2015年4月号

脱パワポのプレゼン術

自意識を「敵」でなく「味方」に 「リラックスした身体」の秘訣

鴻上 尚史(作家・演出家)

3
​ ​ ​

「伝わる」プレゼンを行うためには、それにふさわしい身体の状態を手に入れる必要がある。「落ち着こう」と考えるのではなく、お腹の下にある「丹田」をイメージするなど、意識的に身体の重心を下げることで、人はリラックスすることができる。

「落ち着こう」、「うまく話そう」と思えば思うほど、人は舞い上がります。「自意識を無視しよう、忘れよう」と思えば思うほど、自意識は大きくなるのです。自意識を捨て去ることはできません。だからこそ、自意識を敵にするのではなく、味方にする必要があります。

人の思考能力は、無限ではありません。話の内容に集中し、その風景を具体的に想像しながら話せば、自意識にまわるはずのエネルギーが減り、自意識からラクになることができます。

新規事業のプレゼンなら、それが実現したときの状況を想像します。そのプロジェクトが成功したら、具体的にどうなるか。それが実現したときのスタッフが活躍するシーン、顧客の反応や周囲の声、オフィスの空気感や温度、窓から光が差し込んでいる風景など、ディティールをイメージするようにします。

受けを狙おうと思うのではなく、具体的なディティールまで想像し、感じとることで、リラックスして話せるようになります。

鴻上尚史(作家・演出家)

「感じる」と「考える」を両立

落ち着くことができれば、人の身体は自動的にその空間にふさわしい身体になります。プレゼンなどの場面でも、自分の身体を、レスポンスが自然にしやすい状態にする必要があります。

まずは、聴衆全体を見ることです。そして、場の全体を身体に入れるイメージを持つのです。身体全体で、会場と対話できる雰囲気になると、会場がゆるみ始めたことや緊張しすぎている状況に合わせて、話し方を変えることができます。

あがり症の人だったら、少し早目に会場に行って、実際に話す場所で一度深呼吸をしてみるのが効果的です。そして、会場の四隅を見て、その全体を自分の身体に入れるイメージを持つことで、リラックスした身体が手に入りやすくなります。

また、人前で話すとは、「感じること」と「考えること」を高いレベルで両立させることです。

事前に暗記した文章をただ言っていたら、それは「考えている」だけで「感じること」をしていません。逆に、その場のノリだけで話す人は、「感じている」だけで「考えること」をしていません。プレゼンが上手な人は、場の雰囲気を感じながら、資料を飛ばして簡単に説明したり、重要なところを繰り返したり、調整することができます。

プレゼンの本番では、話しながら、聞いている人たちを何度もチラチラと見ることです。そうすることで、聴衆のリアクションを感じとることができるようになります。

意識的に身体の重心を下げる

人は、人の状態を感じることができます。あなたがリラックスすれば、そのリラックスは相手に伝わり、相手の身体もゆるみます。そして、あなたの言葉は相手に届きやすくなります。

リラックスするためのテクニックとして、「声を低く始める」という方法があります。人は緊張すると声が高くなります。意識的に声を低くして始めることで、自然と身体もリラックスするようになり、心を落ち着かせることができます。

舞い上がっているとき、身体の重心は上にあがっています。身体の重心を下げるためには、丹田を意識することが有効です。丹田は、あなたのおヘソから握りこぶし一つ下のところにあります。丹田を感じる方法として、前傾になって前に倒れる瞬間に、お腹の中にぐっとしまる場所を感じたら、そこが丹田です(図1参照)。

大切なことを言わなければいけないとき、丹田をイメージするだけで、ずいぶん違います。自分の重心を下げようとイメージするだけで変わるのです。

丹田は、おヘソから握りこぶし一つ下のところにある。前傾になって、前に倒れてみたときに、お腹の中にぐっとしまる場所を感じたら、そこに丹田がある。

出典:鴻上尚史著『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)

まずは「緊張」を自覚する

「リラックスした身体」というと、サウナに入った後のような、グダーッとした身体を思い浮かべがちですが、本当に「リラックスした身体」とは、「余計な緊張がなく、いつでも動ける身体」です。ほとんどの人は、自分の身体が、ずっと緊張していることを自覚していません。でも、日常の中で身構えることは山ほどあって、身体はどうしても緊張しています。

まったく運動をしないような人は、休日にウォーキングなどをして、身体に身体を意識させることから始めます。身体を意識できるようになると、自分がストレスを感じたときに、身体のどこが緊張するかを感じられるようになります。

人によって、緊張する箇所は違います。緊張する箇所はたいてい、「肩がこる」、「腰が痛い」、「背中がバリバリ」など、ストレスがかかったときに痛くなるところです。まず大切なのは、「緊張を抜こう」と考えることよりも「今、自分が緊張している」と感じることです。

自分が緊張する箇所がわかったら、その箇所をほぐすことです。そのためには、こわばった箇所の筋肉がフワ~と広がってラクになることをイメージします。信号待ちのちょっとした時間、電車を待っている空き時間などを使って、そのイメージを持つことを1日に何回も繰り返します。心と身体は、相互に影響し合いますから、イメージするだけで変わっていきます。

人間はゆっくりとしか変われません。でも、ゆっくりでも確実に変わるのです。

以下の動作を、自分のペースでゆっくりと何度も繰り返す。

(1)〜(2)
鼻から息を吸いながら、ゆっくりと手のひらを上にして、両手を頭の上にあげていく。この動作を「手のひらで、大気のエネルギーを集めている」というイメージを持ちながら行う。

(3)〜(4)
口からゆっくり息を吐きながら、集めたエネルギーを丹田に押し込めるイメージで、手のひらを下にして、手をおろしていく。

出典:鴻上尚史著『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)

 

鴻上尚史(こうかみ しょうじ)
作家・演出家
3
​ ​ ​

バックナンバー

社風が変わる、イノベーターが育つ

地方創生・イノベーションにつながるアイデアと思考に注目!

志高い、ビジネスパーソン・行政・NPO職員・起業家が理想の事業を構想し、それを実現していくのに役立つ情報を提供する、実践的メディア。

メルマガで記事を受け取る

メルマガ会員限定で、
ピックアップしたオンライン記事を
毎日お届けします。

メルマガの設定・解除はいつでも簡単

事業構想セミナー・説明会

バックナンバー検索

売り切れ続出注目のバックナンバーはこちら


最新情報をチェック。

会員になると 最新「事業構想」が読み放題。さらに

会員の特典をもっとみる