自分にしかできない仕事でゼロからイチを生み出す
ゲスト・松任谷愛介氏 (クロスカルチャー・ホールディングス代表取締役社長)
―英国生活四半世紀を超え、ますます精力的に多方面で情熱を燃やす松任谷さん。
「松任谷君を知っとるか。君のように相当長くヨーロッパにいるイイ男だ。会ってみてはどうかね」という、共通の師である野田一夫先生(財・日本総研会長、初代事業構想大学院大学学長)の突然の一言で、当初我々はつながりました。いろいろ共通点もあり、意気投合し本日に至りました。
お兄様(松任谷正隆氏)の影響を受け、学生時代はイルカ、南こうせつ、ハイファイセット等のバックバンドの一員として活躍され、レコーディング・ミュージシャンとして数多くのアルバムに参加されました。
松任谷(荒井)由実さんの『チャイニーズ・スープ』ではバイオリン演奏を担当。
その後、銀行員生活、シカゴ大MBA留学、勤め先の銀行が買収した英系投資銀行ギネス・マーンへの出向を経て転籍。副会長等要職を歴任されてから、97年に金融界を引退。以来、「表現者兼プロデューサー」の道を着実に歩んでこられました。
今日はロンドン中心部までご足労いただきありがとうございます。このお店は愛介さんのお気に入りでしたよね。
松任谷: この鳩のスープ美味いでしょ。昔からここの味が好きでね。湖南料理です。
―以前、湖南省の長沙を訪れたときに、現地の友人の案内で毎日湖南料理をいただきましたが、この鳩のスープには出会えませんでした。とても美味しいです。スローエン・スクエアと湖南料理のカップリングが面白くて、今日はどんな料理になるのかワクワクして参りました。
松任谷: スティーブ、そういうワクワク感は大切だよね。
―恐れ入ります。さて、愛介さんの活動を一言で表すと「社会的価値」という言葉に集約されると思うのですが、何が社会的価値を生み出す活動に、先輩を駆り立てているのでしょうか。
松任谷: OK。「社会的価値」という言葉を僕は金銭的価値に対比する言葉として使っています。幸せ、笑顔、感動、充足感といったお金に換えられない価値のこと。一方、「金銭的価値」は特定の人や組織に独占されやすい。
皆に分配されれば良いけれども、お金はカサブランカの大輪のように甘く魅力的で、ついついエゴが出てきます。僕の場合、純粋なものを追いかけることで汚れた自分を少しでも浄化させたいのかもね。
―先輩のことですから照れていらっしゃると思うのですが。
松任谷: お金は媒体です。人間は、生産活動を行ない、価値を生み出すために生まれてきます。お金を儲けて貯めても、生産活動をしたことになりません。どういうわけか戦後、お金を儲けることが最大の美徳とされる国に日本はなってしまいました。僕らが住む英国や欧州と比べると、カネに換えられない価値を作ることが過小評価されているように思うのです。
―よくわかります。確かにお金があれば、欲しい物を買うことはできます。問題は、金で幸せを手に入れられると錯覚することではないでしょうか。金で人生を思い通りにできるのかというと、これは全く次元の違う問題で、実際、お金に振り回されて奈落の底に落ちてしまう人は想像以上に多いものです。
松任谷: 確かに多いよね。
―カネには大きなエネルギーが流れています。そのエネルギーをもろに受けてしまうと、カネに生気を抜かれて、喰われてしまう気がしています。 「虎に乗る」(ライド・ザ・タイガー)という表現がありますが、東洋における百獣の王である虎を乗りこなせれば、誰にも負けません。ですが、虎を乗りこなすのは危険極まりなく、かつ至難の業です。ちょっとでも気を抜くと虎の背から振り落とされて、ムシャムシャと喰われてしまいます。お金も虎に似ています。お金は強いエネルギーをもっていて、多くの人はそのエネルギーに食われてしまいます。一方で、お金を味方につけられれば、百人力です。
そこで質問なのですが、「お金に換えられない価値を創る」というビジョンを実現するにあたって、注意すべきことは何でしょうか。イベント等開催にはお金がかかるため、金儲けにしか興味がない人も近寄ってくるかもしれません。完全にお金と無縁ではいられないとおもうのですが。
松任谷: なるほど、それではその答えに関連して、まずは「金に換えられない価値を創り出すこと」について説明しましょう。
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