国内外を含め今後の社会課題となっていくと強く感じていることから、生活者にオーガニック、ケミカルフリーという選択肢をきちんと与えられる社会にしていけるような構想を考えています。

行廣:住友商事の事業会社の1つで、テレビショッピング通販を展開するジュピターショップチャンネルに出向をしています。新規事業は、商社において日々直面する課題であり、改めて大学院に身を置きながら刺激を受けたいと考えて入学しました。色々な業界が淘汰されていく現代社会において、10年、20年先の未来を考えた時に、どのようなサービスが求められていくのかを考えています。

一方で、入学して得たのは社会課題と事業を結びつける視点です。自分の子供の未来を考えたとき、高齢化する社会の今後のあり方を考えたときに、社会課題を解決していく構想を自社の事業の中で実現したいと考えるようになりました。

理事長:在学生も修了生も、大事なのは、どのくらい本気で取り組めるかです。本気で何かをしようという方は、はじめこそ表現できなくても、深層心理にアイデアがあることで、僅かな環境の変化を受けることにより、たいへんな勢いで企画が出てきます。気づいたことをどんどん書きとめておくことが大切です。そのことを意識して、日々努力をして頂きたいと思っています。

また、事業構想は「社会の一翼を担う」という考えに基づきます。企業は、社会とともに発展する存在です。つまり、事業を通じて社会の一翼を担うという考えが根底にないと、企業は発展していきません。大学院では、現在5期生の募集をしていますが、このような考えに共感される方に入学して頂きたいと考えています。

2年次の12月には構想計画の策定に向け、教員、院生の前で構想を発表した

人に伝えることで構想が進化していく

理事長:アイデアを考えたら、人に伝えることが大切です。自画自賛のアイデアは、社会で活かすことはできません。私はそれを「フィールド・リサーチ」というテーマで研究しており、大学院のカリキュラムに取り入れています。本学には「事業構想」という概念に共鳴した多様な分野の実務家、研究者が教員、ゲスト講師、院生として集まっています。そのため、誰に伝えても必ずヒントになるようなフィードバックを得ることができるのです。

佐藤:多様なネットワークから得られるものは本当にたくさんあります。人はコミュニケーションを通して、周囲から刺激を受けます。私自身も、周りの院生に刺激を与えるような活動をしていきたいと考えています。

上杉:会社の中にも色々な人がいますが、大学院に入学すると、いかに自分のいる環境が同質化していたのかがわかります。院生は、すでに事業経営をしている方、企業に所属する方、これから起業する方など、業種も所属も多様です。そのため、アイデアをプレゼンすると、想像していないような質問がくることや、自分では常識と思っていたことが伝わらないこともあります。院生同士の交流から、自分の知らなかった世界に気づき、世の中の広さを改めて実感するとともに、自分自身の強み、弱みを知る事ができます。大学院での2年間を通じて、本当に自分がなすべきこと、「この分野なら自分は勝負できる」と自信を持って思えることを見つけられました。

理事長:自身の強みや弱みが見えてくると、「こうすればいいのでは」というアイデアが、自然と周りの人々から出てきます。それが、構想のきっかけとなる院生も多くいます。知識があることは尊敬すべきことですが、事業構想にはあまり関係ありません。マーケティング、財務、法律を知らないとしても、世の中に専門家はたくさんいます。重要なのは、自分にはどういうところが足りないのかを認識し、どのような人に相談し、取引するかを含めて、構想計画を考えていくことです。

爪川:私はMBAを過去に取得していますが、MPDのクリエイティブを重視したカリキュラムや多彩な教員は他の大学院にはないものです。感性が刺激され、仕事で感じていた閉塞感を打ち破ることができると直感しました。同じ志を持つ人が集まることで、そこで得た情報や知識が、アイデアや構想につながっていきます。大学院はそのための「場」であるのだと、修了して改めて実感しています。

理事長:何かをやりたいと思っている人の話を聞くと、同じように考えている人は必ず共鳴し、次々と意見が出てきます。それが「場」であり、事業構想には互いに情報を得たり、刺激を受けたり、意見を交わす「場」が必要です。大学院修了後も、同窓会等を活用して、教員や院生との交流を続けて頂きたいと思います。

意志があれば道は開ける

佐藤:今年3月の大学院修了に向けて構想計画を練っています。策定にあたって注力すべきことはありますか?

