ヘリコプターを活用した災害孤立地域の情報収集
ヘリコプター直接衛星通信システム(ヘリサット)は、平成25年3月に世界で初めて、京都市消防局の消防庁ヘリコプターに配備された。ヘリサットの利点や近年の災害での活用事例、今後の課題や展望等について紹介する。
ヘリサットは、消防組織法第50条に基づく無償使用制度を活用して京都市消防局の消防庁ヘリコプターに配備されて以来、平成27年7月現在、全国で5機の消防庁ヘリコプターに搭載して運用されている。
ヘリサットが導入される以前から、消防防災ヘリコプターが発災初期の被害情報を収集する際には、ヘリコプターテレビ伝送システム(ヘリテレ)が利用されていた。しかしながら、ヘリテレの場合には、ヘリコプターから一定の距離(約30-100km以内)にある地上設備で一旦受信した後、衛星回線等で都道府県庁や国に伝送する必要があり、受信できる範囲は全国には行き届いていないのが現状だ。また、ヘリコプターの活動地域が、ヘリテレの地上設備(固定局)で受信可能なカバー範囲外の場合には、可搬設備を運搬する必要があるが、初動時の対応としては制約が大きい。
実際に、平成16年新潟県中越沖地震では、初動時において山古志村(現長岡市)の被害状況を把握することが難しかったことや、平成23年東日本大震災では、仙台市において、地震によりヘリテレの地上設備が被害を受けたことで、消防ヘリコプターからの津波襲来時の映像をオンタイムで伝送することが出来なかったことがあった。
一方で、ヘリサットの場合には、ヘリコプターから直接衛星に伝送する仕組みであるため、地上設備の有無に左右されることなく、ヘリコプターが活動できる範囲において、機動的に利用することが可能だ。
このヘリサットについては、平成13年から独立行政法人情報通信研究機構において開発がなされ、その後、消防庁における仕様書等の検討や情報通信審議会の答申を踏まえ、技術的な要件が整い、平成23年度から実用機の開発がなされた。実用機としては、平成25年3月に初めて京都市消防局に配備され、東京消防庁、宮城県防災航空隊、高知県消防防災航空隊、埼玉県防災航空隊に順次配備された。
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