2015年12月号
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パイオニアの突破力

壁を登った先にある誰もが輝けるユニバーサルな社会

小林 幸一郎(視覚障害クライマー)

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NPO法人モンキーマジックの代表、小林幸一郎は、主に視覚障害者に向けてクライミングの楽しさを伝えている。自身も視覚障害者である彼が考えるのは、障害の有無や年齢、運動経験の有無など、あらゆる属性を問わず、誰もがクライミングを楽しめる世界。そうした「ユニバーサルな社会」をつくるため、彼はどのように社会にアプローチしていくのだろうか。
文・小島 沙穂 Playce

 

Photo by Naoya Suzuki of SAND STONE

「近い将来、あなたは失明します」

そう医師から告知を受けたのは、28歳の時だった。アウトドア衣料品販売会社に勤めながら、趣味のクライミングを楽しむ日々を送っていた小林幸一郎は、医師の言葉を信じることができなかった。今までできていたことができなくなる。将来への不安に押しつぶされ、まるで世界が止まってしまったようだった。

病状が進行するにつれ、小林の視界は徐々に失われていった。失望の中にいた彼の視界を新たに“開いた”のは、ある医師の言葉だった。「できなくなることだけを考えるのではなく、自分は何がしたいのか、どう生きたいのかのか」を考えることが大事だと。小林は、目の見えない人生と向き合い、どう生きていくべきかを考え始めた。

同時期、アメリカに全盲でエベレストに登頂したクライマーがいることを知った。小林はすぐさま彼とコンタクトを取り、欧米では多くの障害者がクライミングを楽しんでいること、そして彼らがクライミングを通して、自身の可能性を見出していることを知った。自身の壁を乗り越え、新たなステップへと踏み出す姿を見た小林は、日本でも同じことができないだろうかと考え始めていた。これは、クライミングを愛した小林幸一郎にしかできない使命。自分がやるべきことだという確信があった。小林の世界が再び動き出した。

クライミングは自己達成型のスポーツ

視覚障害者のクライミングは、次に使うべき手がかり足がかりを目の見えるパートナーの指示を受けながら行う。聴覚で受ける指示と自らの手を伸ばし得る触覚を頼りに、一つひとつ石をつかんで登って行く。特に、街なかにある室内のジムであれば、補助ロープも厚手のマットも準備され、うっかり足を踏み外しても安全なように設計されている。腕の筋力がなくとも、手足を上手く使うことができれば子どももおとなも視覚障害者も、みなするすると登っていくことができる。

「クライミングは他人と競うのではなく、クライマー自身で立てた目標の達成を目指して登る『自己達成型』のスポーツです。障害がある人もない人も、それぞれの目標に向かい自分のペースで進んでいけることがこのスポーツの魅力のひとつです」

もちろん、クライミングは世界選手権なども開催され、競技スポーツの側面ももつ。小林自身も世界選手権に出場し、パラクライミング部門で優勝の成績を残している。しかしそれは、彼自身にとってクライミングという世界の一端でしかないのだろう。

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