上杉:アイデアを思いついたら一部でも実行してみる。行動を起こすことで、本当に自分がやりたいことが分かってきます。

行廣:自分自身が培ってきたスキルや経験を取り入れて、自社の新規事業を構想していきたいと考えています。構想を考え、実現していく段階でのアドバイスをいただけますか?

爪川:院生の環境や立場はそれぞれ違いますが、構想の実現のために共通して言えるのは、意志をもつことの大切さです。「この構想を実現したい」という意志があれば、その道がみえてきます。

理事長:人に話すことで気づきを得ることができますが、場合によってはこれまで考えてきた構想が180度変わる可能性もあります。その時には、たとえ一日しかなくても、構想計画を書き直すべきです。自信を持って人に説明でき、自他ともに認められるような説得力のある構想計画でないと、社会で通用しません。

すべての構想には、アイデアが必要です。大学院でも、アイデアを出し、新しいカリキュラムの研究を積極的に重ね、教育環境の一層の進化発展に努めていきます。また私自身も、全国47都道府県に大学を展開していく構想を温めています。院生の皆さんとともに構想を続け、より良い社会を築いていきたいと思います。

授業では発表やディスカッションを通して、アイデアを膨らませている

東 英弥
学校法人日本教育研究団 事業構想大学院大学 理事長

 

修了生の事業構想

ブライトンホテルを軸としたホテル事業構想

在学時にM&Aを実行したブライトンホテルを中核に据え、京都をはじめ日本国内の他地域に同社グループの拠点を広げる施策を構想。日本の観光産業へ貢献し、インバウンド獲得にも寄与できるホテル展開の実現に向けて取り組んでいる。

爪川 治ブライトンコーポレーション 代表取締役

「京都は年間5000万人、舞浜は年間3000万人が来訪する場所で、共通点もたくさんあります。舞浜で実施しているモデルをヒントに、ホテルの形態、ブランドも含めた集中的なドミナント展開を構想計画としてまとめました。現在、京都以外の地域にも新たに展開をしていく予定で進めています。また舞浜では、当社が運営するパーム&ファウンテンテラスホテルを活用して、新たなディズニーホテルとして展開していくことを発表しました。2016年6月のオープンに向けて構想を進めています」

在学時にM&Aを実行し、国内拠点を拡大。写真は、京都ブライトンホテル

 

修了生の事業構想

高齢者のQOL向上を実現する事業構想

高齢化に伴い拡大化している大人用紙おむつ市場に着目。2025年に後期高齢者となる「団塊の世代」は、ライフスタイルや生活に質の高さを求め、これまでと高齢者像が変わっていく。こうした背景をもとに、大人用紙おむつの市場で、時代に合う商品のアイデアと新しいブランド、それを取り巻く全体のビジネスモデルを構想した。

上杉 奈保美 王子ネピア 取締役兼パーソナルケア・イノベーションセンター長

「構想実現に向けた一歩として、男性向けの軽い尿漏れ対策の新シリーズ『B-lock(ビーロック)』を開発、発売しました。少子高齢化が進む日本における高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に貢献すると共に、ネピアブランドの価値向上を目指して挑戦を続けていきます」

新シリーズ「B-lock(ビーロック)」を2015年10月に発売し、構想実現に向けて事業を進めている

 


2016年度入試 出願受付中

事業構想大学院大学は、社会で必要とされる事業の種を探し、事業構想を考え構築していくMPD(事業構想修士)を育成する、クリエイティビティを重視した、従来の枠を超えた新しい社会人向け大学院大学です。1学年30人の少人数制、平日夜間と土曜日に授業を行い、院生全員が社会人です。
今年も30名の事業構想家を募集します。
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