過去5年で小学生以下の人口34%増というユーカリが丘。子育てのしやすさで有名な町では、学童保育と高齢者施設を一体化した「共生型施設」が運営され、注目を集めている。

「ユーカリ優都ぴあ」は、学童保育と認知症の高齢者のグループホームが一体で運営されている関東初の共生型施設だ
子どもと高齢者が共生
「さようなら~!」「また明日ね!」。子どもたちの元気な挨拶と、それに応える職員たち――。小学校が終わった後の子どもを預かる学童保育では一般的な光景だが、千葉県佐倉市のニュータウン・ユーカリが丘にある「ユーカリ優都ぴあ」は、ほかと少し様子が違う。子どもたちに手を振る大人のなかに、高齢者も交じっているのだ。
ここは、学童保育と認知症の高齢者のグループホームが一体で運営されている関東で初めての「共生型施設」として知られる。子どもと入所者が玄関を共有し、鍵を閉めることもなく互いの行き来をオープンにしている全国的にも珍しい施設だ。
今年6月には、厚生労働省が共生型施設の普及を目指して、設置要件の新たな指針を策定すると報道されるなど、最近になってこの方式は特に注目が集めている。2007年に開所した「ユーカリ優都ぴあ」の先進的な取り組みは、どのようにして生まれたのだろうか。

隣接地には約3000坪のケアガーデンをつくり、子どもと高齢者が自然に触れ合える環境を整えている

「ユーカリが丘」は子育て世帯の誘致に成功し、高齢化率は全国平均よりも低い
平均を下回る高齢化率の理由
不動産デベロッパーの山万によって、ユーカリが丘の開発が始まったのは1971年。東京ドームが52個入る245ヘクタールの広大な敷地に最大8400戸、居住人口3万人を想定する一大プロジェクトだ。
山万は、「自立した循環型地域社会とサステナブルなコミュニティの形成」を目指し、さまざまな取り組みを行ってきた。特徴的なのは、79年の分譲当初から供給戸数を毎年200戸に絞っていること。ほかのニュータウンでは高齢化に苦しんでいるところも多いが、ユーカリが丘は入居者数を限定することで年齢構成が偏るのを防いできた。
さらに、分譲当初に入居した戸建て住宅の購入者が高齢化し、駅前の便利なマンションへの住み替えを望む声が増えてくると、査定価格の100%で住宅を買い取ってマンションへの住み替えを促し、買い取った住宅をリフォームして若い世代に安価に販売する「ハッピーサークルシステム」の運用を開始。
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