オープンデータ先進都市、横浜市に学ぶ官民によるビジネス共創

全国でもオープンデータ推進に先行する横浜市。今年度からは民間企業の支援を強化し、課題解決型ビジネスの創出に本腰を入れる。自治体と民間の連携のあり方を、官民のキーマン3人に聞いた。

杉浦裕樹 横浜コミュニティデザイン・ラボ 代表理事

関口昌幸 横浜市 政策局 政策課 担当係長

土屋朋宏 横浜市 経済局 成長産業振興課 担当係長

横浜市は民間との“共創”をテーマにオープンデータを推進している。企業のオープンデータに関する相談窓口や、クラウドファンディングを活用した地域課題解決WEBサイトを開設して成果をあげているほか、今年度からは「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」を開始した。

今回の取材では、横浜市政策局政策課の関口昌幸担当係長、経済局成長産業振興課の土屋朋宏担当係長、市と共にオープンデータの事業化に取り組む横浜コミュニティデザイン・ラボの杉浦裕樹代表理事を招き、横浜市の取り組みやオープンデータのビジネス化におけるポイントをディスカッションした。(7月11日 横浜コミュニティデザイン・ラボ主催/月刊事業構想協力「政策デザイン勉強会vol.30」より)

データを出すだけでは民間は動かない

――横浜市が全国の先陣を切ってオープンデータを推進する目的は何でしょうか?

関口 現在、多くの自治体は少子高齢化やインフラの老朽化など、さまざまな地域課題に直面していますが、370万人の人口を抱える横浜市も例外ではありません。福祉やまちづくり、環境などの課題を乗り越えて横浜市を発展させていくためには、民間と行政が連携を深め、それぞれが持つ知恵と力を結集させていくオープンイノベーションの理念が不可欠です。そのような考えのもと、横浜市は行政が保有する公的データを市民と共有し、活用してもらうことで、さまざまな地域課題の解決に取り組んでいこうと、2013年ごろからオープンデータ化を進めてきました。

――これまでの取り組みは?

関口 2014年に統計や地理情報を二次利用できる形で開放した「よこはまオープンデータカタログ」を開設しました。もちろん、データを出すだけでは民間は動き出せません。共創のためのハッカソンや勉強会の開催、企業の相談や連携提案の窓口となる「オープンデータサポートデスク」を通して、民間の取り組みを支援しています。また、来年4月の公開に向けて横浜市のホームページを再構築しています。これは各部局がバラバラに作成・発信していた情報を、データベースで一元管理していくというものです。これに併せて、“いつでも、どこでも、誰でも”データを横断的に検索できる新しいカタログサイトも構築する予定です。

クラウドファンディングでアイデアをビジネスに

――オープンデータを活用した地域課題解決ビジネスを創出するプラットフォームとして、すでに成果を上げているのが、横浜コミュニティデザイン・ラボが企画・運営する「LOCAL GOOD YOKOHAMA」ですね。

杉浦 市民参加型で地域をよくする活動「LOCAL GOOD」を進めるプラットフォームとして、2014年6月から本格稼働しています。このサイトの機能は3つあります。1つは、スマートフォンアプリなどを活用して、広く市民が抱える課題を集める機能。2つ目は、集めた課題を3Dマップ上に表示するなどして、課題を可視化する機能。3つ目は、「クラウドファンディング」などの資金調達を通じて、課題解決の事業化と市民の参加を促す機能です。また、事業を推進する仲間集めを行うスキルマッチング機能も備えています。

横浜市からは、子育て・税金・人口など、地域課題に関するオープンデータを提供してもらっています。これをインフォグラフィックスのようなわかりやすい形に加工してサイトに掲載しています。データを出せば、市民や企業が自発的に動いてくれるということがよく分かりました。

クラウドファンディングでは、半年で7つのプロジェクトが稼働しています。たとえば、困難を抱える高校生を地元に就業させるという課題解決がビジネスになったり、孤立しがちなおばあちゃんを集めた編み物会社が立ち上がるなど、さまざまな参画型ビジネスが展開されています。現在は、育児と介護の同時進行に悩む家庭を支援する「ダブルケアサポート」事業のファンディングが注目を集めています。

LOCAL GOODの事業モデルは全国から注目され、5月には北九州市と福岡市で、同様の取り組みが始まっています。

「LOCAL GOOD YOKOHAMA」は横浜市の抱える課題の見える化、クラウドファンディングを活用した事業化支援、人材のマッチングなどの機能を持つ。横浜をモデルに北九州と福岡でも同様の取り組みが始まっている

7割がオープンデータを認知せず

――今年度から、横浜市経済局は「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」を始めました。

土屋 オープンデータ利活用への期待が集まる一方で、中小企業の間でオープンデータへの理解が進んでいないという問題があります。昨年12月に横浜市が実施した調査によると、市内企業の7割以上がオープンデータをあまり認知していないことが明らかになりました。また、利活用したいと回答した企業からも、「分析方法がわからない」、「利活用するための人材が不足している」、「利活用したいデータが公開されていない」といった声が多く上がっています。

そこで、ビジネス化支援事業では、企業や専門家のネットワーキング、人材育成、セミナーなどのイベント、情報発信に取り組み、ビジネス創出のためのエコシステムを構築していきます。ネットワーキングでは「横浜オープンデータコンソーシアム(仮)」を設置し、参加企業や公共機関がアイデアやデータを持ち寄り、サービスやビジネスを検討していく予定です。中小企業によるビジネスプランコンテストも検討しています。

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