右脳と左脳のハイブリッド思考である「デザイン思考」とは

まったく新しい事業、商品やサービス、プロセス等を創るやり方として、ビジネスにデザインの考え方を取り入れる「デザイン思考」。関係する論文はここ数年で増え続け、米国のビジネススクールでは「デザイン」の授業の人気が高まっている。

「デザイン思考」教育の老舗のイリノイ工科大学を修了した佐宗邦威氏は、「デザイン思考には、ゼロからイチを創り出す発想がある」と話す。デザインという言葉には、「設計=創り出す」という意味が含まれている。明確ではない課題を発見し、創造的に解決する方法としてビジネスにも有効である。しかし、デザイン思考のプロセスをなぞるだけで、いいアイデアが浮かぶわけではない。

「デザイン思考で重要なのは、『右脳』のプロセスを取り入れること。ビジネスでは、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなど左脳による論理思考に偏りがちです。しかし、デザイナーが目指す思考スタイルは、右脳と左脳の両方を活用したハイブリッド思考です」

右脳の活用をするには、まず意識的に右脳でのインプットを行うことが必要だという。デザイナーは、プロジェクトを始める際のリサーチで、右脳を刺激するようなビジュアルを積極的に集める。それらのビジュアルを見ながら打ち合わせをするので、その場で創造的な話ができる。

いまデザイン思考が日本で受け入れられる理由

ここ数年、日本でもデザイン思考が注目されるのには、社会的な変化も関係している。

「これまでは過去の実績から未来を予測する『演繹』、『帰納』などの考え方が通用していました。しかし21世紀は、未来が予測できない中で物事を進めていく複雑系マネジメントの時代です。

その中で、新規事業を生み出すには、『仮説推論』の考え方が有効です。プロトタイプを作って、検証する、そのくり返しで仮説を立てていくと、次世代の商品やサービスが見えてきます」日本企業でも、ソニーや日立などデザイン思考的プロトタイプ作りで開発プロセスをスピードアップし、革新的な商品を生み出しているケースがある。デザイン思考は決して新しい考え方ではないが、ゼロからイチを生み出したい現場に新しい風を吹き込むだろう。

 

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

  1. 佐宗邦威(著)
  2. クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
  3. 本体1,580+税

 

佐宗 邦威(さそう・くにたけ)
biotope 代表取締役兼チーフイノベーションプロデューサー

 

今月の注目の3冊

ひらく美術

―地域と人間のつながりを取り戻す

  1. 北川フラム(著)
  2. 筑摩書房
  3. 本体820円+税

 

世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」には、約50万人が訪れる。著者は2000年に開催された第1回から総合ディレクターを務めてきた。社会の価値観が平均化され、効率化されていく世の中に疑問を感じながら、美術を地域活性に活かす中で、地方の豊かさに気づいたという。文化で地方を豊かにする地域活性化論を立て、人と自然、地方と都市の交わり方を考察した一冊だ。

 

人工知能は人間を超えるか

―ディープラーニングの先にあるもの

  1. 松尾豊(著)
  2. KADOKAWA
  3. 本体1,400円+税

 

「人間vs人工知能」の戦いが将棋やクイズ番組などで繰り広げられ、また人工知能搭載のロボット「Pepper」をソフトバンクが発表し、人工知能は身近になってきた。いま、最先端の人工知能技術「ディープラーニング」をめぐり、グーグルやフェイスブックなどは数百億円規模の激しい投資・人材獲得合戦を展開している。人工知能研究の第一人者が、いま人工知能に何ができるか、またこれからできることを解説する。

 

[新版]ブルー・オーシャン戦略

―競争のない世界を創造する

  1. W・チャン・キム、レネ・モボルニュ(著)
    入山章栄(監訳)
    有賀裕子(翻訳)
  2. ダイヤモンド社
  3. 本体2,000円+税

 

「既存ビジネスの枠組みを変える、革新的な事業創造」を求める時代に突入した日本。競争がなく新規需要に満ちた、高成長と高収益に繋がる市場「ブルー・オーシャン」をいかに創造するのかが焦点になる。ブルー・オーシャン型の企業がいかにして革新をもたらしているのか、その本質を理解し、自身のビジネスへ活かすことが必要だ。2005年の初版から10年経った今回の新刊では、実践への具体的なアプローチが示されている。

 

名著

ビジネスモデル・イノベーション

ビジネスモデル・イノベーション

―知を価値に転換する賢慮の戦略論

  1. 野中郁次郎、徳岡晃一郎(編著)
  2. 東洋経済新報社
  3. 本体2,800円+税

 

ビジネスモデルをテーマにした書籍は多数あるが、本書はビジネスモデルそのものを明確に体系づけた数少ない書籍だ。本書では、「事業創生モデルのフレームワーク」として、考える優先順位と要素をまとめている。最初にビジョンにあたる「存在次元」、次に顧客にどのような価値を提供するかなど事業構造にあたる「事業次元」、三番目にキャッシュフローをつくる「収益次元」、最後に社会的価値を生み出して貢献する「社会次元」である。この四層構造が基本となる。

編著者の一人である野中郁次郎は、知識経営論の第一人者だ。知識経営論は、演繹でも帰納でもない物事の捉え方をしている。ビジネスモデルも一般論化は難しいが、その一つ一つに本質があり、それを見極めることが重要なのではないだろうか。

 

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