15兆円の産業創造 農業・農村にこそ 日本最後の成長余力あり
スマート・テロワール
―農村消滅論からの大転換
- 松尾雅彦(著)
- 学芸出版社
- 本体1,800円+税
限界集落、市町村消滅という声が聞こえる昨今だが、「農業・農村にこそ日本最後の成長余力がある」と断言する人物がいる。NPO法人「日本で最も美しい村」連合副会長の松尾雅彦氏は、美しく強靭な農村自給圏「スマート・テロワール」という新しい概念を提唱する。カルビーの社長も務めた松尾氏は、全国の農村を自ら訪れて調査した経験を持つ。農村を中心に地産地消を進め、国内自給率アップを促進することが日本を豊かにするという。
「国内の都市の成長資源は減っていますが、農村には資源が豊富にあり、自立できる成長余力が充分にあります。具体的には、国内の100万haの水田を畑地に大転換すれば、農村は15兆円産業を創造することができます」
本書の中では、2つの戦略を挙げている。1つ目は、余っている水田の畑地への転換。2つ目は、現在国内自給率が低い農作物を育て地域内の工場で加工し、新鮮なうちに消費者に届ける仕組みづくりだ。「農家」「加工業者」「消費者」の三者が手をつなぐことで、域内の雇用や経済循環を生み、農村の活性化を促す。
「海外からの輸入量が増え、国内の流通が発展していくと同時に、地域の農産物を域内で消費する意識が薄れました。また日本の農業が衰退したのは、コメの生産に偏っているためです。現在輸入に頼っている小麦、トウモロコシ、大豆などの穀物に転換することで、国内の経済や消費に好循環を生み出します」
重商主義から「重農主義」へ
「国を豊かにするために、重農主義に移るべき」とも話す。現在の市場経済は、商工業を重視して利益を得る「重商主義」が中心。一方で、自然に基づく理想的循環の「重農主義」は長らく影を潜めていた。
「重商主義が今日のマネー経済とグローバリゼーションを推進してきました。しかし、現在はローカリズムを主張する声も多く、市場経済が招く環境破壊に警鐘を鳴らしています。行き過ぎた重商主義に対して、重農主義を理想としてみる考え方への回帰とも言えるでしょう」
地域からグローバルへ発信する「グローカル」という言葉も生まれたが、地域から域内での消費を高める「地産地消」がこれからの日本を豊かにする一つの鍵になるだろう。
- 松尾 雅彦(まつお・まさひこ)
- 元カルビー社長
NPO法人「日本で最も美しい村」連合 副会長
出現する未来から導く
- C・オットー・シャーマー(著)
- カリトン・カウファー(著)
- 由佐美加子、中土井僚(翻訳)
- 英治出版
- 本体2,400円+税
組織や事業の変革を成し遂げるには、未来志向で現実を変えていくことが必要だ。『U理論』の著者シャーマーの6年ぶりの新書となる本書では、「出現する未来から導く」プロセスを紹介する。過去のパターンにとらわれない変化を生み出すには、出現することを望んでいる未来を迎え入れる必要がある。そのためには、自分の意識を変え、行動を起こすべきだという。未来志向のイノベーションを起こすきっかけとなる一冊。
シビックプライド2【国内編】
―都市と市民のかかわりをデザインする
- 伊藤香織+紫牟田伸子(監修)
- シビックプライド研究会 (編著)
- 読売広告社 都市生活研究所(企画協力)
- 宣伝会議
- 本体1,900円+税
地方創生の切り札として注目を集める「シビックプライド」。都市に対する市民の誇りのことで、「ここをより良い場所にするために自分自身がかかわっている」という当事者意識を伴った自負心を指す。シビックプライドを掲げた取り組みは各地で見られ、本書ではどのようにしてシビックプライドを喚起していくかを、ケーススタディやQ&Aから探っている。2008年に出版し海外事例を集めた『シビックプライド』の続編。
大転換
― 新しいエネルギー経済のかたち
- レスター・R.ブラウン、他(著)
- 枝廣淳子(翻訳)
- 岩波書店
- 本体1,900円+税
2050年の人口増加で起こる資源問題の中でも、生活や環境に大きな影響をもたらすエネルギー問題。石炭や石油で動く経済から、太陽や風を動力源とする新しいエネルギー経済への大転換が必要となる。著者は次の10年で、50年分の変化が圧縮されて起こると予測し、短絡的な処置ではなく、真のエネルギー革命を起こしている趨勢を経済の視点から分析している。ウォール街や抜け目ない各国政府が気づいている真実とは何か。
名著
ビジョナリー・カンパニー
ビジョナリー・カンパニー
―時代を超える生存の原則
- ジェームズ・C・コリンズ、ジェリー・I・ポラス(著)
- 山岡洋一(翻訳)
- 日経BP社
- 本体1,942円+税
会社が永続的に繁栄するためには、「ビジョン」「未来志向」「先見性」が必要だ。それらを持ち合わせた企業を本書では「ビジョナリー・カンパニー」と呼ぶ。
3M、GE、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ソニーなどの企業は、なぜ時代の変遷を乗り越えて、ライバル企業よりも優れた業績を上げてきたのか。それは、現実に満足することなく、常に時代の変化に対応するイノベーションと飛躍を計画する力を持っているからだ。
ビジョナリー・カンパニーの「8つの生存の法則」のうち、特に「現実的な理想主義」「基本理念を維持し、進歩を促す」「社運を賭けた大胆な目標」は、まさに事業構想にも必要な法則ではないだろうか。「安全なところにとどまっていては、進歩を促すことはできない」と著者はいう。
新事業のアイデアを考え構想する
社会人向けの事業構想大学院大学 詳細はこちら
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