地域包括ケアの新ステージ 多職種を巻き込み地域をサポート

住宅メーカーでありながら、介護保険の創設前から介護ビジネスを展開してきたマザアス。今年22年目を迎え、「住み慣れた地域で、自分らしく暮らし続ける」ための仕組みを構築してきた。同社の事例から高齢者ビジネスの新たな可能性を探る。

マザアスの介護のネットワーク事業(千葉県柏エリア)

自立から要介護まで地域で暮らすサポート

介護保険の重点が「施設」から「在宅」へと移行し、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)などの高齢者向け住宅に関心が集まっている。「最期は自宅で迎えたい」「今は元気だが、病気になったときの備えをしておきたい」といったニーズの高まりもあり、介護付有料老人ホームに代わる住まいとして、異業界からの参入が活発化している。

そうした中、介護保険の創設前から20年超にわたり、介護施設・高齢者住宅の運営を行ってきたのがマザアスだ。マザアスは、住宅メーカー大手・ミサワホームグループの介護運営会社として1996年に設立。グループ理念の「住まいを通じて生涯のおつきあい」を具現化すべく、介護施設ではなく「住まい」という視点からさまざまなタイプの介護・福祉施設事業を手がけてきた。

代表取締役社長の吉田肇氏は、「超高齢社会に向けて、国は地域包括ケアの方針を打ち出していますが、自立から介護までのネットワーク化は、マザアスが創業当初から取り組んできたことです」と語る。

吉田 肇(マザアス 代表取締役社長)

これまで日本の医療は、救命・延命・治癒・社会復帰を前提とした<病院完結型>だった。しかし、人生は80年時代から100年時代に突入し、生に対する前向きな姿勢を問うQOL(Quality of Lif/生活の質)よりも、病気と共存しながらQOD(Quality of Death/死の質)を向上させることの重要性が認識されつつある。

「住み慣れた地域で暮らし続けるために、医療は地域で支える<地域完結型>に変わらなくてはなりません。現在、市町村ごとに地域包括ケアシステムのまちづくりが進められていますが、公助に頼らないさまざまな民間サービスの創出も求められます」

地域包括ケア 都市型モデル

多職種連携でシームレスなサービスを提供

マザアスは全国で15の施設を運営しており、そのモデルは郊外型と都市型の2つに大別される。千葉県の柏エリアを中心とした郊外型モデルは、サ高住、ショートステイ、デイサービス、小規模多機能ホーム、グループホーム、介護付有料老人ホームなどを広い敷地に点在させ、自立から介護、看取りまでの段階的なケアネットワークを構築している。

都市型モデルでは、土地が取れない分、高さを持たせているのが特徴だ。たとえば、介護業界初の自治体・公益法人との連携事業として注目を集めているのが、JR五反田駅からほど近い14階建ての「ケアホーム西五反田」だ。2階~4階は高齢者向け、5階~14階はファミリー向けとなる「住宅棟」に加え、重介護向けの「介護棟」を設置。1階は、24時間往診可能な診療所、診療所と提携した調剤薬局、おむつなどを備えたコンビニ、行政手続きができる地域センターなどがテナントとして入居している。そのため、一つの建物の中で医療・介護サービスをシームレスに提供できるようになっている。吉田氏によれば、入居を検討される高齢者の多くは、医療・介護の質も勿論であるが、近隣に買い物ができる店があることや、駅からのアクセスの良さなど、日常生活上の利便性を重視しているという。

「入居前は、もみじマークを付けた自家用車を運転して、なんとかスーパーや医療機関に通っていた、という方が多くいらっしゃいます。ここなら車を手放せるし、何かのときにも助けが呼べる、というのが入居の切っ掛けとなったそうです。また、下着だけは自分で洗いたい、という要望に応えるため、各個室に洗濯機置き場を設けるなど、入居者視点の細やかなニーズにも応えています」

昨今は、シアターやプールなど、ホテル並みの設備を備えた高齢者向け住宅も珍しくなくなってきたが、豪華さよりも最期まで住める安心・安全が求められているといえそうだ。

一つの建物内で医療・介護サービスの提供を行う

サ高住から広がる新規事業の参入チャンス

吉田氏によれば、国の政策も在宅医療という方向性を示す中、今後は地域の特性に合わせた、地域に開かれたサ高住が増えていくという。「入居者に利用してもらうだけでなく、積極的に地域にサービスを提供し、地域包括ケアの拠点として新たな事業を展開する必要性があります。医療従事者を引きつける魅力のある医療(マグネットホスピタル)を軸に、訪問や通所、施設といった枠を超えてシームレスに提供される医療・介護、さらにはIT化・ロボット技術などの最先端技術の導入も促進されていくでしょう。これまで以上に医療機関・自治体・民間・NPO・自治会などが連携し、多種多様な介護・福祉事業を創出していくことが重要です」

マザアスが手掛ける都市型モデルの中でも、地方都市型の事例として注目されるのが、JR札幌病院の敷地内に立地する札幌市の「マザアス札幌」だ。設計・建設を行うミサワホームと運営・介護を担うマザアス、建物所有者であるJR北海道の3社の連携で実現した。全国初の24時間定期巡回随時対応型訪問介護看護事業所を併設したサ高住で、近隣の提携医療機関と入居者の情報を共有し、看取りまでの対応可能なサービスを提供している。

75歳以上の方が毎年50万人ずつ増加し、お一人暮らしや老老介護の高齢ご夫妻方が急増されている中「これからの高齢者向け住宅は介護が始まってからではなく、自立しているうちに都市部に移り、集まって住むコンパクトシティ的な傾向も強まっていくでしょう」。高齢者向け住宅を取り巻く環境は、医療機関・行政・民間を巻き込みながら新たな時代に突入している。

西五反田高齢者複合施設

 

吉田 肇(よしだ・はじめ)
マザアス 代表取締役社長

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